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今日のアフリカ

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南アフリカでAGOAフォーラム

2023/11/04/Sat

 南アフリカのジョハネスバーグで、2日から米国・アフリカ貿易サミットが開催され、「アフリカ成長機会法」(AGOA)の資格を持つ、約40のサハラ以南アフリカ諸国が参加した。AGOAは2000年から実施されている米国の国内法で、資格を認められたアフリカ諸国は、多数の品目について、米国向け輸出関税を免除される。ただし、その資格が認められるためには、政治的多元主義、人権尊重、法治国家といった条件を満たす必要があり、この会議に先立って、中央アフリカ、ガボン、ニジェール、ウガンダの資格剥奪が発表された(10月31日付ファイナンシャルタイムズ)。また、マリ、ギニアも既に資格を剥奪されている。
 南アでの開催について、バス(Joy Basu)米国国務次官補(アフリカ担当)は、「米・南アフリカ二国間関係へのコミットを示すもの」だと説明した。ただし、この決定までには紆余曲折があった。今年5月、南ア駐在の米国大使が、南アがロシアに武器を違法に輸出した疑いがあると発言し、南アをAGOAから排除すべきだとの意見が米国議会に出てきたからである。それ以降、南アは米国で活発なロビー活動を行い、このサミットを予定通りに実施し、AGOA資格も維持することとなった。
 しかし、米国内には依然として不満の声がある。本貿易サミット開催直前、共和党のジム・リッシュ(Jim Risch)上院議員は、ブリンケン国務長官とキャサリン・タイ通商代表に対して、南アでの会議開催を強く批判する書簡を送った。同議員は、南アはハマス、イラン、ロシアと関係が深く、イスラエルを批判しており、米国の国益と外交政策に反する。したがって、来年度以降、南アをAGOAから排除すべきだ、と主張する。
 イスラエル・ハマス戦争の勃発後、南アのパンドール外相はハマス指導者のハニヤ氏と電話会談した。また、イランとの間では最近外相が相互訪問している。リッシュ議員は、こうした点を捉えて、米国の外交政策にとって南アは危険だと主張している(3日付Daily Maverick紙)。
 AGOAによる貿易は、南アの対米輸出の21%を占め、2021年には20~30億ドルに達した。免税品目は、自動車部品、一次産品、希少金属など多岐にわたる。南ア大統領府は、2日、「AGOAは、アフリカ大陸にとって、経済関係強化と成長・発展の促進に決定的に重要な役割を果たしている」と述べている。
 国内法のAGOAを使ってアフリカ諸国の政策を変えたい米国と、AGOAを利用しながら独自の対外政策を維持したい南ア。双方のせめぎ合いがここに見て取れる。
(武内進一)