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今日のアフリカ

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リビア戦況の変化

2020/05/26/Tue

 5月25日付のルモンド紙は、23日に数百人のロシア傭兵部隊がリビアを退去した模様だと報じた。公的に認めていないが、ロシアは民間軍事会社Wagner社を使い、傭兵を送りこんでハフタル将軍派(LNA)を支援してきた。こうした支援もあって、シラージュが率いる暫定政権より、東部に本拠地を置くLNAの方が軍事力に勝るとされてきたが、最近になって戦況の変化が伝えられるようになった。
 この背景として重要なのは、トルコの影響力である。2019年11月に暫定政権と安全保障協定を結んだトルコが新世代のドローンを戦闘に投入し、この威力が戦況を変えたと伝えたとの指摘がある(4月17日付ルモンド紙)。LNAは、4月中旬以降トリポリ付近の主要拠点から退却し、5月18日にはチュニジア国境に近い要地であるAl-Watiya空軍基地からも撤退した。この撤退が、ロシア傭兵部隊の引き揚げを促した。外交筋によれば、撤退した部隊の規模は車両80台に及ぶとのことで、数百人規模と見られる。ロシア人の部隊と親アサド派の傭兵から構成されていたという。
 ロシアがリビアへの軍事介入を中止したのであれば、内戦の転換点になるかもしれない。トルコもロシアも、近年熱心にアフリカ各国への進出を試みていることを考えれば、この戦況の変化が、どの程度リビア内外の情勢に影響を与えるのか、注意深い観察が必要だ。