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今日のアフリカ

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ナミビアの男性のメンタルヘルスと高い自殺率

2025/06/30/Mon

 ナミビア保健社会サービス省のルヴィンダオ大臣は、5月のメンタルヘルス啓発月間を記念して6月11日に首都で開催されたシンポジウムで講演をおこなった。講演では、メンタルヘルスをめぐる政策の遅延と高い自殺率について懸念が示された。

 ナミビアにおけるメンタルヘルスの問題は、特に若者のあいだでうつ病、不安障害、自殺が増加しており、最も差し迫った公衆衛生上の課題の一つとなっている。世界保健機関(WHO)によると、ナミビアの自殺率は現在、世界で11位、アフリカで4位である。2023~2024(2023/24)年度には、10万297人のメンタルヘルス疾患患者と542件の自殺が報告された。

 ナミビア警察が発表したデータによると、2023/24年度に自殺した542人のうち82%が男性だった。地域別では、北中部の自殺者数が多く、全国平均は人口10万人あたり17.9人だった。一方、自殺未遂件数は、2018年の1,655件から2023年には2,332件に増加した。2023/24年度の自殺者数は前年(2022/23年度)と比較して19%増加し、2019年から2024年にかけては自殺未遂件数が53%増加した。こうした深刻化する危機に対応するため、保健社会サービス省は、主要な関係者と連携し、実用的かつ協調的な解決策を見出すために、多分野にわたるアプローチを強化している。しかし、依然としてインフラ整備および法改正が遅れていることを大臣は講演で強調した。

 国営放送や地元紙では、こうした状況を反映して、自殺者数の大半を占める男性のメンタルヘルスに関する特集が頻繁に組まれている。地元紙ナミビアンの特集において男性の自殺者が多い要因としてあげられているのは、社会経済的要因、文化的およびジェンダー規範、メンタルヘルス支援の不足の3点である。ジェンダー規範において男性は家族を養うことが期待されており、失業や貧困などでこの期待に応えることができない場合、孤立感や男性らしさの喪失感を抱き、助けを求めることへの抵抗感と相まって危機的状況をもたらしているという。

 ナミビアでは初の女性大統領が今年3月に誕生し、新内閣を構成する14名の大臣のうち9名が女性である(「今日のアフリカ」、2025年3月26日)。2002年には党の指導的地位に男女半々の代表者を置く方針を決定し、政策や支援においても男女平等や女性へのエンパワメントに力を入れている。しかし、その背後では、こうした男性のメンタルヘルス危機の問題が静かにすすんでいる現状があることは見逃してはならないだろう。(宮本佳和)

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