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今日のアフリカ

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またも混乱に向かうリビア

2022/05/21/Sat

 5月16日夜から17日にかけて、首都トリポリで戦闘が勃発した。東部に本拠を置く議会から首相に指名されたバシャガ(Fathi Bashagha)が、現首相のドベイバー(Abdul Hamid Dbeibeh)に代わって首相に就任しようと首都に入ったたのだが、数時間に及ぶ戦闘の末に撤退した。この戦闘はリビアがまたも混乱に向かう瀬戸際にあることを示している。
 2011年にカダフィが殺害されて以降、リビアは断続的な内戦状態を経験してきた。近年の構図は、トリポリに本拠を置くシラージ(Faïez Sarraj)首相の国民協定政府(Government of National Accord: GNA)と、東部や南部を主要な支持基盤として湾岸諸国やエジプト、ロシアなどが支援するハフタル(Khalifa Haftar)将軍とが対立するというものだった。
 2019年4月、ハフタルは首都への進軍を宣言して内戦を再開したが、トルコが暫定政権側に立って介入し、高性能の戦闘用ドローンを提供したことなどから戦況が膠着。こうした状況を背景として、国連の努力によって、2020年10月に停戦合意が結ばれ、2021年3月にドベイバーを首班とする暫定政権が成立した。
 暫定政権の主要な役割は、2021年12月に大統領選挙を実施することであった。しかし、カダフィの息子やハフタル自身が立候補を表明するなどして混乱し、結局選挙は延期を繰り返すこととなった。そうしたなかで今年2月10日、東部に本拠を置く議会がバシャガを新首相に指名したのである。バシャガはシラージのGNAで内相を務めた人物で、ハフタルの支持を得ているとはいえ、今回の対立は従来とは異なる構図で生起している。
 バシャガによる今回のトリポリ入りにおいて撤退は織り込み済みだったと思われるが、これによって和解と選挙実施に向けて努力してきた国連の権威が傷つき、和平プロセスが遠のいたことは否定できない。選挙実施の手前まで国連がお膳立てしたのだが、当事者がそれを望まなかったということであろう。
 リビア内戦に関しては、外国勢力の関与が常に指摘されてきた。ハフタル将軍側に対しては、上述した諸勢力のみならず、テロ対策に協力的だとの理由でフランスやアメリカも支持していた時期があった。これら外国勢力の関与が紛争を長引かせる重要な要因になってきたことは、改めて確認せねばならない。