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今日のアフリカ

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サヘルに対するフランスの軍事的関与への批判

2020/01/13/Mon

フランスは、2013年1月にマリに軍事介入し、現在も「バルカンヌ作戦」の下で約4000人を派兵している。しかし、現地では治安の悪化に歯止めがかからず、宗教的過激主義(ジハード主義)を唱える勢力の活動は、マリのみならずブルキナファソやニジェールにも拡大している。こうしたなかで、フランスの軍事的関与のあり方を問う声が内外に広がっている。
 マリでは、反仏感情が広がりを見せている。1月10日付ルモンド紙によれば、同日マリの首都バマコで1000人近くが参加し、フランス軍や国連平和維持部隊の撤退を求めるデモが行われた。「フランスくたばれ!」の声とともにフランス国旗が燃やされた。ジハード主義勢力の活動を止められないことへのいらだちとともに、フランスが自国の利益のために軍派遣を長期化させているのではないかという疑念が広まっている。デモを呼びかけた市民団体「マリ愛国者グループ」(Groupe des patriotes du Mali: GPM)は、フランスに代わってロシアの介入を求めており、請願書に800万人のマリ人の署名を集めたと主張する。著名なミュージシャンのサリフ・ケイタまで、フランスがテロリストを支援していると批判するなど、反仏感情は放置できない水準に至っている。
 軍事作戦見直しの声は、フランス国内でも強まっている。12日付ルモンド紙は、『戦争敗北:サヘルのフランス』(Une guerre perdue. La France au Sahel)というタイトルの新著を出版する開発研究所(IRD)の研究部長ペルーズ・ドゥ・モンクロ(Marc-Antoine Pérouse de Montclos)のインタビューを掲載している。IRDは、かつてORSTOMと呼ばれた、権威あるフランスの政府系研究機関である。同氏は、フランスの軍事支援がアフリカの腐敗した政権存続にしか役立っていないとして、サヘルからの撤退を主張する。
 インタビューでは、具体的に次のような点が強調されている。①軍事協力を続けても、アフリカの軍が市民に人権侵害を繰り返す状況が改善されず、それが治安悪化を助長させている。②サヘルのような非対称的戦争において、軍事的関与のみならず、相手との交渉が必要だが、これはフランスではなくアフリカ側がやるべきことだ。③紛争の要因はグローバルなジハード主義の拡大というよりも、農耕民と牧畜民の衝突のようなローカルな要因だが、それに対してフランス軍ができることはほとんどない。
 13日からフランスで、G5サヘル諸国の首脳とマクロン仏大統領の会談が予定されているが、今後の対応をめぐって厳しい議論が戦わされることになるだろう。