マリで政府に対する抗議活動が活発化している。7月10日(金)、首都バマコでは大統領辞任を求める群衆が街を埋め尽くした。デモ隊は国会を襲撃し、国営テレビ局を一時占拠した他、一部は略奪行為に及び、治安部隊との衝突で11人が死亡した(7月13日付ルモンド)。
こうした大規模な抗議集会は、6月5日、19日に続いて3回目である。事の発端は3月から4月にかけて実施された下院選挙で、与党議員の不正を憲法裁判所が追認したとの不満が噴出している。デモ隊は、反政府運動が「6月5日運動ー愛国勢力結集」(M5-RFP: Rassemblement des forces patriotiques)の名で組織された。この組織の指導者の一人はイマームのディコ(Mahmoud Dicko)師で、厳格なイスラーム実践を掲げることで知られる。2008年には、家族法改正に反対し、これを撤回させた。M5-RFPには、その他に汚職反対を唱えるNGOや野党勢力なども参加している。
運動の高まりに対して、ケイタ大統領は、11日、憲法裁判所のメンバーを入れ替えると発表し、譲歩の姿勢を見せた。また、ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン前大統領をトップとするECOWAS(西アフリカ経済共同体)のミッションがマリを訪問し、調停にあたっている。
運動の直接の引き金は選挙をめぐる不正だが、その背景は複雑である。何よりも、北部から中部にかけての急進的イスラーム主義に関連した治安問題が解決せず、むしろ悪化していること、現政権がそれに対して有効な手を打ち出せないことに対して、国民の大きな不満がある。マリに対しては、国連がPKO部隊を派遣し、フランスも派兵し、また周辺国もG5サヘルという枠組みで介入している。
国際社会はケイタ政権のガバナンス能力の欠如を問題視しているが、マリ社会においては国際社会の関与こそが事態の悪化を導いているという見解が有力で、強烈な反仏、反国際社会の感情が表出している。ケイタ大統領への信任問題が、一見すると北部、中部の治安問題と別の文脈で噴出している現状は、実のところ、事態の深刻さを表している。