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今日のアフリカ

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チセケディが「国際社会」を批判

2024/04/01/Mon

 30日付けルモンド紙は、コンゴ民主共和国大統領チセケディへのインタビュー記事を掲載した。チセケディはそこで、国際社会への苛立ちを表明している。M23を支援するルワンダを非難する一方で、「国際社会は共犯者だ」と述べている。
 インタビューで、コンゴ軍が「ワザレンドゥ」(愛国者)と呼ばれる親政府民兵組織を利用し、そのなかに子ども兵が含まれていることを問われたチセケディは、概略次のように反論している。
西側中心の眼差しで、アフリカ人を苛立たせるのは止めてください。子ども兵になるような人々も我々と同じ人間で、親を殺されるなど過酷な経験をしているんです。私は最初のうち善隣外交政策をとり、ルワンダと協調していましたが、その間ワザレンドゥたちからは裏切り者だと見なされました。この政策はルワンダのせいで立ちゆかなくなり、私はラジカリズムへと政策を大きく転換したのです。
 チセケディの国際社会への不満は、結局のところ、ルワンダへの対応に行き着く。
国際社会はルワンダの共犯者です。カガメは、コンゴの天然資源を略奪し、それらを外国に持ち出して加工したことを認めていました。ルワンダ経由でコンゴ産の鉱物資源を受け取ったことを隠匿した国があるのです。
 国際社会はルワンダを非難しているが、それでは不十分か、と問われたチセケディは、次のように答えた。
ロシアにどれだけの数の制裁が科されているか、知っていますか?ルワンダには何一つ制裁が科されていないんです。これはダブルスタンダードと言わざるを得ないでしょう。
 さらに、チセケディは、ロシアへの接近をほのめかす。
3月27日にプーチンと電話会談しました。コンゴの法律を守るなら、ロシアと関係を持つことはありえます。ただ、我々はロシアのウクライナ侵攻を非難した数少ないアフリカ諸国のひとつだということを忘れないでください。6月にロシア・アフリカサミットがあれば、自分は行くつもりです。
 インタビューの最後で、チセケディは西側のダブルスタンダードを再度批判した。
EUは、モザンビーク北部でジハディスト掃討に参加するルワンダ軍に2000万ユーロ提供しています。さらにEUは、ルワンダと鉱物取引協定を締結するとのことです。ルワンダから輸出される鉱物は、コンゴから来たものです。こうした協定は、コンゴ国民にとって理解できないことなのです。
 このインタビューはチセケディの政策変化を理解する上で興味深い。チセケディがカガメと善隣外交政策をとっていた時期、彼の国内政権基盤は弱く、カビラ前大統領が依然として強い影響力を保持していた。チセケディにとっては、国際社会の支援が国内政治におけるレバレッジ(梃子)として非常に重要だった。しかしその後、国内政治においてチセケディはカビラ派を一掃し、自らの権力基盤を強めた。そうした状況下で、対外的に強硬な姿勢を取るようになったのである。
(武内進一)