4月23日、チャドの前大統領イドリス・デビィの葬儀がンジャメナで挙行された。葬儀には、マクロン仏大統領やサヘル諸国首脳のみならず、コンゴ民主共和国のチセケディ大統領など多くのアフリカ首脳が参列した。マクロンは、チャドとともにG-5サヘルを構成するモーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール首脳と会談したほか、デビィ政権を継承すると発表された息子のマハマトとも、葬儀前日に話をしたと報じられている(23日付ルモンド)。弔辞の中で彼は、チャドの「安定、包摂、対話、民主的な移行」を支えていくと言明し、事実上マハマト新政権を支える姿勢を明確に示した。
フランス軍はサヘル地域に「テロとの戦い」のために約5,000人の部隊を派遣し(「バルカンヌ作戦」)、その本拠地をチャドに置いている。マクロンは、変わらず作戦を遂行する姿勢を明らかにしたとも言える。
ただし、2013年から続くフランスの介入にもかかわらず、この地域の政治情勢は悪化を続けており、介入政策に対する批判はデビィの死の以前から高まっていた。22日に発表されたフランス会計検査院の報告書は、おそらくデビィの死とは関係なく準備されたものだが、介入政策の問題点を鋭く指摘した内容となっている。
23日付ルモンドの記事を要約すれば、次のようになる。検査院の報告書によれば、フランスのサヘル地域に対する戦略は効果を上げていない。この地域に対する外交において、フランス政府は繰り返し、開発の重要性を説いてきた。G5-サヘル諸国に対するフランスの支出額は、2012年から19年の間に、5億8400万ユーロから11億7000万ユーロに拡大したが、増えているのは軍事支出であり、安定化や開発支援については、同じ時期、4億3100万ユーロから3億2500万ユーロとむしろ減少している。サヘル地域に投入されるフランスの予算は、その6割が軍事作戦向けになっている。サヘル地域の開発を重視するというフランス政府の言明は、実現されていない。ODAの支出でみても、フランスの対アフリカODA総額に占めるマリの割合は2018年に2.5%で、2013年と変わっていない。フランスもEUも、支援をもっと経済が発展した国や安定した国に振り向ける傾向がある。2012年以来フランスは軍事支出を1億5300万ユーロから10億ユーロ以上へと増額させているが、結果はそれに見合ったものではない。
ここには、非常に難しい問題が示されている。ジハディストの活動が活発化する背景に貧困があり、軍事的対応だけでなく開発政策が必要だという指摘がしばしばなされる。その主張は間違っていないが、問題は、どのような開発プロジェクトをそうした地域に持ち込み、成果を上げるのかという点にある。軍事作戦の予算執行ばかりが増え、開発支援の予算執行が滞るのは、まさにそうした状況を示している。紛争国の平和構築に関わる、世界が知恵を絞るべき課題である。