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今日のアフリカ

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大西洋奴隷貿易に関する国連決議

2026/04/05/Sun

 3月25日、国連総会で、大西洋奴隷貿易を最も重大な「人道に対する罪」だとする決議が採択された。決議の正式名称は「奴隷化されたアフリカ人の人身取引および人種に基づく動産的奴隷制を、人道に対する最も重大な犯罪と位置づける宣言」と訳せる。これまでも何度か「人道に反する罪」だとされてきた大西洋奴隷貿易を、国連総会の場で、「最も重大な犯罪」だと認定したものである。

 決議は、賛成123,反対3(米国、イスラエル、アルゼンチン)、棄権52の圧倒的多数で採択された。ヨーロッパ諸国や日本は棄権し、ほとんどのグローバルサウスの国々、中国、ロシア、韓国などは賛成した。

 アフリカ諸国のなかでは、ベナンとマダガスカルが投票しなかった。ベナンは、行政上のミスだと述べ、内容には賛成するとしている。マダガスカルは明確な説明をしていないが、両国とも決議の提案国に名前を連ねているので、ベナンと同じく手続き的なミスによるものだろう。

 決議には幾つかの議論のポイントがある。第一に、補償(reparations)に関するものである。決議では、奴隷貿易を「人道に反する罪」だと認め、その補償を求めている。奴隷制度や奴隷貿易が重大な「人道に反する罪」だという認識は、様々な機会を通じて共有されてきた。2001年に南アフリカのダーバンで開催された反人種主義世界会議はよく知られているし、同じ年にフランスはいわゆる「トビラ法」を制定して、その認識を法制化した。ただし、補償については依然として消極的である。ヨーロッパ諸国や日本が棄権した理由として、この点が大きいのであろう。

 第二に、大西洋奴隷貿易の「特権化」という問題がある。奴隷貿易は、大西洋ルートだけでなく、インド洋やサハラ砂漠を経由したルートもある。しかし、この決議では、大西洋奴隷貿易だけが取り上げられている。大西洋奴隷貿易だけに光を当てることが、「記憶のヒエラルキー化」につながらないか懸念する声がある(4月2日付ルモンド)。

 いずれも難しい問題である。補償について前向きな国はなく、奴隷貿易に関する理解を深め、記念事業を行うところから時間をかけて進めるしかない。また、大西洋奴隷貿易は、強制移住を強いられた人口の規模が巨大であることに加えて、現代資本主義経済の基盤を構築した点で特に重要だという識者の意見がある。ただし、奴隷貿易の他のルートについても忘却を防ぐ取り組みが必要なことは言うまでもない。(武内進一)

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