7月末にマリ北部アルジェリア国境付近で分離主義勢力(CSP-DPA)がマリ軍を急襲し、甚大な被害を与えた。マリ軍に協力するロシア兵(旧ワグネル)が数十人死亡したと報じられている(8月1日付ルモンド)。
分離主義勢力は昨年11月に北部の拠点キダルをマリ軍側に奪還され、劣勢に立たされていた。今回の事件は、彼らが依然としてマリ軍事政権にとっての脅威であることを示している。
今回の攻撃に関して、特に重要と思われるのは次の3点である。
第1に、ウクライナが分離主義勢力を支援したとの情報である。1日付ルモンド紙によれば、ウクライナはマリ北部の分離主義勢力に協力し、情報提供や軍事訓練を行った。ウクライナ軍諜報局(GUR)スポークスマンのAndriy Yusovは、29日、地元テレビでの放送で「ロシアの戦争犯罪者に対する軍事作戦を成功させるよう、必要な情報やそれ以上のものを提供している」と述べて、GURがマリ北部の反乱軍に協力したことを認めた。
反乱軍の指揮官も、ウクライナ諜報部との協力を認めている。CSP-DPA幹部は、「ウクライナとは、ロシアの脅威という点で同じ問題に直面している。ワグネルの能力や作戦について情報交換をしている。ウクライナはそれ以上のことを約束してくれた」と述べた。マリ軍筋の情報では、CSP-DPAのメンバーはウクライナでトレーニングを受け、トンブクトゥ付近でドローン操作について直接指導を受けたという。
マリ軍は数年前からワグネルを利用し、プリゴジンの死後も多数のロシア兵がマリで戦闘に従事している。現在、マリには2000人以上のロシア兵がいるという。アフリカの紛争にロシアが軍事的支援を与え、ウクライナがその対抗勢力を支援する構図は、スーダンと同じである。
第2に、分離主義勢力側の攻撃に、イスラム急進主義勢力GSIM(JNIM)が協力した可能性が高いことである。GSIM側からも今回の攻撃の成果を報じる声明が発出された(1日付けルモンド)。CSP-DPAがキダルを追われた時から、世俗派の分離主義勢力がアルカイダ系のGSIMと協働する可能性は指摘されていたが、それが現実になりつつある。
第3に、ドローンによる攻撃が戦闘の重要部分を占めている。今回、ロシア兵などが大量に殺害されたのは、車列に対するドローンの空襲だった。昨年のキダル攻撃においても、ドローン攻撃が作戦の中心だった。今回の攻撃の後、マリ軍側は、ブルキナファソ軍と協力して「航空作戦」を実施したと発表した(7月31日付ルモンド)。ドローン攻撃に対して、ドローン攻撃で報復したということである。
ロシア・ウクライナ戦争、中東から広がるイスラム急進主義勢力、ドローン兵器の進化など、アフリカの戦争が常にグローバルな動きと連動しながら展開することを、今回の事件は示している。
(武内進一)
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