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今日のアフリカ

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エチオピアの脆弱な戦後

2023/11/13/Mon

 2022年11月2日の和平協定でエチオピアの内戦が終結してから、1年が経過した。このところ、和平の先行きを懸念する報道が続いている。内戦終結後も政情が安定しない要因として、和平合意の主体が政府とTPLF(ティグライ人民解放戦線)だけだったことが指摘されている(2日付ルモンド)。内戦に関与したエリトリアは依然としてティグライ州に留まっているし、やはり内戦に参加したアムハラ人民兵組織(FANO)も戦闘を止めていない。さらに、OLA(オロモ解放軍)も政府と交戦状態にある。TPLFとの和平合意は、これら武装勢力の行動によって不安定化している。
 加えて、エチオピア政府の行動も予測が難しくなりつつある。最近、紅海への出口を求めるアビィ首相の発言が物議を醸している。アビィ首相は7月の演説で、エチオピアは世界最大の内陸国であり、平和的な方法で港を求めるが、それに失敗すれば武力を用いる、と述べた(8日付BBC)。同様の発言は、10月13日に議会でもなされたという。こうした発言は、周辺のソマリア、ジブチ、エリトリアにとっては脅しである。特にエリトリアとの関係は、同国軍がティグライ州に駐留を続けていることもあって、急速に悪化していると報じられている(9日付ルモンド)。
 昨今の状況に国際社会も懸念を深めており、ブリンケン米国務長官は、11月2日、「エチオピアとエリトリアに対して、挑発を止め、地域諸国の独立、主権、領土保全を守る」よう呼びかけた。一方で、アラブ首長国連邦(UAE)などが、アビィ政権に武器を供与しているとも伝えられる(9日付ルモンド)。スーダン内戦も終結に向けた糸口が見えない中で、アフリカの角地域の不安定化が顕著になっている。
(武内進一)