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今日のアフリカ

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ベナンでクーデタ未遂

2025/12/10/Wed

 7日、西アフリカのベナンでクーデタ未遂事件が発生した。この日の朝7時頃、公共テレビで軍服姿のグループが、タロン大統領の辞任を発表した。その後、大統領公邸近くで銃声が聞こえた。昼頃、セイドゥ内相がテレビで、クーデタは失敗したと発表。午後遅くには、タロン大統領もテレビで声明を発表し、クーデタの失敗が確認された(7日付ルモンド)。

 もともと政情が不安定だったギニアビサウやマダガスカルと違い、ベナンにはクーデタの明確な前兆がなかった。それだけに、事件は衝撃を与えた。テレビでタロンの辞任を発表した際、兵士は行動を起こした理由として、「北部の治安状況悪化。前線で倒れた兵士への不当な扱い。不適切な昇進」を挙げた(8日付ルモンド)。

 ベナン北部はブルキナファソとニジェールに接し、近年イスラム急進主義勢力の活動が活発化している。今年4月には、北部でベナン軍兵士54人がイスラム急進主義勢力の攻撃を受けて死亡する事件が起きている(4月23日付ルモンド)。反乱兵はこの点に言及したわけである。ベナンのようなギニア湾沿岸国においても、サヘルのイスラム急進主義勢力の影響を受けて、軍内に不満が蓄積していると見てよい。

 今回は、軍内のタロン政権に忠誠を持つグループが迅速に対応したことに加え、地域共同体のECOWASが軍事介入したことで、反乱軍を撃破し、クーデタを失敗に終わらせた。ナイジェリア、シエラレオネ、コートジボワール、ガーナの部隊が介入作戦に参加し、特にナイジェリアはコトヌに空爆を行った。ECOWASの軍事介入は、2017年のガンビア以来である。

 ベナンでは、2026年4月12日に大統領選挙が予定されている。タロンは大統領任期制限のためにすでに不出馬を表明し、ワダイ(Romuald Wadagni)財務相を後継に指名している。2016年に大統領に就任したタロン政権においては、有力な野党指導者が政治活動を制限されるなど、権威主義的な振る舞いが目立っていた。

 クーデタが未遂に終わったとはいえ、それがどのような政治的影響をもたらすかは未知数である。今後の展開が注目される。(武内進一)

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