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今日のアフリカ

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リビア内戦の局面転換と地中海の資源問題

2020/06/08/Mon

 6日、エジプトのシーシー大統領は、リビアの反政府勢力(LNA)を率いるハフタル将軍と会談し、「カイロイニシャティブ」として停戦を提案した。一方、同日、トリポリの暫定政府軍(GNA)は、地中海沿岸の重要都市シルトを攻略する作戦を開始した。
 リビアの状況は最近になって急展開し、トルコの支援を得たGNAが攻勢を強めている。ハフタルは2016年に東部石油産出地帯からイスラーム急進主義勢力を駆逐して注目を集め、エジプト、UAE、サウジアラビア、またロシアの支援も得ていた。欧米諸国も、イスラーム急進主義勢力抑止の立場から、事実上ハフタルを支援してきた。ハフタルは、2019年4月には首都の武力制圧を目指して内戦の火ぶたを切って落とし、当初はLNAの進軍が目立った。
 しかし、2019年末にGNAがトルコと軍事協定を結び、トルコが内戦に参戦すると、事態は大きく変化した。トルコは新型無人機や親トルコのシリア人傭兵を投入するなどして戦況を逆転させ、リビア西部からLNAを駆逐した。LNAを支援してきたロシア人傭兵もリビアを去ったと報じられている。今回、ハフタル将軍が和平に前向きなのは、自身の劣勢を認識しているからである。
 6月5日付ルモンド紙は、GNAとトルコが関係を深めたことで、地中海の資源開発をめぐる紛争が顕在化すると報じている。トルコは、GNAとの関係強化を梃子にして、地中海東部のガス田開発を進めようとしているからである。このガス田は関係各国の権利が未確定な地域に位置しており、トルコの開発案にはギリシャ、キプロス、エジプト、UAE、そしてフランスが非難をしている。EUはこの計画を違法だと非難し、制裁をかけるとトルコを脅しているが、トルコは反発している。
 リビア内戦は、主要アクターであるGNAとLNAに、それぞれトルコとロシアが深く肩入れすることにより、代理戦争の様相を呈している。トルコ、ロシア両国とも、リビア内戦を利用して、北アフリカ・地中海地域における自国の権益を確保しようとしている。リビア内戦の平和的解決までには、まだまだ時間がかかりそうだ。