ニジェールの軍事政権は、20日、フランスのオラノ社(旧アレヴァ社)に対して、イムラレン(Imouraren)ウラニウム鉱山の開発許可を取り消すと通告した。開発許可は2009年に与えられたもので、ニジェール側は、開発は「遅くとも2011年1月に開始されるべきものだった」と述べている。操業開始の遅れに業を煮やして、許可を取り消したという主張である(6月21日付ルモンド)。
ニジェールは重要なウラニウム生産国のひとつである。世界最大のウラニウム生産国はカザフスタンで、カナダ、オーストラリア、ナミビア、ロシアなどがそれに続く。ニジェールは、ここ10年で見ると、世界総生産量の2~5%程度を占めている。
軍事政権の措置が、フランスとの外交関係悪化を背景になされたことは明らかだ。昨年7月末のクーデタで誕生した軍事政権は、昨年末にはフランス軍を撤収させ、フランス大使を追放した。加えて、原発の増加などに伴うウラニウム需要の高まりから、今年に入ってウラニウム相場が上昇している。3月18日、軍事政権はオラノ社に対して、イムラレン鉱山の採掘を3ヶ月以内に始めるよう厳命する督促書を発出していた。
オラノ社は1970年以来ニジェールで操業しているが、現在この国でウラニウム生産を行っているのは、アルリット(Arlit)鉱山だけである。フランスとの関係悪化を背景に、アルリットの開発許可も取り上げられるのではないかと、関係者は危惧している(6月21日付ルモンド)。
ニジェール軍事政権がイランとの間でウラニウム取引の交渉を進めていると指摘される。2023年10月には、ニジェール外相がテヘランを訪問してイラン外相と面会し、1月にはニジェールのラミヌ・ゼイン首相がライシ大統領と面会した。イランによるロシアへの武器提供の代償として、ロシアがイランとニジェールとの仲介をしたと報じられている(5月10日付ルモンド)。
ニジェール軍事政権は、発足以来一貫して、西側から離れ、政治的、経済的主権を強調してきた。ウラニウムや石油などの豊富な鉱物資源が、この政策を支えている。西側企業に対する強硬な姿勢には、自国の資源への正当な対価を得てこなかったという感情が読み取れる。しかし、新たに接近するロシアやイランがそれ以上の対価を提供するのかは、全くわからない。
(武内進一)