今日のアフリカ
2026年08月
ニジェールでクーデタ未遂
2026/08/31/Mon
8月29日、ニジェールで起こったクーデタ未遂事件は、チアニ軍事政権の不安定性を改めて印象づけた。同日午前1時頃、ニアメ国際空港に位置する軍事基地(101基地と呼ばれる)を反乱軍が攻撃、占拠した。反乱軍はその後、大統領公邸や国営放送局も攻撃し、一時は国営放送局占拠にも成功した。軍事政権側は外部に支援を求め、ロシアはニジェールの要請に基づいて「アフリカ部隊」(Africa Corps)を展開させた。地上部隊、航空部隊の支援を得て、軍事政権側は同日21時頃に101基地を奪還した(29日、30日付ルモンド。31日付ファイナンシャルタイムズ)。
101基地が攻撃されるのは、今年に入って3回目である。ただし、前2回はイスラム急進主義勢力(JNIM/GSIM)によるものだが、今回は国軍の青年将校が主導したものだった。JNIMの攻撃で軍人にも多数の犠牲者がでており、軍内には不満が蓄積している。それが今回のクーデタ未遂事件を引き起こしたのである。ニジェール国軍の亀裂を露呈する事件であった。
国軍は内部に亀裂を抱えているが、外部から手厚い支援を受けている。今回は、ロシアの「アフリカ部隊」がニジェール大統領警護隊を支援したことで、クーデタの試みを鎮圧することができた。アルジェリアも、ニジェールの要請を受けて、軍用機を派遣したと発表している。
アフリカで影響力を確保しようとする国々は、政権の国内的正当性など気にせず、自国の利益になれば政権を軍事的に支える。その典型がロシアだが、湾岸諸国など、同様の行動を取る国々は増えているようだ。(武内進一)
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ザンビア大統領選挙結果をめぐる論争
2026/08/22/Sat
13日に実施されたザンビアの大統領選挙では、現職のヒチレマ(Hakainde Hichilema)が約60%の得票率で対立候補のムンドゥビレ(Brian Mundubile)を破って再選を果たした。18日夜に発表があり、首都ルサカでは支持者が街に繰り出した。
ザンビアは、1990年に複数政党制を導入して以来、競争的な民主主義が維持されてきた。選挙による政権交代も何度か経験している。しかし、今回は、選挙の正当性に疑念を抱かせる事態が起こった。ヒチレマは、選挙前から野党や市民社会への締め付けを強めた。投票の翌日には野党陣営の有力者が逮捕され、開票が一時中断された。野党側は、選挙活動への妨害があったとして、司法的手段に訴える構えを見せている(19日付ルモンド)。
選挙結果をめぐって、ウエブマガジンThe Africa Report上で論争が起こっている。18日に、著名な政治学者のNic CheesemanとNicole Beardsworthは、大統領選挙に不正が疑われるとの記事を投稿した。公表されたデータから、大統領選挙の投票率が、同時に行われた国会議員選挙、地方議会選挙と比べて、著しく高いと指摘したのである。不正によって、35万~55万票がヒチレマ側に積み増された疑いがあるとのことである。
これに対して、翌19日、同じThe Africa Report上に反論が掲載された。Mcqueen Zazaという名の弁護士・人権活動家によるもので、ザンビアではこれまでも、大統領選挙への投票率が国会議員選挙を上回ってきた、今回の事態は何ら不思議なことではない、という主張である。
アフリカでは、これまでもケニアやマラウイで、最高裁判所が大統領選挙のやり直しを命じたケースがある。今後の展開は読めないが、これまで競争的民主主義が維持されてきた国だけに、混乱が深まらないことを願うばかりである。(武内進一)
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UAEのアフリカ・ビジネスへの進出
2026/08/08/Sat
4日付ファイナンシャルタイムズは、アラブ首長国連邦(UAE)のアフリカ・ビジネスへの進出について特集記事を掲載した。2022年に就任したムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領(通称MBZ)の下、港湾開発事業、エネルギー、農業など幅広い分野でアフリカへの進出を活発化させており、「中国以来の地政学的転換」と評されている。
港湾開発を行うのは、ドバイに本拠を置くドバイ・ポート・ワールド(DPワールド)社である。ロジスティックスを担うアブダビ・ポート社とともに、13のアフリカ諸国で港湾開発を行っている。例えば、ソマリランドのベルベラ港は急速に整備され、エチオピアとの流通拠点として重要な役割を果たしている。2023年のコンテナ・ポート・パフォーマンス・インデックスは、ベルベラをサブサハラアフリカで最も効率的な港湾に選定した。
農地への投資も活発で、スーダンのナイル川沿岸地域やエジプト南部のトシュカ湖付近で、数多くの農地を開拓している。投資の多くは、MBSの弟が代表を務めるAl Dahra社によるもので、アルファルファや小麦などの食料作物を栽培してUAEに輸出している。その他、アンゴラ、モーリタニア、南スーダン、ケニア、タンザニアでも農地開発を行っている。
アフリカの鉱業は近年グローバル企業の注目を集めているが、この分野への投資を積極的に行っているUAE企業としてInternational Holding Company (IHC)がある。そのトップはMBZの兄弟で国家安全保障アドバイザーのSheikh Tahnoon bin Zayed al-Nahayanである。IHCは、ザンビアにおいて銅、コンゴ民主共和国、エチオピア、マリで金、モーリタニアでの鉄鉱石採掘などにも資金拠出を行っている。
ドバイが世界有数の金の取引市場になっていることもあり、アフリカの金に対する関心は非常に高い。スーダン内戦においてUAEによる準軍事組織RSFへの支援は公然の秘密だが、RSFが制圧した金鉱山から相当量の金がドバイに流入していると言われる。
投資分野は幅広い。アフリカ・コンフィデンシャル誌は7日付記事で、UAEがケニアとの間で交渉していた大規模データセンター投資案件が中断されたと報じた。これは中断した事例だが、ケニアに限らずAI関連投資も多くの国で進めている。
アフリカのエリート層もUAEとの関係を強めている。2025年には、ドバイ商工会議所に登録されたアフリカ企業は3万社以上に達した。これに伴って、アフリカからドバイへの資金流出も指摘されている。先進国がマネーロンダリングをはじめ金融取引の規制を強めるなか、相対的に緩い規制が利用されている可能性がある。
MBZの下で急速にアフリカ展開を進めるUAEだが、MBZ一族の意向に依存しており、危うさを孕んでいる。そうしたなかでも、当面UAEのアフリカ進出は拡大基調を辿るであろう。トルコ、サウジアラビア、カタールなどの中東諸国と同様、UAEにとって、アフリカとの政治経済的な関係を強めるメリットがきわめて大きいからである。(武内進一)
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スペイン領セウタに大量の移民が越境
2026/08/05/Wed
7月30-31日にかけて、アフリカ大陸の北端にあるスペイン領セウタに、凄まじい数の移民が押し寄せた。セウタに隣接するモロッコの町から泳いで渡ってきた人々の数は、4万人とも6万人とも言われる。そのほとんどは、翌日にはモロッコに戻された。
膨大な数の人々の越境は、当然ながら、様々な問題を引き起こした。スペイン当局の発表では、80人近い人々が海で溺れるなどして死亡した。また、大量越境は、ヨーロッパ連合(EU)全体の安全保障問題として認識された。イタリアなど移民に厳しい姿勢を取る政権は、EUの「国境」が破られたことを問題視し、シェンゲン協定の自由通行圏からスペインを排除するよう主張した(3日付ルモンド)。
大量越境の背景として、次のような要因が指摘されている。1)スペイン最高裁が7月初め、海路でスペイン領にやって来た移民を直ちに送還しないよう命じた。2)4月、スペイン政府が50万人の非正規移民(サンパピエ)を正規化する政策を打ち出した。3)7月31日、モロッコ国王モハメドVI世が在位25周年の記念式典を開催したため、国境警備人員が不足していた。4)7月20日、スペインのサンチェス首相がアルジェリアを訪問した。
1)、2)によって、モロッコからスペインに渡りたいという人々の願望が刺激され、3)によって実効性が高まった、というわけである(4日付ルモンド)。4)は、モロッコと敵対関係にあるアルジェリアに接近したスペインを罰するために、モロッコが意図的に警備を緩めたという解釈である(7月31日付ルモンド)。
「国境が開いた」という噂がSNSで急速に広まり、膨大な数の人々がセウタへと泳ぎだしたことは事実である。しかし、何がきっかけになったのか、未だ正確にわかってはいない。
スペイン当局は、モロッコへの批判を避けている。一方、モロッコは、最高裁の判決が原因だとして、スペインを非難している。この事件によって、移民に寛容な政策をとってきたスペイン左派政権は、イタリア、デンマーク、フィンランドなどの右派政権から非難を浴び、移民政策をめぐるEU内の亀裂が露わになった。スペインと関係が悪い米国やイスラエルも、ここぞとばかりにスペインを非難した。
大量の越境がモロッコにとってどんな利益があったかは、よくわからない。移民が対ヨーロッパ外交政策のレバレッジになることが改めて明確になったが、それは以前からわかっていたことである。今回の事件を受けて、少なくとも短期的には、スペインも移民政策を厳格化する可能性が高い。(武内進一)
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