ナイジェリアの実業家ダンゴテ(Aliko Dangote)が建設した製油所が、9月14日から新規株式公開(IPO)を実施している。このIPOについて、20日付ファイナンシャルタイムズ紙が興味深い解説を行っているので紹介する。
今回のIPOは一般投資家向けで、1株525ナイラの株式を10株から購入できる。ダンゴテは、1000万人のナイジェリア国民が10株ずつ株式を購入してほしいと希望した。このIPOでは16億ドルを調達する予定であり、そこから製油所の企業価値は約500億ドルと評価される。
製油所の建設コストは約200億ドルだったので、企業評価額が500億ドルというのは、かなり高い。そして、今回売却される株式の価格は、7月に私募で$2.5bn調達した時と比べて10%近く高くなっている。この強気の価格設定は、一般投資家が私募で購入した投資家より高い価格を支払うことを意味する。市場で自由に売買される株式がわずか3.3%しかないため、流動性は低くなるだろう。
こうした指摘に対してダンゴテ側は、2028-29年には製油所の生産能力は140万バレル/日に倍増するので、企業価値はその後の成長を見込んだ額になっていると反論している。
このIPOはアフリカ史上最大であり、日量70万バレルを製造できる精製施設も非常に重要なものだ。ナイジェリアは、ガソリンに加えて、肥料やポリプロピレンでも自給能力を持つことになる。
アフリカのインフラはアフリカの資本が支えるべきだというダンゴテの議論は、正しい。アフリカには4兆ドルの資産があるが、生産的投資のリスク資本に投資されることは少なく、利回りの高い政府債務に投資されることが多いのが現実だ。ただし、資金の効率的活用には、資本市場の深化が必要である。ナイジェリア政府は、ラゴスを金融センターにすべく努力しなければならない。
近年、アフリカ全体で、資源の国内加工に対する議論が高まっている。その対象は、コバルトなど鉱物資源からココアのような農産物まで多様である。ただ、多くの場合、こうした資源ナショナリズムは、加工に必要な道路インフラや電力インフラに関する具体的な議論を欠いている。ダンゴテのここまでの成功は多くの人の予想を超えたものだが、今後プロジェクトを成功させるには、サポートするインフラが必要になる。例えば、製油所が完成したあとも、国営企業などが原油を供給し続ける体制が不可欠だ。アフリカには民間ビジネスの成功物語が必要だが、そのためには規模の経済を可能にする政府の政策が必須なのだ。
これは説得的な記事である。ダンゴテは希代の実業家として名を馳せているが、ナイジェリア政府との深い関係でも知られている。民間企業の成功には、政府の適切なサポート、特にインフラの充実が必須だというのは、その通りだろう。ここでもアフリカの国家をめぐる問題が顔を出す。(武内進一)