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最新10件

バイデン米大統領、アンゴラ訪問

2024/12/04/Wed

 12月2日、米国のバイデン大統領が4日までの日程でアンゴラを訪問した。任期終了間近のレームダック期の訪問である。それでも、米国大統領としては、2015年にオバマがケニアを訪問して以来のアフリカ行きとなる。  今回の訪問では、コンゴ民主共和国とザンビアに跨がる産銅地域(カッパーベルト)と大西洋岸のロビト港を結ぶ、ロビト回廊計画に焦点が当たっている。ここには20世紀初頭に英国が建設した鉄道が通り、2015年に中国の出資で改修された後、2022年にはスイスのTrafigura社、ポルトガルの建設企業Mota-Engil社、ベルギーの鉄道企業Vecturis社のコンソーシアムにコンセッションが与えられた。米国はここに30億ドル以上を出資し、大幅に改修する計画である(12月2日付ルモンド)。  アンゴラはアフリカでナイジェリアに次ぐ産油国だが、長く中国の強い影響下にあった。米国はここにテコ入れして、中国に対抗にしたい思惑がある。コンゴ民主共和国のコバルトなど、重要な資源が中国企業の手に抑えられているという危機感がある。  アンゴラも先週、ロシアのダイヤモンド企業Alrosaを退去させるなど、米国寄りの姿勢を強めている。一方中国は、今年に入ってザンビアとタンザニアのダルエスサラーム港を結ぶタンザン鉄道に10億ドル以上出資して改修工事を行うなど、カッパーベルトの資源アクセスには力点を置いている(2日付ファイナンシャルタイムズ)。  米国民主党政権でエネルギー担当の特別顧問を務めたエイモス・ホクスタインは、米国は冷戦後アフリカ進出に出遅れたと述べている(上記FT)。今回の訪問が、米国の変化を示すものだろうか。今回は、レームダック期の大統領によるアンゴラ一カ国だけの訪問であり、これが米国の対アフリカ政策積極化を示すのかどうかは、なお判然としない。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

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チャドがフランスとの軍事協定破棄を通告

2024/12/01/Sun

 28日、チャドのクラマラー(Abderaman Koulamallah)外相は、「フランスとの国防関連協力協定を終わらせる」と発表した。フランスは現在チャドに軍事基地を持ち、約1000人の兵士を駐留させているが、この声明はこれに対する事実上の撤退要求となる。ちょうどこの日チャドを訪問していたフランスのバロ(Jean-Noel Barrot)外相との会談後、わずか数時間のタイミングであった。  クラマラー外相は、この決定が「フランスとの関係断絶ではない」と明言している。声明では、「フランスは最も重要なパートナーだが、チャドは成長し、成熟したこと、またチャドは主権国家であって、主権を求めることをフランスは理解しなければならない」と述べた。  サヘル地域では近年、マリ、ブルキナファソ、ニジェールと、反仏を掲げる軍事政権が次々に誕生し、フランス軍の撤退が続いていた。しかし、そのなかでチャドは、親仏、親西側の立場を維持してきた。長く政権を掌握したイドリス・デビィ・イトノが2021年4月に武装勢力に殺害された後、息子のマハマトが非合法的手段で政権を継承した際、フランスはこれを認め、チャド寄りの姿勢を明確にした。  一方、チャドは最近、外交関係の多角化を図ってきた。今年1月には、マハマトがプーチンの招待でロシアを訪問し(1月23日付ルモンド)、ハンガリーのオルバン首相の息子が秘密裏にチャドを訪れる(1月27日付ルモンド)といった動きがあった。その他、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)といった国々とも関係深化を図り、軍事支援などを受けるようになった。  クラマラー外相は、この決断が「熟慮の結果取られた」ものであり、チャド・フランス関係の「歴史的転換」だと認めている。「チャドは完全なる主権を表明し、国家的優先事項にしたがって戦略的パートナーシップを再定義すべき時期」になったというのがチャド側の主張である。  この決定はフランスにとって、甚大な衝撃となる。ちょうど25日、ボケル(Jean-Marie Bockel)大統領個人特使が、フランスのアフリカにおける軍事基地の再編に関する提言をマクロン大統領に提出したところだった(11月26日付ルモンド)。フランスは現在、セネガル、コートジボワール、ガボン、チャド、ジブチに軍事基地を持っており、このうちジブチ以外について縮小の方針が打ち出されると見られていた。  今回のチャドの発表により、フランス軍基地再編計画は見直しを余儀なくされよう。折しも、セネガルのジョマイ・ファイ大統領が、インタビューの中で、フランスとの関係を重視しつつも軍事基地の存在に疑問を呈し、フランス兵には遠からず退去してもらうとの見解を表明した。「我々は米国、中国、トルコなどと軍事基地なしで協力関係を結んでいる。・・・フランスだってそれができるでしょう」(11月28日付ルモンド)というわけだ。  フランスとアフリカの関係が、大きく変化しつつあることを実感させる動きである。アフリカ側が繰り返す「主権」という言葉について、改めて考える必要がある。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

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ナミビアにおけるLGBTQIA+とメディア報道

2024/11/30/Sat

ナミビアのNPO法人(NID)は、24日、LGBTQIA+についての包括的な報道に関するワークショップをメディア関係者向けに開催した。 このワークショップは、「包括的な表現のためのメディアのエンパワーメント―ナミビア・ハウスからの洞察」というテーマで開催された。性的およびジェンダーの多様性の声と物語を広め、全市民に対する尊厳の必要性を強調することを目的としている。 NID(Namibia Institute for Democracy)はワークショップに先立ち、10月12日に「ナミビア・ハウス―LGBTQIA+の人びとための包括的な空間の構築(The Namibian House: Building Inclusive Spaces for LGBTQIA+ Persons)」を出版している。この本は、アフリカにおける植民地主義と同性愛嫌悪の促進、アフリカのレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、LGBTQI+運動、そして今日のナミビアにおけるLGBTQI+の人びとの権利に影響を与えている法的枠組みについて扱っている。その中で、メディアが世論を動かし議論を前進させる力があることを強調し、ジャーナリストがLGBTQI+の問題を敏感かつ正確に報道できるよう訓練されるべきだと提言している。 NIDのプログラムマネージャーであるヤシンタ・カスメ氏は、会見において、「この本を出版した目的は、アフリカとナミビアのLGBTQI+の人びとの物語と経験を明らかにすること、そしてメディア関係者や立法者にヘイトスピーチや差別の有害な影響について教育することである」と述べている。全文オープンアクセスで、インターネット上で閲覧可能である。(宮本佳和) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターでは、アフリカの留学生誘致のためのクラウドファンディングを、11月20日~1月10日の間、実施しています。ご協力よろしくお願いします。

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スーダン停戦決議にロシアが拒否権

2024/11/21/Thu

 18日、国連安全保障理事会で、スーダンの停戦を求める決議がロシアの反対で否決された。決議は英国とシエラレオネが共同提案したもので、14ヵ国が賛成し、反対はロシアだけだった。  英国のラミー外相は、「一ヵ国の反対で理事会の意思が挫かれた。この国は平和の敵だ。ロシアの拒否権は恥ずべき行為だ.ロシアはまた、本当の顔をさらけ出した」と強く非難した。米国のトーマス・グリーンフィールド国連大使も、「ロシアはアフリカと協調するようなことを言っているが、アフリカ諸国が賛成する停戦決議に反対した」と述べた。  一方、ロシアのポリャンスキー国連次席大使は、ロシアは紛争当事者による停戦を支持すると述べて、決議案を「ポストコロニアルの香りがする」と批判した。ロシアの拒否権に対しては、スーダン外相が「スーダン及びその国家機関の独立と統一を支持するものだ」と評価する声明を出している。  スーダン内戦は、国軍指導者ブルハーンと準軍事組織RSFの指導者ヘメティの対立を軸に動いてきたが、ロシアは最近になってブルハーン寄りの姿勢を強めている。スーダンに停戦を呼びかける前回の決議の際、ロシアは棄権している。  ブルハーンと国軍はRSFに軍事力で勝利できると踏んでおり、そのために国際社会による停戦呼びかけに消極的な態度を取るのだと考えられる。10月に入って、国軍側が優位に立っているとの分析記事が掲載された(10月11日付ルモンド)。ロシアはスーダンに接近したい思惑があり、そうした情勢を理解した上で、国軍側に秋波を送っていると見られる。  18日、米国のスーダン特使Tom Perrielloが18日、ポート・スーダンを訪問してブルハーンと面会した。当然、国連をめぐる状況が議論になったと考えられる。  2023年4月にスーダン内戦が始まってから、既に1年半が経過した。世界で最も深刻な人道危機と言われ、ウクライナやガザを上回る数の死者や避難民が生まれているが、周辺国の介入や当事者の頑なな態度のために停戦が成立せず、人道危機が拡大し続けている。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。ご協力よろしくお願いします。

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ODAを大幅削減するヨーロッパ諸国

2024/11/20/Wed

 14日付ルモンド紙によれば、ヨーロッパ主要国でODAを大幅に削減する動きが相次いでいる。直接的には、右派政党が政権を握った影響が強い。ODAの使い方にも大きな影響が出ている。  フランスの来年度予算案では、ODAが34%削減される。オランダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなども、ODAを削減する意向を示している。2023年のODA世界総額は2237億ドルで、4年連続で増加した。しかし、ODAの多くはウクライナや難民関連のものだった。  右派と極右政党が主導するスウェーデンは、2024年から25年にかけて、9億7500万クローネ(8400万ユーロ)の援助を削減する。その後も削減を続け、2027年以降は援助額が国民総所得の0.7%水準を下回る見込みである。右派と極右が政権を主導するオランダも、3年かけてODAを三分の二に減らす。ドイツは、2022年に国民総所得の0.85%のODAを提供していたが、2023年には0.79%、2024年には0.7%に減少させる。英国も、援助額を国民総所得の0.7%から0.5%に減らす意向である。  ODAを自国企業の利益や移民・難民対策に用いられることが増えた。移民対策の観点からチュニジア、モロッコ、さらにはニジェールに接近するイタリアのメローニ政権はその典型だが、スペインもサンチェス政権の下で、カナリア諸島に漂着する不法移民の出身国向けに援助を振り向けようとしている。英国では、ODAの28%がアサイラムシーカー向けの資金として内務省に配分されている。  開発援助が供与国の経済的利益に向けられることも一般的になった。イタリアは、最大の石油・ガス企業であるENI創業者の名を取ったMattei計画を打ち出し、途上国、特にアフリカの石油・ガス、民間部門支援を推進している。EU議会でも、「EUの経済利益を強化し、エネルギー移行に必要な原材料へのアクセス」を確保するといった主張が強まり、貧困削減には言及されなくなった。被援助国の裁量で契約企業を選べる援助は次第に少なくなり、ひも付き援助が増加している。  一方で、人道援助や最貧国向けの援助は大幅に削減されている。2022年には援助総額の22.5%が最貧国に向けられたが、その10年前には30%が最貧国向けであった。  ODA政策の国際潮流はこれまでも様々に揺れ動いてきたが、2010年代以降はそれが現実主義に大きく振れている。2015年の開発協力大綱で国益を前面に打ち出した日本の動きも、この文脈にある。ただ、ヨーロッパでは、右派政党、極右政党が政権を握ったことで、急激な動きになった。上記ルモンド紙でも、左派のサンチェス政権が成立しているスペインではODA削減の動きは顕在化していないと報じられている。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターでは、11月20日~1月10日の間、クラウドファンディングを実施しています。

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シェルはナイジャー・デルタから撤退するか?

2024/11/10/Sun

 ナイジェリアのナイジャー・デルタで石油採掘を続けてきたシェル、エクソンといった大手石油会社が、同地域から撤退し、オフショア生産に切り替える意向を示している。特に、最大手シェルの動きが波紋を広げている。これに関して、11月6日付ファイナンシャルタイムズが興味深い記事を掲載している。  シェルは子会社のShell Petroleum Development Company of Nigeria (SPDC)を地元企業のコンソーシアム(Renaissance Africa Energy) に売却する手続きを進めていたが、先月ナイジェリア規制局はその売却を認めない決定を下した。その結果、SPDCは操業も売却もできない宙づりの状態になっている。  SPDCは、ナイジェリア最大で、最も歴史ある石油会社である。3,173kmのパイプライン、263の油井、56のガス田、6つのガスプラント、2つの輸出港、発電所1つを所有する。SPDCの資産を管理するSPDC JVは、SPDCが30%、国有企業のナイジェリア国家石油会社 (NNPC)が55%、TotalEnergiesとAgipがそれぞれ5%を所有しているが、シェルが強力な意思決定権を持っている。  シェル側は、SPDCをナイジェリア企業に売却したい意向を明らかにしている。ナイジャー・デルタ地域におけるシェルの活動には、複雑な過去がある。石油採掘に伴う環境汚染が地元コミュニティの反発を生み、オゴニランドで住民が反対運動を展開。1995年には指導者の一人ケン・サロ=ウィワが、軍事政権に処刑される事態に至った。  シェルのパイプラインは何度も流出事故を起こしており、ナイジャー・デルタに深刻な環境被害を与えてきた。2011年、UNEPは、オゴニランドの汚染に深刻な懸念表明している。  原油流出の背景には、パイプラインや掘削インフラの老朽化に加えて、石油を盗むためパイプラインが意図的に破壊されるという実態がある。ナイジェリアの1日あたり原油生産量は約130万バレル(2024年9月)だが、毎日30万バレルが窃盗や妨害活動などで失われているという。  地元NGOは、コミュニティとの十分な話し合いのないままシェルが撤退することは許されないと主張している。また、シェルは国際的な評判を気にしていたが、ナイジェリア企業が経営権を握れば汚染がさらに進むとの懸念もある。  多国籍企業は自らの活動にどこまで責任を負うべきか。グローバリゼーションによって民間部門の力が巨大になる中で、その社会的責任をめぐる議論はいっそう高まることだろう。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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ティアロワイの虐殺をめぐるセネガル・フランス関係

2024/11/09/Sat

 1944年12月、ダカール郊外のティアロワイ(Thiaroye)基地で、フランス兵士が多数のアフリカ人兵士を殺害する事件が起こった。事件から80年後の今日、改めてフランス側の対応が問われている(11月7日付ルモンド)。  アフリカ人兵士はいわゆる「セネガル騎兵」で、仏領西アフリカから徴集されて、ヨーロッパ戦線へ送られた。その後セネガルに戻った兵士たちが待遇への不満から蜂起し、鎮圧によって多数が殺害されたのである。犠牲者の数は30人とも300人とも言われ、正確にわかっていない。この事件は以前「反乱」と呼ばれたが、2014年に当時のオランド仏大統領が「血なまぐさい抑圧」であったと認め、現在では「ティアロワイの虐殺」と呼ばれることが一般的である。  今年の6月、フランス側が、犠牲者のうち6人に対して「フランスのために死す」という称号を与える決定をしたことで論争が再燃し、ソンコ首相はフランスの対応に不満を表明した。  ソンコ首相やジョマイ・ファイ大統領は、これまでこの問題が正当に扱われてこなかったと考えており、フランスが植民地期の文書を完全に公開していないとの不満を持っている。  コロンビア大学のセネガル人歴史学者ママドゥ・ディウフによれば、「ティアロワイの虐殺は、過去数十年、政治的にアンタッチャブルだった。歴代のセネガル大統領は、この問題に触れてフランスとの関係を悪化させることを恐れてきた。初代大統領で詩人のサンゴールは自作の詩の中でこの虐殺を糾弾したが、彼でさえ在任中にこの問題を持ち出すことはなかった。ミッテラン政権下、ウスマン・センベーヌの映画「ティアロワイ基地」は、上映禁止処分を受けた。今日、新たな政権の下で、この記憶を妨害する試みが解体されている」とコメントした。  ソンコ首相の側近は、「何人が殺されたのかもわかっていない」として、完全な文書開示を求めている。10月半ばには、ジョマイ・ファイ大統領とマクロン大統領が電話会談し、セネガル側は改めて文書の完全開示を求めた。セネガルの歴史家やアーキビストがフランスを訪問して、文書を確認することになっている。  フランス側では、メランシャン党首率いる左派政党「不服従のフランス」(La France Insoumise)がセネガルの動きを支援し、議会での調査委員会設置も提案する構えである。  12月1日の虐殺80周年式典には、フランス大統領も招かれている。マクロンはまだ出欠を明らかにしていないが、いずれにせよ難しい対応を迫られることになる。  植民地期の記憶をめぐる問題は、マクロンが力を入れて取り組んできたものだ。しかし、旧宗主国側がコントロールできる問題ではないことは、例えば日韓関係を考えても明らかだ。フランスとアフリカの関係も、日韓関係とパラレルな局面に入りつつあるのだろう。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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マクロン仏大統領のモロッコ公式訪問

2024/11/04/Mon

 10月28~30日、フランスのマクロン大統領がモハメドVI世の招待に応じてモロッコを公式訪問した。国賓待遇での訪問に、9人の閣僚(経済、外務、内務、軍事、高等教育、等)と約40人の企業経営者が同行した。  フランスとモロッコは、移民に対するビザ発給厳格化などの問題をめぐってギクシャクした関係が続いていたが、今年7月末にフランスが西サハラ政策を転換してモロッコの立場を認めたことで、両国関係は大きく改善した。これが、今回の公式訪問の背景にある。  マクロンは29日にモロッコの議会で演説し、両国間に「新たな戦略的枠組み」を構築することを提唱した。事実上、EU以外で最重要のパートナーシップを結ぶことを意味する。モロッコの独立を認めた1955年11月6日のラ・セル=サン=クルー宣言から70年となる来年に予定されているモハメドVI世の訪仏時に、パートナーシップ協定が締結される方向が示された。  モロッコとの関係改善に関して、ルモンド紙は2つの懸念点を指摘している(10月29日、30日付)。第1に、西サハラに対するモロッコの主権を、EU司法裁判所が認めていないことである。今年10月4日、同裁判所は、EUとモロッコが結んだ農業、漁業に関する協定2件を無効と判断した。西サハラ(サハラウイ)人の自決原則を無視したとの判断である(10月4日付ルモンド)。この地域の開発にはデリケートな問題が残る。  第2に、アルジェリアとの関係である。モロッコとアルジェリアは西サハラ問題を中心に対立が深まり、両国は国交を断絶している。モロッコに接近するフランスに、アルジェリアは不満を募らせている。マクロンは議会演説で、フランスの西サハラに対する方針転換が、「誰に敵対するものでもない」と強調したが、そのメッセージはアルジェリアには届いていないようだ。ルモンド紙は社説でフランス・マグレブ関係が「ゼロサムゲーム」に陥っていると懸念を表明している(30日付)。  マグレブ三国は、アフリカの中でもフランスとの関係が歴史的に最も深く、市場規模も大きい。それだけに複雑な相互関係が展開されている。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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ボツワナの選挙で与党が大敗

2024/11/02/Sat

 ボツワナの選挙で与党のボツワナ民主党(BDP)が大敗し、独立以来初めての政権交代が見込まれている。  1日、マシシ(Mokgweetsi Masisi)大統領は、30日に行われた選挙について敗北を認め、支持者に平静を呼びかけるとともに、スムーズな体制移行を支援すると述べた。人権弁護士のボコ(Duma Boko)率いる民主的変化のアンブレラ(UDC)が、61議席中25議席を確保して優位に立っている(1日付ファイナンシャルタイムズ)。ボツワナでは議会で大統領が指名される制度であるため、31議席を確保した政党から大統領が出ることになる。  BDPは1966年の独立以来政権を担ってきたが、ここ数年は経済不振や汚職などのために支持率が下がり、内部分裂が進んでいた。初代大統領の息子で、2008~18年に大統領を務めたカーマ(Ian Khama)は、マシシとの不和からBDPを脱党し、国外に逃れていた。  1日付ルモンドによれば、同日朝の段階では、ボツワナ会議党(BCP)が7議席、ボツワナ愛国戦線(BPF)が5議席を獲得する一方、BDPは1議席のみの獲得に留まっている。当面の焦点は、UDCが単独過半数を獲得できるのかにある。  与党が早い段階で敗北を認めるのは、アフリカでは異例と言ってよい。マシシが述べるような、スムーズな政権交代になってほしい。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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ガボンの憲法草案

2024/10/30/Wed

 10月21日、ガボンで憲法草案が発表された。この草案は、11月16日に国民投票に付される。25日付ルモンド紙は草案について、2023年8月にクーデタで実権を握ったオリギ=ンゲマによる統治を想定した内容だと報じている。  草案には、前大統領アリ・ボンゴ時代の不満が反映されている。大統領は7年任期で1回のみ再選可能とされるが、「任期満了に際して、パートナーや子孫を後継者に据えることはできない」という条項が加えられた。父親を継いで大統領職を務め、父子で半世紀以上も政権を独占したボンゴ一族が念頭にある。  また、立候補資格に国籍条項が加えられた。今後は「少なくとも両親の一人はガボン人で、ガボンで生まれ、ガボン国籍のみを持つ者。そして、少なくとも両親の一人がガボン人で、ガボンで生まれたガボン人と結婚し、大統領選挙の前の少なくとも3年間は連続してガボンに居住している者」が立候補資格を得る。  クーデタを主導した人々を中心に、アリ・ボンゴ時代、特に彼が2017年に脳出血で倒れて以降は、ガボンが外国人に支配されたという意識がある。アリの妻シルヴィアはフランス人で、息子のヌレディンとともに二重国籍を保持する。アリが健康を害すると、妻や息子、そして「外人部隊」と呼ばれる取り巻きが、政治の実権を握ったと言われる。一方、野党勢力は、この条項がガボン人のなかに差別を生み出すとして、反発している。  大統領に強い権限が付与されたことも、この草案の特徴だ。首相職が廃止され、大統領は、閣僚の任免権、議会の解散権、さらに副大統領の任免権を持つ。大統領は、軍のトップも兼ねる。クーデタ後に軍事政権トップを務めるオリギ=ンゲマが、そのまま大統領に横滑りすることを見越した内容とも読める。   ボンゴ一族による政権支配への不満から、オリギ=ンゲマへの国民の支持は高い。国民の支持が期待できる間に大統領に強い権限を付与した憲法を採択し、自分が大統領選挙に出馬して政権を握る。そうしたシナリオが明らかになってきた。(武内進一) 東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターは、アフリカ人留学生招致のためご寄付をお願いしています。

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