4日付ファイナンシャルタイムズは、アラブ首長国連邦(UAE)のアフリカ・ビジネスへの進出について特集記事を掲載した。2022年に就任したムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領(通称MBZ)の下、港湾開発事業、エネルギー、農業など幅広い分野でアフリカへの進出を活発化させており、「中国以来の地政学的転換」と評されている。
港湾開発を行うのは、ドバイに本拠を置くドバイ・ポート・ワールド(DPワールド)社である。ロジスティックスを担うアブダビ・ポート社とともに、13のアフリカ諸国で港湾開発を行っている。例えば、ソマリランドのベルベラ港は急速に整備され、エチオピアとの流通拠点として重要な役割を果たしている。2023年のコンテナ・ポート・パフォーマンス・インデックスは、ベルベラをサブサハラアフリカで最も効率的な港湾に選定した。
農地への投資も活発で、スーダンのナイル川沿岸地域やエジプト南部のトシュカ湖付近で、数多くの農地を開拓している。投資の多くは、MBSの弟が代表を務めるAl Dahra社によるもので、アルファルファや小麦などの食料作物を栽培してUAEに輸出している。その他、アンゴラ、モーリタニア、南スーダン、ケニア、タンザニアでも農地開発を行っている。
アフリカの鉱業は近年グローバル企業の注目を集めているが、この分野への投資を積極的に行っているUAE企業としてInternational Holding Company (IHC)がある。そのトップはMBZの兄弟で国家安全保障アドバイザーのSheikh Tahnoon bin Zayed al-Nahayanである。IHCは、ザンビアにおいて銅、コンゴ民主共和国、エチオピア、マリで金、モーリタニアでの鉄鉱石採掘などにも資金拠出を行っている。
ドバイが世界有数の金の取引市場になっていることもあり、アフリカの金に対する関心は非常に高い。スーダン内戦においてUAEによる準軍事組織RSFへの支援は公然の秘密だが、RSFが制圧した金鉱山から相当量の金がドバイに流入していると言われる。
投資分野は幅広い。アフリカ・コンフィデンシャル誌は7日付記事で、UAEがケニアとの間で交渉していた大規模データセンター投資案件が中断されたと報じた。これは中断した事例だが、ケニアに限らずAI関連投資も多くの国で進めている。
アフリカのエリート層もUAEとの関係を強めている。2025年には、ドバイ商工会議所に登録されたアフリカ企業は3万社以上に達した。これに伴って、アフリカからドバイへの資金流出も指摘されている。先進国がマネーロンダリングをはじめ金融取引の規制を強めるなか、相対的に緩い規制が利用されている可能性がある。
MBZの下で急速にアフリカ展開を進めるUAEだが、MBZ一族の意向に依存しており、危うさを孕んでいる。そうしたなかでも、当面UAEのアフリカ進出は拡大基調を辿るであろう。トルコ、サウジアラビア、カタールなどの中東諸国と同様、UAEにとって、アフリカとの政治経済的な関係を強めるメリットがきわめて大きいからである。(武内進一)