今日のアフリカ
2026年06月
ベナン新大統領の地域外交
2026/06/27/Sat
ベナンのワダニ(Romuald Wadagni)新大統領が、就任早々、活発な地域外交を展開している。5月24日に大統領就任式を終えると、6月初めにナイジェリア、ニジェール、ブルキナファソ、トーゴ、コートジボワールを歴訪した。
歴訪の主目的は地域の緊張緩和で、特にニジェールとの関係改善がポイントである。2023年のクーデタで軍事政権が成立したニジェールに対して、地域機構の西アフリカ経済共同体(ECOWAS)は経済制裁を加え、ベナンもそれを積極的に支持した。その結果、国境は封鎖され、両国関係は著しく緊張した。昨年12月にベナンでクーデタ未遂が起こった際には、ニジェールの関与が疑われた。
ワダニは、大統領就任式にニジェールの首相、内相、国境地域で強い政治力を持つスルタンを招待したうえで、自ら首都ニアメを訪問し、軍事政権トップのチアニと会談した。結果として、6月20-21日、ベナンの最大都市コトヌをニジェールの治安担当大臣が訪れ、安全保障・国境協定に署名した。ニジェールはベナンに駐留するフランス軍の存在に神経を尖らせており、完全な和解とは言えないものの、両国関係は大きく改善した。
ワダニは今回の歴訪でブルキナファソを訪問し、トラオレ大統領と会談している。マリ、ニジェールとともにECOWASから脱退したブルキナファソへのアプローチも、西アフリカの緊張緩和という文脈で注目される。関係がよくなかった隣国のトーゴを訪問したことも、同様の文脈で重要な動きである(23日付Africa Confidential)。
これまで西アフリカでは、サヘル三国(マリ、ブルキナファソ、ニジェール)の軍事政権が反フランスを掲げ、ECOWASからも脱退して、域内の緊張を高めていた。三国に対してはトーゴが接近していたが、ナイジェリア、ベナン、コートジボワールはサヘル三国に厳しい態度を示してきた。こうした域内の構図が変化するかも知れない。(武内進一)
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グローバルなエネルギー危機とアフリカのEV
2026/06/24/Wed
イラン戦争が引き起こしたグローバルなエネルギー危機が、アフリカではEV(電気自動車、電動バイク)への需要増となって現れている。東アフリカでは特にEVの利用が広がっているが、昨今のガソリン価格急騰がこれに拍車をかけている。
アフリカ各国で電動バイクとバッテリー交換事業を展開するSpiro社は、最近巨額の資金調達を続けている。22日には中国市場から5500万ドルの資金調達を発表した。ヨーロッパやアジアの中古車利用からアフリカのEV普及が始まると考えられていたが、中国製のEVや中国製部品を使ってアフリカで組み立てられたバイクの普及が急速に進んだ。モバイルフォンで起こったことがEVでも起きている。
ケニア、エチオピア、ルワンダなど、東アフリカを中心とするアフリカ各国は、次々にEV普及策を打ち出している。ルワンダでは、2025年1月に首都キガリでEV以外のバイクタクシーの新規登録を禁止し、EV販売は28%上昇した。バイクタクシーの主役は、急速に電動バイクになりつつある。
IEAによれば、アフリカにおける電気自動車の販売台数は、2023年の4000台から2025年には2万5000台へ急増した。その35%を中国メーカーのBYDが占めている。
アフリカをベースにするスタートアップも育っており、EV向けチャージスポットを提供するKabisa社は、ルワンダやケニアで事業を拡大させている。ケニアに本社を置く電気自動車用バッテリー・電気バイク製造のARC Ride社は、世銀のIFCなどから数千万ドルの資金調達に成功し、世界最大の電動二輪車メーカーである中国のYadea社とパートナーシップを結んだ。
Yadea社幹部は、ホルムズ海峡危機は「中国がアフリカのEV市場で支配力をいっそう強める機会を提供した」と述べている(22日付ファイナンシャル・タイムズ)。米国が引き起こした戦争が、中国の利益に繋がるという図式がここでも看取される。
一方、Spiro社の創業者でインド人実業家のGagan Gupta氏は、同社が先月アフリカで1万台の電動バイクを販売したとして、2027年には年間100万台の目標を掲げる。同氏は次のように述べている。「現在ほとんど中国でつくられているリチウムイオンバッテリーをケニアやナイジェリアで製造する企業が増えるだろう。アフリカの資源がアフリカで加工されることになる」。EVの構造は、内燃エンジンを搭載したガソリン車より単純だと言われる。最近、幾つかのアフリカの国々が見せているレアメタル輸出制限の動きと合わせて考えれば、それほど遠くない将来、自動車の生産拠点が大挙してアフリカに移ることもあり得るかもしれない。(武内進一)
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コンゴ民主共和国で大統領任期延長の動き
2026/06/17/Wed
コンゴ民主共和国のチセケディ大統領が、任期延長に向けた動きを本格化させている。6月9日に下院が憲法改正案を採択し、15日には同案が上院を通過した。
2006年に制定されたコンゴの現行憲法には厳しい三選禁止条項があるが、今回の法案はその条項の変更ではなく、技術的な点の改正に留まる。しかし、国民投票を経て憲法改正がなされれば、チセケディのこれまでの任期がカウントされなくなり、新たな一期目の任期として次の大統領選挙に立候補できる。アフリカの多くの国々で、大統領の任期延長のために用いられてきた手法である。
任期延長のために憲法改正を利用するチセケディと与党の意図は明らかであり、抗議の声が高まっている。議会では野党が審議をボイコットしたし、12日にはキンシャサでデモが発生して2人が死亡した。
チセケディ周辺は今が任期延長のチャンスと見ているが、その背景には米国との関係がある。トランプ政権はコンゴ東部紛争を終わらせるとして、コンゴとルワンダの仲介に動いてきた。その動機はコンゴの稀少鉱物確保にあり、米国の民間企業をコンゴの鉱物資源開発に関与させるために、コンゴ寄りの姿勢を取っている。このタイミングであれば、任期延長に動いても米国は何も言わないとの計算があるようだ。憲法レファレンダムも、11月3日に予定されている米国の中間選挙前に実施されると見る向きが多い。中間選挙でトランプが負ける前に、さっさとレファレンダムを済ませようということである(16日付ルモンド)。
この状況は、平たく言えば、チセケディと与党が数の力で権力維持を図っているのだが、そこに米国との関係が深く影響していることがポイントである。国際関係とりわけパワーを持った国家との関係を利用して、自分たちの利益を最大化しようとしている。
チセケディの前職カビラも憲法を改正して三選を目指したが、激しい抗議デモに直面して諦めた経緯がある。トランプ政権の威を借りたチセケディは、これに成功するだろうか。(武内進一)
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南アフリカで反移民運動の高まり
2026/06/09/Tue
5月以降、南アフリカで反移民運動の高まりが報道されている。5月27日には、ガーナ政府が飛行機をチャーターし、300人の自国民を帰還させた。ナイジェリア政府も自国民の帰還を準備している(5月30日付ルモンド)。
南アフリカには、アフリカ各国出身の移民が数多く生活している。その数は、約400万人(人口の6%程度)とも言われる(5月31日付ファイナンシャルタイムズ)。合法的に滞在する人も多いが、非合法に滞在する移民が自分たちの職を奪っているという考えが、南アフリカ人に広く流通している。
南アフリカの反移民運動は「ゼノフォビア」(外国人嫌悪)とも呼ばれるが、2008年、2015年、2019年など、これまで周期的に起こってきた。特に、選挙の際に政治家が反移民感情を煽ることが指摘されている。失業率の高さを移民のせいにして、取り締まりを強化すると訴えるわけである。
今回も、11月に予定されている地方選挙の影響が見て取れる。ジョハネスバーグ近郊のタウンシップ、ソウェトでは、野党ActionSAのマシャバ党首が選挙集会を開き、不法移民取り締まり強化を訴えた後に、移民が経営する商店に支持者が押しかけたという(5月31日付FT)。
6月5日付ルモンド紙は、反移民運動の指導者のひとりJacinta Ngobese-Zumaを紹介している。もともとクワズールー=ナタール州のFMラジオでズールー語のパーソナリティを務めていた。2025年3月以降、ダーバンで、不法移民取り締まり強化を訴える運動「March and March」を活発化させた。Facebookには87万人のフォロワーを持ち、反移民を訴える動画を相次いで投稿して若者から支持を集めている。ズマという名前だが、元大統領との親族関係はない。クワズールー=ナタール州から始まったMarch and Marchの反移民デモは、イーストロンドン、ヨハネスブルク、ブルームフォンテイン、ケープタウンなど、南アフリカ各地に広がっている。
アフリカ各国は、南アフリカへの非難を強めている。ガーナ政府はアクラに駐在する南ア大使を呼び出して抗議し、AUの会合でも問題化する意向である。反移民運動が、アフリカにおける南アフリカの指導力に重大なダメージを与えることは疑いない。(武内進一)
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マリとの関係を深めるトルコ
2026/06/06/Sat
2日付けルモンド紙は、トルコが軍事物資の提供や軍事協力を通じて、マリやサヘル諸国との関係を深めていると報じている。最近、トルコとマリの間では、装甲車、光電子工学システム、監視システム、地雷除去装置、軍人トレーニングなどに関して、数多くの二国間協定が結ばれた。
両国の関係強化は、最近になって加速している。理由のひとつは、ロシアの影響力低下である。4月にジハディストの攻撃で軍事政権側が深刻な被害を受けたことで、マリ市民からロシアへの批判が高まった。ロシア兵がジハディストらの攻撃の前に無力だったからである。これがトルコの進出を後押しした。
過去10年間に、トルコとマリの貿易は3倍以上に増加した。きっかけのひとつはエルドアン大統領のマリ訪問(2018年)であった。2024年の貿易では、最大の輸出品は武器・軍事用品で、総額の約20%を占めた。それに電子機器、工作機械、穀物などが続く。
2025年11月、マリで防衛治安国際サロン(Bamako Expo: Bamex)が開催され、トルコの防衛産業が参加した。この催し物は、トルコ側が主導してが開催し、防衛電子産業のAselsan、ミサイル製造のRoketsan、武器製造MKE、ドローン製造のBaykarなどトルコの主要企業が参加した。マリ軍部やサヘル諸国指導者を前に、トルコ企業が技術を売り込む機会となった。
マリでは、軍事政権がフランスとの関係を断つなかで、ロシア、中国、トルコなどとの関係が深まった。関係強化の梃子となっているのは、マリ側が渇望している軍需用品である。ロシアと違って、トルコがマリに派兵することは当面ないと見られるが、軍事顧問を送り、訓練に協力することは十分にあり得る。すでにナイジェリアに対しては、そうした協力を進めているようだ。
紛争影響国は軍事物資に対する需要が大きいので、それを中心に対外関係が構築されやすい。トルコはソマリアに対しても関係を強化しており、軍事拠点を置いている。(武内進一)
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