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今日のアフリカ

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チャドがフランスとの軍事協定破棄を通告

2024/12/01/Sun

 28日、チャドのクラマラー(Abderaman Koulamallah)外相は、「フランスとの国防関連協力協定を終わらせる」と発表した。フランスは現在チャドに軍事基地を持ち、約1000人の兵士を駐留させているが、この声明はこれに対する事実上の撤退要求となる。ちょうどこの日チャドを訪問していたフランスのバロ(Jean-Noel Barrot)外相との会談後、わずか数時間のタイミングであった。

 クラマラー外相は、この決定が「フランスとの関係断絶ではない」と明言している。声明では、「フランスは最も重要なパートナーだが、チャドは成長し、成熟したこと、またチャドは主権国家であって、主権を求めることをフランスは理解しなければならない」と述べた。

 サヘル地域では近年、マリ、ブルキナファソ、ニジェールと、反仏を掲げる軍事政権が次々に誕生し、フランス軍の撤退が続いていた。しかし、そのなかでチャドは、親仏、親西側の立場を維持してきた。長く政権を掌握したイドリス・デビィ・イトノが2021年4月に武装勢力に殺害された後、息子のマハマトが非合法的手段で政権を継承した際、フランスはこれを認め、チャド寄りの姿勢を明確にした

 一方、チャドは最近、外交関係の多角化を図ってきた。今年1月には、マハマトがプーチンの招待でロシアを訪問し(1月23日付ルモンド)、ハンガリーのオルバン首相の息子が秘密裏にチャドを訪れる(1月27日付ルモンド)といった動きがあった。その他、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)といった国々とも関係深化を図り、軍事支援などを受けるようになった。

 クラマラー外相は、この決断が「熟慮の結果取られた」ものであり、チャド・フランス関係の「歴史的転換」だと認めている。「チャドは完全なる主権を表明し、国家的優先事項にしたがって戦略的パートナーシップを再定義すべき時期」になったというのがチャド側の主張である。

 この決定はフランスにとって、甚大な衝撃となる。ちょうど25日、ボケル(Jean-Marie Bockel)大統領個人特使が、フランスのアフリカにおける軍事基地の再編に関する提言をマクロン大統領に提出したところだった(11月26日付ルモンド)。フランスは現在、セネガル、コートジボワール、ガボン、チャド、ジブチに軍事基地を持っており、このうちジブチ以外について縮小の方針が打ち出されると見られていた。

 今回のチャドの発表により、フランス軍基地再編計画は見直しを余儀なくされよう。折しも、セネガルのジョマイ・ファイ大統領が、インタビューの中で、フランスとの関係を重視しつつも軍事基地の存在に疑問を呈し、フランス兵には遠からず退去してもらうとの見解を表明した。「我々は米国、中国、トルコなどと軍事基地なしで協力関係を結んでいる。・・・フランスだってそれができるでしょう」(11月28日付ルモンド)というわけだ。

 フランスとアフリカの関係が、大きく変化しつつあることを実感させる動きである。アフリカ側が繰り返す「主権」という言葉について、改めて考える必要がある。(武内進一)

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