今日のアフリカ
2025年12月
ベナンのクーデタ未遂事件にニジェールが関与か
2025/12/14/Sun
12月12日付ルモンド紙によれば、複数のベナン、ニジェール筋が、7日にベナンで起こったクーデタ未遂事件にニジェールの軍事政権側が関与していた可能性を示唆している。
このクーデタ未遂事件は、ティグリ(Pascal Tigri)中佐を中心とする100~200人のグループが主導したとされ、13人は逮捕されたものの、首謀者の多くはなお逃亡している。
2023年にニジェールでクーデタが起こった際、ベナンはこれを厳しく批判して、ECOWASによる軍事介入にも積極的な姿勢を示した。それ以降、両国の関係は悪化し、国境も閉鎖されてきた。
しかし、クーデタの数時間前、ニジェール軍は自国領とベナン領を結ぶ橋の通行規制を解除していた。ニジェール軍事政権は、フランス企業のオラノ(旧アレバ)との間でウラニウム開発をめぐる紛争を抱えているが、11月末にウラニウムの精鉱であるイエローケーキ1000トンを首都ニアメの軍事基地に搬出したことが報じられていた(11月28日付ルモンド)。
クーデタが成功していれば、このイエローケーキがベナン経由で輸出された可能性がある。その輸出先と見られるのがロシアで、ニジェールは11月初めにロシアのRosatom社との間でウラニウム取引の協定を結んでいる(11月6日付ルモンド)。
クーデタに関連して注目を集めたのは、ベナン出身のインフルエンサー、ケミ・セバ(Kemi Seba)である。彼は、反欧米の言説で人気を博し、タロンに敵対してニジェール軍事政権の顧問に就任したが、12月7日朝には、SNSにクーデタを賞賛する動画を投稿した。
ベナンでクーデタが成功していれば、ニジェールだけでなく、マリやブルキナファソの軍事政権もこれを歓迎しただろう。このクーデタ未遂事件から、西アフリカの深い亀裂が垣間見える。(武内進一)
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ウガンダが難民受入れに制約
2025/12/11/Thu
11月26日、ウガンダのオネク(Hilary Onek)難民担当相は、「戦争状態」にある国の住民に難民庇護を与えないと表明した。特にソマリア、エチオピア、エリトリア出身者を対象に、難民受入れを制約する意向である(9日付ルモンド)。
ウガンダは、アフリカ屈指の難民受け入れ国である。難民に高い自由度を保障し、キャンプではなく村に住まわせる政策が、国際的に賞賛されてきた。しかし、USAIDの解体や、ヨーロッパ諸国(英国、フランス、ドイツなど)の援助削減のため、受け入れ体制が揺らいでいる。
ウガンダのUNHCRは、2025年の目標額の36%の資金しか集められていない。関係者は、「あらゆる社会サービスの提供が困難に陥り、60万人が食料援助を受けていない」と述べている。
今回特にソマリア、エチオピア、エリトリア出身者が標的とされた背景には、政治的理由もあるようだ。UNHCRによれば、ウガンダ政府は既に、これら三カ国出身者に対する難民登録を止めている。渡航文書偽造や人身取引などの問題が発覚したという。加えて、ウガンダが2026年1月12日に予定される大統領選挙の影響もある。選挙を前に、SNSでは反移民を訴える投稿が増えている。
特にウクライナ戦争勃発以降、人道支援は大幅に削減されてきた。今年に入り、トランプ政権の政策がそれに拍車をかけている。援助削減の影響は、すでに保健・医療分野などで顕在化しているが、人道支援分野も甚大な打撃を受けている。(武内進一)
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ベナンでクーデタ未遂
2025/12/10/Wed
7日、西アフリカのベナンでクーデタ未遂事件が発生した。この日の朝7時頃、公共テレビで軍服姿のグループが、タロン大統領の辞任を発表した。その後、大統領公邸近くで銃声が聞こえた。昼頃、セイドゥ内相がテレビで、クーデタは失敗したと発表。午後遅くには、タロン大統領もテレビで声明を発表し、クーデタの失敗が確認された(7日付ルモンド)。
もともと政情が不安定だったギニアビサウやマダガスカルと違い、ベナンにはクーデタの明確な前兆がなかった。それだけに、事件は衝撃を与えた。テレビでタロンの辞任を発表した際、兵士は行動を起こした理由として、「北部の治安状況悪化。前線で倒れた兵士への不当な扱い。不適切な昇進」を挙げた(8日付ルモンド)。
ベナン北部はブルキナファソとニジェールに接し、近年イスラム急進主義勢力の活動が活発化している。今年4月には、北部でベナン軍兵士54人がイスラム急進主義勢力の攻撃を受けて死亡する事件が起きている(4月23日付ルモンド)。反乱兵はこの点に言及したわけである。ベナンのようなギニア湾沿岸国においても、サヘルのイスラム急進主義勢力の影響を受けて、軍内に不満が蓄積していると見てよい。
今回は、軍内のタロン政権に忠誠を持つグループが迅速に対応したことに加え、地域共同体のECOWASが軍事介入したことで、反乱軍を撃破し、クーデタを失敗に終わらせた。ナイジェリア、シエラレオネ、コートジボワール、ガーナの部隊が介入作戦に参加し、特にナイジェリアはコトヌに空爆を行った。ECOWASの軍事介入は、2017年のガンビア以来である。
ベナンでは、2026年4月12日に大統領選挙が予定されている。タロンは大統領任期制限のためにすでに不出馬を表明し、ワダイ(Romuald Wadagni)財務相を後継に指名している。2016年に大統領に就任したタロン政権においては、有力な野党指導者が政治活動を制限されるなど、権威主義的な振る舞いが目立っていた。
クーデタが未遂に終わったとはいえ、それがどのような政治的影響をもたらすかは未知数である。今後の展開が注目される。(武内進一)
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コンゴ、ルワンダ大統領がワシントンで和平合意
2025/12/06/Sat
コンゴ民主共和国のチセケディ大統領とルワンダのカガメ大統領は、12月4日、ワシントンでトランプ大統領立ち会いの下、和平に向けた共同声明に署名した。共同声明は概略次の4点からなる。
1.2025年6月27日の和平協定、4月25日の原則宣言(Decralation of Principles)の実施にコミットする。
2.両国の友好的関係に向けて尽力する。
3.地域経済統合枠組(REIF)に署名した。
4.以上に加え、実施に向けた諸合意がなされた。これら「平和と繁栄に向けたワシントン諸協定」は、地域和平の礎となる。トランプ大統領に感謝する。
以上のように、今回の共同声明は、和平プロセスに関しては、既存の合意を確認するものだ。新しい点は、REIFなど経済開発面での合意内容が明らかにされたことである。
REIFは、大湖地域の開発計画で、エネルギー、鉱物資源サプライチェーン、インフラ、観光、公衆衛生といった分野に投資を呼び込もうとしている。ローカルオーナーシップが強調され、コンゴとルワンダが米国と協力しながらサミットを行い、投資促進に努めることが想定されている。
この署名に合わせて、米国はコンゴ、ルワンダとも二国間協定を結んだ。公開されているコンゴとの「戦略的パートナーシップ」協定では、米国によるコンゴへの投資促進を目的として、詳細な規定が盛り込まれている。共同の運営委員会(Joint Steering Committee)を設立し、鉱物資源など戦略的投資分野の開発を進めることが定められている。米国側の意気込みが伝わる内容であり、コンゴにとっては非常に魅力的であろう。
ワシントンで両国首脳が署名したまさにその時、コンゴ東部ではコンゴ国軍とM23との戦闘が激化している。南キヴ州のカマニョラ(Kamanyola)をめぐる攻防で、ルワンダ国内に多数の避難民が流入したとルワンダメディアは報じている(New Times 5日付)。署名によって紛争がただちに終結するとは考えられない。
経済開発のインセンティブによって紛争を止めようというのが、今回の米国による提案である。果たしてうまく進むだろうか。多くのオブザーバーは懐疑的である。現地で紛争が続けば、投資をしようにもできないからである。事態がどう進展するか、注意深く観察したい。(武内進一)
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ギニアビサウでクーデタ
2025/12/01/Mon
11月26日、ギニアビサウで軍が全権掌握を発表した。クーデタである。同国では23日に大統領選挙が実施され、結果を待っているところだったが、選挙プロセスは停止された。
クーデタの発表直後、それが現職のエンバロ(Umaro Sissoco Embalo)と軍が結託したいかさまだという説が広く流布した。翌27日には、陸軍参謀長のホルタ・ンタム(Horta N'Tam)将軍が移行政権の大統領に就任し、エンバロはセネガルに出国したが、セネガルのソンコ首相もクーデタがいかさまではないかとの疑念を示した(28日付ルモンド)。
29日になって、エンバロはセネガルからコンゴ共和国の首都ブラザヴィルへと移動した。短期的に、エンバロが政権に復帰することは考えにくい状況になった。
エンバロとの結託でなかったとしても、軍が選挙プロセスを無効化するためにクーデタを起こしたことは疑いない。つまり、大統領選挙でエンバロと争った対立候補のダコスタ(Fernando Dias da Costa)の勝利を阻止するためのクーデタだったということだ。
エンバロにとって、最大のライバルは有力政党PAIGCのペレイラ(Domingos Simoes Péreira)だった。しかし、ペレイラは9月に最高裁の判断で立候補資格を奪われていた。クーデタ後すぐに、ペレイラは逮捕された。
ギニアビサウは近年政情が不安定で、クーデタが頻発してきた。今回、軍は政党政治を抑圧して秩序回復を図ろうとしている。アフリカ連合(AU)はすぐさまクーデタを非難し、ギニアビサウを資格停止処分とした。今後の軍の対応が注目される。(武内進一)
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