10月13日、チャド大統領のマハマト・イドリス・デビィがフランスを訪問し、エリゼ宮でマクロン大統領と面会した。注目を集めたのは両国の軍事協力再開で、両首脳は「二国間軍事協力を発展させるための宣言」に署名した。
チャドは、2024年11月末、突如フランスとの軍事協力を破棄し、フランス軍を撤退させた。チャドは、マリ、ブルキナファソ、ニジェールのサヘル3国が2020年以降相次いでフランスとの関係を断絶するなかでも、継続して親仏の立場をとっていた。そのチャドが仏軍撤退を迫ったことは、フランスにとって大きな衝撃だった。
仏軍撤退以降、チャドはフランスに代わる軍事的パートナーを探し、UAE、トルコ、ロシアなどに接近した。今回のフランス回帰は、チャドがこれらの国々との間で、満足のいく安全保障の枠組を構築できなかったことを示している。
近年、チャドにとって、安全保障上の脅威は高まっていた。特に内戦が続くスーダンとの関係は深刻である。スーダン内戦においてマハマトは、UAEとの関係を考慮してRSFを支援してきた。一方、RSFは、ダルフールにおいて、マハマトを含めチャド政治エリートの多くを占めるザガワ人に残虐行為を繰り返している。当然ながら、RSF支持というマハマトの立場には、チャド国内で多くの批判がある。さらに、スーダンだけでなく、中央アフリカやニジェールとの国境付近でも、不安定化が指摘されている。こうした状況を踏まえて、マハマトはフランスへの回帰を決断したと見られる。
フランスにとっては外交的勝利と言えるが、フランス政府関係者は、反発を考慮して控えめな行動を心がけると表明している。チャド側からも、「フランス軍が撤退する前、チャドはフランスの県のひとつのようだった。今はより透明かつ強固な基盤の上に軍事協力ができると思う」とのコメントがでている(13日付ルモンド)。
フランスへの回帰といっても、チャドはUAEなど他国との関係を維持し続けるだろう。マハマトがフランスとの軍事協力を他国との天秤にかけること自体、フランスとアフリカとの関係が以前とは大きく変わったことを示している。(武内進一)