先週ギニアビサウでは、軍が最高裁判所を占拠し、国営TV、ラジオを閉鎖した。軍は、クーデタではなく、兵舎に帰ると主張している。ギニアビサウは1974年の独立以来、9回のクーデタあるいはクーデタ未遂を経験しており、2012年にもクーデタがあったばかりだ。
今週の軍による介入は、12月の大統領選挙後の混乱の中で生じた。大統領選挙では、大方の予想を裏切って、与党PAIGCの候補ペレイラ(Domingos Simões Pereira)が敗れ、野党のエンバロ(Umaro Sissoco Embaló)が当選した。PAIGCは独立以来ギニアビサウで強力な地位を確立してきた政党で、議会の多数派を保持している。これを利用して、PAIGCはこれまでエンバロの大統領就任を妨害してきた。
ペレイラは再選挙を呼びかけ、最高裁は投票の数えなおしを命じたが、選挙管理委員会はこれを無視し、エンバロの当選が有効だとの主張を続けている。エンバロも最高裁の決定を無視し、先週になって、議会ではなく高級ホテルで大統領就任式を挙行した。就任式は、前大統領ヴァス(José Mário Vaz)や軍幹部など、少人数が出席して行われた。これに対してPAIGCは、議会多数派勢力であることを利用して、国会議長のカサマ(Cipriano Cassamá)を暫定大統領に就任させた。ところが、わずか2日後の3月1日、カサマは「自分と家族の生命が危機に晒されている」として辞任してしまう。軍による最高裁占拠などの動きは、その後のことである。
6日付ファイナンシャルタイムズによれば、アナリストの分析も割れている。エンバロは犠牲者で権力を手放そうとしないPAIGCが元凶だと主張する者もいれば、軍の行動はクーデタに他ならないと見る者もいる。
不幸にしてギニアビサウでは、形を変えてこうした混乱が続いてきた。そして、こうした状況は、南米の麻薬カルテルによって利用されてきた。この国は、南米から西アフリカを通ってヨーロッパに至るコカイン密輸ルートの主要な入口になってきた。昨年3月には789キロ、9月には1.8トンなど、大量のコカインが押収されている。これらが氷山の一角に過ぎないことは言うまでもない。政治家同士の権力闘争と政治混乱もまた、それによって利益を得る者によってつくられ、増幅されていると見た方が良いだろう。