ナミビアの環境林業観光省(MEFT)は、10月10日、生きたシロサイ42頭の米国への輸出を承認したと発表した。
MEFTの広報担当のロメオ・ムユンダ氏は、輸出は合法的であり、絶滅のおそれのある野生生物の種の国際取引に関する条約(CITES)とナミビアの法律の両方に従っていると強調した。ナミビアでは、絶滅危惧種のクロサイは国有であるが、シロサイは他の狩猟動物と同様に個人所有が可能である。現時点では、個人所有の狩猟動物の取引を禁止する法律は、ナミビアには存在しない。
一方、MEFTは、繁殖目的でのシロサイの輸出に懸念を示している。背景には、南アフリカからナミビアを経由して米国にシロサイを輸出する慣行がある。南アフリカでは米国へのサイの輸出が禁止されているため、その回避策としてナミビアを仲介させているのである。今回の輸出は、DNA分析により全頭がナミビアに起源をもつため、この慣行には当てはまらないが、MEFTは今後、シロサイの個人所有者と協議し、輸出に関する新しい規制を策定することを表明した。
南アフリカやナミビアは、植民地期に起源をもつ娯楽目的のスポーツ・ハンティングが盛んな地域である。ナミビアでは、シロサイをはじめ個人所有の狩猟動物の多くは、植民地期に入植した白人の子孫らが所有する商業用農地で暮らす。共有地と名を変えたかつての黒人らの居住地(ホームランド)においても、独立直後から新自由主義にもとづくコミュニティ・ベースの自然資源管理(CBNRM)が導入されている。
野生動物を取引可能な商品とみなす新自由主義的な発想は、近年の動物福祉や倫理的問題への関心の高まりと相反する。現に今回のMEFTによる声明も、環境保護活動家らによる抗議を受けて出されたものである。人間中心主義の行き着く果てに明るい未来がないことは、他の環境問題をあげるまでもなく明らかだろう。(宮本佳和)
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