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ダンゴテ製油所の新規株式公開
2026/09/21/Mon
ナイジェリアの実業家ダンゴテ(Aliko Dangote)が建設した製油所が、9月14日から新規株式公開(IPO)を実施している。このIPOについて、20日付ファイナンシャルタイムズ紙が興味深い解説を行っているので紹介する。
今回のIPOは一般投資家向けで、1株525ナイラの株式を10株から購入できる。ダンゴテは、1000万人のナイジェリア国民が10株ずつ株式を購入してほしいと希望した。このIPOでは16億ドルを調達する予定であり、そこから製油所の企業価値は約500億ドルと評価される。
製油所の建設コストは約200億ドルだったので、企業評価額が500億ドルというのは、かなり高い。そして、今回売却される株式の価格は、7月に私募で$2.5bn調達した時と比べて10%近く高くなっている。この強気の価格設定は、一般投資家が私募で購入した投資家より高い価格を支払うことを意味する。市場で自由に売買される株式がわずか3.3%しかないため、流動性は低くなるだろう。
こうした指摘に対してダンゴテ側は、2028-29年には製油所の生産能力は140万バレル/日に倍増するので、企業価値はその後の成長を見込んだ額になっていると反論している。
このIPOはアフリカ史上最大であり、日量70万バレルを製造できる精製施設も非常に重要なものだ。ナイジェリアは、ガソリンに加えて、肥料やポリプロピレンでも自給能力を持つことになる。
アフリカのインフラはアフリカの資本が支えるべきだというダンゴテの議論は、正しい。アフリカには4兆ドルの資産があるが、生産的投資のリスク資本に投資されることは少なく、利回りの高い政府債務に投資されることが多いのが現実だ。ただし、資金の効率的活用には、資本市場の深化が必要である。ナイジェリア政府は、ラゴスを金融センターにすべく努力しなければならない。
近年、アフリカ全体で、資源の国内加工に対する議論が高まっている。その対象は、コバルトなど鉱物資源からココアのような農産物まで多様である。ただ、多くの場合、こうした資源ナショナリズムは、加工に必要な道路インフラや電力インフラに関する具体的な議論を欠いている。ダンゴテのここまでの成功は多くの人の予想を超えたものだが、今後プロジェクトを成功させるには、サポートするインフラが必要になる。例えば、製油所が完成したあとも、国営企業などが原油を供給し続ける体制が不可欠だ。アフリカには民間ビジネスの成功物語が必要だが、そのためには規模の経済を可能にする政府の政策が必須なのだ。
これは説得的な記事である。ダンゴテは希代の実業家として名を馳せているが、ナイジェリア政府との深い関係でも知られている。民間企業の成功には、政府の適切なサポート、特にインフラの充実が必須だというのは、その通りだろう。ここでもアフリカの国家をめぐる問題が顔を出す。(武内進一)
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FGM規制へのバックラッシュ
2026/09/19/Sat
西アフリカ諸国で、FGM(女性性器切除)規制に対するバックラッシュが起こっている。8月下旬、マリで25万人以上のフォロワーを持つインフルエンサー(Abdoul Niang氏)が、FGMの利点やその維持を訴える動画を投稿し、広く拡散された。同じ時期、AIで生成されたと見られる大量の動画がSNSに溢れ、FGMへの支持を呼びかけた。マリではNGOグループがFGMを法的に禁止するよう求める運動を展開しており、これに対する反発と見られる(16日付ルモンド)。
FGMは西アフリカ諸国で広く行われてきた。明らかに女性の健康を害する行為であることから、1970年代頃から国連など国際機関を中心に反対、規制の声が高まり、アフリカでも1990年代頃から国法でその実践を禁止する国が現れている。しかし、ここ数年は、国際社会の働きかけを拒絶し、FGMを擁護して、その存続を訴える動きが目立っている。
ガンビアでは、2015年以来FGMを禁止する法律が制定されていたが、近年になって反発する声が強まり、2024年には同法の廃止が議会で提案されるに至った(2024年3月5日付ルモンド)。その後、議論は裁判所で続いている。国際社会の関与を拒否して、FGMを擁護する声は、ギニアなど他の西アフリカ諸国でも目立っている。
女性の身体を傷つけ、女性のセクシュアリティを社会的にコントロールする機能を持つFGMが、伝統や文化の名の下に堂々と擁護される状況を見ると、我々がバックラッシュの時代に生きていると感じる。FGM擁護の声の高まりは、より大きなコンテクストにおいて考えるべきものであろう。(武内進一)
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域内移民排斥運動の連鎖
2026/09/06/Sun
アフリカ諸国で域内移民を排斥する動きが目立っている。ケニアでは、2日、ルト大統領がケニア人商人との会合で、路上で販売する小規模商人の取り締まり策を打ち出した。
ルトは、外国人投資家との信頼関係を重視する一方で、「中国からやって来て、路上で商売をするような」小規模な商人は取り締まるべきとの考えを示した。この発言は輸入品関税率上昇に反発するケニア人商人との会合で出たものだが、路上商人の多くは中国人ではなく、ブルンジ、タンザニア、ウガンダなど、近隣の東アフリカ共同体(EAC)諸国の出身者である。そもそもEAC諸国は、共通市場として移動の自由が認められ、その出身者にはケニアで特別労働許可が与えられている。
またケニアは80万人の難民を受け入れているが、その13%が都市部に居住するとされる。こうした難民にも労働許可が与えられており、路上商人として活動する者も少なくない(5日付ルモンド)。
つまり、ケニアの場合、合法的な滞在、労働資格を持つ周辺国出身者に対して、取り締まりを強化しようとしている。4日、ケニアの人権団体は、ルトの政策が「反憲法的」だと批判した。
関連する動きとして、セネガルの例がある。セネガルでは、右派政党の議員と結びついたインフルエンサーが、SNSでギニア人商人に対する中傷動画を拡散させた。マリ、ニジェール、シエラレオネ出身の商人も標的にされ、周辺国からの移民がセネガル人の職を奪うと非難している(4日付ルモンド)。これら諸国はいずれも西アフリカ経済共同体(ECOWAS)加盟国で、EACと同じく、共通市場として移動の自由が認められている。
南アフリカについては本欄でも取り上げたが、「不法移民」の帰還を求める大規模なデモが頻発した。
3ヵ国の事例は、それぞれ少しずつ異なっている。南アフリカの排斥運動の対象は「不法」な移民だが、ケニアやセネガルでは合法な滞在者への排斥が起こっている。ケニアは大統領が政策として移民排斥を打ち出したが、セネガルは一部の政党とインフルエンサーの動きに過ぎない。ただし、域内国からの移民が排斥の対象となった点は共通している。これらは直接的にはこれらの国々における高い失業率や経済危機の余波だが、米国やヨーロッパで起こっている移民排斥の動きの鏡像という側面もある。スケープゴートとして狙われやすい人々への攻撃が強まっている。(武内進一)
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ニジェールでクーデタ未遂
2026/08/31/Mon
8月29日、ニジェールで起こったクーデタ未遂事件は、チアニ軍事政権の不安定性を改めて印象づけた。同日午前1時頃、ニアメ国際空港に位置する軍事基地(101基地と呼ばれる)を反乱軍が攻撃、占拠した。反乱軍はその後、大統領公邸や国営放送局も攻撃し、一時は国営放送局占拠にも成功した。軍事政権側は外部に支援を求め、ロシアはニジェールの要請に基づいて「アフリカ部隊」(Africa Corps)を展開させた。地上部隊、航空部隊の支援を得て、軍事政権側は同日21時頃に101基地を奪還した(29日、30日付ルモンド。31日付ファイナンシャルタイムズ)。
101基地が攻撃されるのは、今年に入って3回目である。ただし、前2回はイスラム急進主義勢力(JNIM/GSIM)によるものだが、今回は国軍の青年将校が主導したものだった。JNIMの攻撃で軍人にも多数の犠牲者がでており、軍内には不満が蓄積している。それが今回のクーデタ未遂事件を引き起こしたのである。ニジェール国軍の亀裂を露呈する事件であった。
国軍は内部に亀裂を抱えているが、外部から手厚い支援を受けている。今回は、ロシアの「アフリカ部隊」がニジェール大統領警護隊を支援したことで、クーデタの試みを鎮圧することができた。アルジェリアも、ニジェールの要請を受けて、軍用機を派遣したと発表している。
アフリカで影響力を確保しようとする国々は、政権の国内的正当性など気にせず、自国の利益になれば政権を軍事的に支える。その典型がロシアだが、湾岸諸国など、同様の行動を取る国々は増えているようだ。(武内進一)
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ザンビア大統領選挙結果をめぐる論争
2026/08/22/Sat
13日に実施されたザンビアの大統領選挙では、現職のヒチレマ(Hakainde Hichilema)が約60%の得票率で対立候補のムンドゥビレ(Brian Mundubile)を破って再選を果たした。18日夜に発表があり、首都ルサカでは支持者が街に繰り出した。
ザンビアは、1990年に複数政党制を導入して以来、競争的な民主主義が維持されてきた。選挙による政権交代も何度か経験している。しかし、今回は、選挙の正当性に疑念を抱かせる事態が起こった。ヒチレマは、選挙前から野党や市民社会への締め付けを強めた。投票の翌日には野党陣営の有力者が逮捕され、開票が一時中断された。野党側は、選挙活動への妨害があったとして、司法的手段に訴える構えを見せている(19日付ルモンド)。
選挙結果をめぐって、ウエブマガジンThe Africa Report上で論争が起こっている。18日に、著名な政治学者のNic CheesemanとNicole Beardsworthは、大統領選挙に不正が疑われるとの記事を投稿した。公表されたデータから、大統領選挙の投票率が、同時に行われた国会議員選挙、地方議会選挙と比べて、著しく高いと指摘したのである。不正によって、35万~55万票がヒチレマ側に積み増された疑いがあるとのことである。
これに対して、翌19日、同じThe Africa Report上に反論が掲載された。Mcqueen Zazaという名の弁護士・人権活動家によるもので、ザンビアではこれまでも、大統領選挙への投票率が国会議員選挙を上回ってきた、今回の事態は何ら不思議なことではない、という主張である。
アフリカでは、これまでもケニアやマラウイで、最高裁判所が大統領選挙のやり直しを命じたケースがある。今後の展開は読めないが、これまで競争的民主主義が維持されてきた国だけに、混乱が深まらないことを願うばかりである。(武内進一)
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UAEのアフリカ・ビジネスへの進出
2026/08/08/Sat
4日付ファイナンシャルタイムズは、アラブ首長国連邦(UAE)のアフリカ・ビジネスへの進出について特集記事を掲載した。2022年に就任したムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領(通称MBZ)の下、港湾開発事業、エネルギー、農業など幅広い分野でアフリカへの進出を活発化させており、「中国以来の地政学的転換」と評されている。
港湾開発を行うのは、ドバイに本拠を置くドバイ・ポート・ワールド(DPワールド)社である。ロジスティックスを担うアブダビ・ポート社とともに、13のアフリカ諸国で港湾開発を行っている。例えば、ソマリランドのベルベラ港は急速に整備され、エチオピアとの流通拠点として重要な役割を果たしている。2023年のコンテナ・ポート・パフォーマンス・インデックスは、ベルベラをサブサハラアフリカで最も効率的な港湾に選定した。
農地への投資も活発で、スーダンのナイル川沿岸地域やエジプト南部のトシュカ湖付近で、数多くの農地を開拓している。投資の多くは、MBSの弟が代表を務めるAl Dahra社によるもので、アルファルファや小麦などの食料作物を栽培してUAEに輸出している。その他、アンゴラ、モーリタニア、南スーダン、ケニア、タンザニアでも農地開発を行っている。
アフリカの鉱業は近年グローバル企業の注目を集めているが、この分野への投資を積極的に行っているUAE企業としてInternational Holding Company (IHC)がある。そのトップはMBZの兄弟で国家安全保障アドバイザーのSheikh Tahnoon bin Zayed al-Nahayanである。IHCは、ザンビアにおいて銅、コンゴ民主共和国、エチオピア、マリで金、モーリタニアでの鉄鉱石採掘などにも資金拠出を行っている。
ドバイが世界有数の金の取引市場になっていることもあり、アフリカの金に対する関心は非常に高い。スーダン内戦においてUAEによる準軍事組織RSFへの支援は公然の秘密だが、RSFが制圧した金鉱山から相当量の金がドバイに流入していると言われる。
投資分野は幅広い。アフリカ・コンフィデンシャル誌は7日付記事で、UAEがケニアとの間で交渉していた大規模データセンター投資案件が中断されたと報じた。これは中断した事例だが、ケニアに限らずAI関連投資も多くの国で進めている。
アフリカのエリート層もUAEとの関係を強めている。2025年には、ドバイ商工会議所に登録されたアフリカ企業は3万社以上に達した。これに伴って、アフリカからドバイへの資金流出も指摘されている。先進国がマネーロンダリングをはじめ金融取引の規制を強めるなか、相対的に緩い規制が利用されている可能性がある。
MBZの下で急速にアフリカ展開を進めるUAEだが、MBZ一族の意向に依存しており、危うさを孕んでいる。そうしたなかでも、当面UAEのアフリカ進出は拡大基調を辿るであろう。トルコ、サウジアラビア、カタールなどの中東諸国と同様、UAEにとって、アフリカとの政治経済的な関係を強めるメリットがきわめて大きいからである。(武内進一)
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スペイン領セウタに大量の移民が越境
2026/08/05/Wed
7月30-31日にかけて、アフリカ大陸の北端にあるスペイン領セウタに、凄まじい数の移民が押し寄せた。セウタに隣接するモロッコの町から泳いで渡ってきた人々の数は、4万人とも6万人とも言われる。そのほとんどは、翌日にはモロッコに戻された。
膨大な数の人々の越境は、当然ながら、様々な問題を引き起こした。スペイン当局の発表では、80人近い人々が海で溺れるなどして死亡した。また、大量越境は、ヨーロッパ連合(EU)全体の安全保障問題として認識された。イタリアなど移民に厳しい姿勢を取る政権は、EUの「国境」が破られたことを問題視し、シェンゲン協定の自由通行圏からスペインを排除するよう主張した(3日付ルモンド)。
大量越境の背景として、次のような要因が指摘されている。1)スペイン最高裁が7月初め、海路でスペイン領にやって来た移民を直ちに送還しないよう命じた。2)4月、スペイン政府が50万人の非正規移民(サンパピエ)を正規化する政策を打ち出した。3)7月31日、モロッコ国王モハメドVI世が在位25周年の記念式典を開催したため、国境警備人員が不足していた。4)7月20日、スペインのサンチェス首相がアルジェリアを訪問した。
1)、2)によって、モロッコからスペインに渡りたいという人々の願望が刺激され、3)によって実効性が高まった、というわけである(4日付ルモンド)。4)は、モロッコと敵対関係にあるアルジェリアに接近したスペインを罰するために、モロッコが意図的に警備を緩めたという解釈である(7月31日付ルモンド)。
「国境が開いた」という噂がSNSで急速に広まり、膨大な数の人々がセウタへと泳ぎだしたことは事実である。しかし、何がきっかけになったのか、未だ正確にわかってはいない。
スペイン当局は、モロッコへの批判を避けている。一方、モロッコは、最高裁の判決が原因だとして、スペインを非難している。この事件によって、移民に寛容な政策をとってきたスペイン左派政権は、イタリア、デンマーク、フィンランドなどの右派政権から非難を浴び、移民政策をめぐるEU内の亀裂が露わになった。スペインと関係が悪い米国やイスラエルも、ここぞとばかりにスペインを非難した。
大量の越境がモロッコにとってどんな利益があったかは、よくわからない。移民が対ヨーロッパ外交政策のレバレッジになることが改めて明確になったが、それは以前からわかっていたことである。今回の事件を受けて、少なくとも短期的には、スペインも移民政策を厳格化する可能性が高い。(武内進一)
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チャドがICC脱退表明
2026/07/28/Tue
27日、チャド政府は国際刑事裁判所(ICC)からの脱退を表明した。6月下旬に、ニジェール、マリ、ブルキナファソの三カ国が脱退を表明しており、それに続く動きである。
チャドの脱退の背景には、米国からの働きかけがある。ファドル(Abdoulaye Sabre Fadoul)外相は、脱退の決定が米国からの要請に従ったものだと述べた。7月23日、米国のガルシア(Frank Garcia)アフリカ担当国務次官補は、チャドに対してICCからの離脱を検討するよう電話で促した。米国は、ICC関係者への制裁と加盟国への離脱の働きかけの両面で、ICCへの圧力を加えている。
ただし、米国の働きかけだけが脱退の理由ではない。チャドには、ICCを恐れる理由がある。スーダン東部・ダルフールでの残虐行為に関する捜査が始まったからである。7月3-8日、ICCのカーン(Nazhat Shameem Khan)副検察官がチャドを訪問し、ダルフール紛争に関する捜査の一環で東部のスーダン人難民キャンプを訪れた。
ICCによるダルフールでの捜査は、2005年の第1次ダルフール紛争の際に始まり、すでに起訴、逮捕がなされている。2023年にスーダン内戦が勃発すると、ダルフールが再び戦場となり、数々の残虐行為が繰り返された。特に、2025年後半のエル・ファシェール陥落時には、準軍事組織RSFによって民間人の大量虐殺がなされた。これに対応して、ICCも捜査を再開したのである。
RSFは、主としてアラブ首長国連邦(UAE)によって支援されてきたが、その他にもエチオピア、ケニアなどのアフリカ諸国からも支持を得ている。チャドもまた、RSFに後方基地を提供してきたと指摘されている。これまで、ICCとチャド政府の協力関係は問題なく進んでいる。7月16日、カーン副検察官は国連安保理で、チャド政府の協力に感謝した。しかし、チャド政府は、RSFへの捜査が自国に及ぶことを警戒している。実際、スーダン市民社会から、UAEをはじめ、RSFへの協力国に対する告発がなされている。
ICCに対する警戒感があるところに、トランプ政権からの働きかけを受け、チャドがICC脱退を決断したと見てよいだろう。チャド政府は脱退に際して、それがICCの機能不全を指摘した(7月27日付ルモンド)。ICCの機能を限定的にしているのは、米国のような大国である。(武内進一)
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コンゴ民主共和国の「幽霊警官」
2026/07/20/Mon
7月9日、コンゴ民主共和国で国家警察に関する監査が公表され、63,817人が「活動なし」あるいは「存在せず」だと報告された。この監査の内容は、シャバニ副首相が10日の閣議で報告した。警官の総数が157,886人であるから、4割が存在しないことになる。
実体がないのに名簿には名前が掲載され、給与が支払われ、その給与を誰かが受け取るというのは、コンゴでは、警官に限らず、軍人を含めた公務員一般の常態である。2025年7月以降、警察改革の一環で生体認証制度が導入され、それによって今回の数字が公にされた。
「幽霊警官」の実態が明らかにされたことは、一歩前進と評価できるかもしれない。実際の警官数が9万人程度だとすれば、人口が1億人に近づくコンゴでは、警官一人あたりの住民数が1000人程度になる。この数字は、EUの平均で289人(14日付ルモンド)、日本では300人程度であるから、コンゴの警官には大きな負荷がかかっていることになる。
警官をはじめ、コンゴでは公務員の汚職が蔓延している。その背景には、給与がまともに支払われないために、市民に寄生して生計を立てているという実状がある。公務員数の正確な把握は、適切な給与の支払いの基本である。給与が適切に支払われることが、公務員改革の出発点になる。(武内進一)
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マリとアルジェリアの緊張緩和
2026/07/14/Tue
10日、マリはアルジェリアに対する空域閉鎖を解除すると発表した。また、自国に召還していた大使をアルジェリア勤務に復帰させることも合わせて発表した。アルジェリアも10日、召還していた駐マリ大使の復帰を発表。両国の関係改善の方向性が明らかになった。
長い国境を接する両国は歴史的に深い関係にあり、マリ北部の紛争もアルジェリアが調停に取り組んできた。その成果が2015年のアルジェ協定で、アルジェリアはトゥアレグ人武装勢力と太いパイプを持っている。しかし、2020年、21年にマリでクーデタが続き、アシミ・ゴイタをトップとする軍事政権が成立して以降、両国の関係は冷え込んでいた。ゴイタ政権はアルジェ協定を軽視し、2024年1月にはその廃棄を一方的に宣言した。
さらに、2025年4月には、アルジェリアが領空侵犯を理由にマリ軍のドローンを撃墜したことをきっかけとして、マリが領空を閉鎖し、両国が大使を召還する事態に至っていた(2025年4月8日付ルモンド)。
マリとアルジェリアの関係悪化に伴い、サヘル諸国同盟(AES)加盟国のブルキナファソ、ニジェールでもアルジェリアとの緊張が高まっていたが、今年に入って事態の変化を予感させる動きもあった。
2月には、ニジェール軍事政権トップのチアニがアルジェを訪問し、テブーン大統領と会談した(2026年2月17日付ルモンド)。ニジェールは、ナイジェリアからアルジェリアに達するトランスサハラ・ガスパイプラインの当時国として、アルジェリアと独自の利害を持つ。
今回のマリとアルジェリアの緊張緩和は、さらなる対立が利益にならないと両国が判断したことを意味するが、特にマリ側の要因が大きいと考えられる。国内のジハディストの活動が収まらず、4月には北部地域を奪還される苦境に陥るなかで、いつまでも北隣の大国と角突き合わせる余裕はない。今年4月の攻撃の際、ジハディストらはアルジェリアの仲介でロシア兵を国外に退去させたと伝えられている。マリ軍事政権としては、ジハディスト対策にアルジェリアの助力が不可欠である。
加えて、最近になって、マリ側を懸念させる情報が流通した。昨年4月にアルジェリア外務省高官がロシアを訪問して外務省や国防省の高官とマリ情勢について会談し、アシミ・ゴイタのやり方は誤りだとの見解で一致したという(Africa Confidential 2026年6月16日付)。Africa Corpsを所管するロシア高官が批判的に見ているとなれば、ゴイタ政権にとっては重大である。
アルジェリアにとっても、マリとの関係改善は、サヘル地域への影響力を取り戻す好機である。両国の関係改善が、サヘル三国をめぐる西アフリカの外交関係にどのような影響を与えるか、興味深い。(武内進一)
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