スーダンで、ブルハーンの国軍とヘメティのRSFが衝突するなか、周辺国との関係が改めて注目を集めている。27日付ルモンド紙がこの点に関する記事を掲載しているので、紹介する。
イスラーム主義政党を基盤とするバシール政権が2019年に崩壊したことを受けて、サウジアラビアとUAEは、これをムスリム同胞団を支持するカタールやトルコに対して地歩を固めるチャンスと捉えた。30億ドルもの資金を軍事政権に流し込み、数千ヘクタールの農地を獲得して、農産物、畜産物を自国に輸出させた。
ややブルハーン寄りのサウジアラビアに対して、UAEはブルハーンとヘメティの双方にカネを流した。ヘメティにはイスラーム主義を叩く役割を担わせて、自らが内戦に関与するイエメンに傭兵を派遣させ、ダルフールで採掘される金をドバイに密輸させた。ノルウェー難民評議会の研究者マジューブは、「ヘメティは、ハルツームのフランケンシュタインになった」と指摘している。
エジプト政府はブルハーンに肩入れしてきた。2022年12月に軍事政権と民主派勢力との間で移行合意が結ばれると、それがヘメティを利することを恐れて、エジプトは陰に陽に移行交渉を妨害してきた。エチオピアが青ナイル川上流に建設したルネッサンスダムの一件でも、エジプトはブルハーンが政権を握る方がよいと考えている。一方のヘメティも、何度もアジスアベバを訪問し、アビィ首相と良い関係を結んできた。
ダルフールを本拠とするヘメティは、リビア、チャド、中央アフリカとの複雑な関係の中心に位置する。チャド大統領マハマト・デビィの周辺筋は、ヘメティが政権を握ることは危険だと考えている。ダルフールで非アラブ系住民を激しく抑圧してきたヘメティが権力を握れば、チャドで政治権力を独占するザガワ人の支配が揺らぐ恐れがある。
リビアとの関係に目を転じれば、武力衝突が勃発した当日、ハフタル将軍が支配する東部キレナイカからRSF側に物資供給が数回なされたという。スーダン西部とリビア東部を繋ぐ地域は、以前から物資の密輸ルートであり、そこにヘメティが強い影響力を保持してきた。4月15日の武力衝突の直前、ハフタルの長男がハルツームを訪れ、ヘメティに歓待された。訪問の目的は、RSFが出資しているサッカークラブ(Al-Merreikh)に200万ドルを寄贈することだったという。
広大な面積を持つスーダンは周辺国との間で様々な関係性を構築してきた。そこには、1)湾岸諸国との従属的な関係、2)ナイル川流域国としてのエジプト、エチオピアとの戦略的な関係、3)アラブ系、非アラブ系住民を通じたリビア、チャド、中央アフリカ等サヘル地域との関係、4)南スーダンとの歴史的関係、などが交錯している。27日に開催された緊急講演会で、アブディン・モハメド氏も同様の指摘をしていた。この内戦は、必然的に一国を超え地域的な様相を帯びることになるだろう。
(武内進一)