5月16日、国連安保理において、ブルキナファソ外相が「G5サヘル」加盟国(モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャド)を代表して演説し、協調してサヘルのテロ対策にあたるよう国際社会に呼びかけた。こうした呼びかけがなされた背景には、この地域におけるイスラーム急進主義勢力(ジハーディスト)の活動が依然活発で、国際社会が危機感を募らせているという事情がある。
5月9日夜には、ベナン北部の国立公園でサファリ観光の最中に誘拐されたフランス人などの救出作戦が実行された。この作戦では、フランス軍海兵隊部隊が米軍諜報の協力を得て4人の救出に成功したが、仏海兵隊員2名が作戦中に死亡した。10日付ルモンド紙によれば、誘拐グループは「大サハラのイスラム国」(Etat islamique au Grand Sahara: EIGS)メンバーとみられ、人質をマリに連れていこうとしていた。2018年11月、フランスはIEGSの指導者クファ(Amadou Koufa)を殺害したと発表したが、今年になってクファは新たなビデオメッセージを発表するなど、死亡説が揺らいでいる。
この地域には2013年以来、国連、AU、「G5サヘル」、フランスが派兵しているが、治安はむしろ悪化している。17日付ルモンド紙は、地元で製造される即席爆発装置(IED)が大きな脅威になっていると報じている。軍事作戦の開始以来、15人の仏軍兵士が犠牲になっているが、うち8人がIEDによるものである。地雷と同じく、ジハディストはIEDをばら撒いて姿を隠し、それに触れた人が犠牲になる。仏軍兵士は「卑怯者の兵器だ」といら立ちを見せるが、非対称戦争にあっては非常に有効な武器である。一般住民が犠牲になるケースも増えており、2019年にはIEDの犠牲者の48%を占めている。
IEDは農薬(硝酸アンモニウム)を使って爆破装置を作る。農民から農薬を取り上げることはできず、ローカルに調達できる材料で、製造することができる。マリなどで使われているIEDは、アフガニスタンと同じ方法で製造されるという。「弱者の武器」として広く利用されているわけである。