「新たな資金取り決め」会議
2023/06/25/Sun
先週22,23日にパリで「新たな国際的開発資金取決めのためのサミット」が開催された。フランス政府主導の国際会議で、設立から80年近く経ったブレトン・ウッズ体制が時代遅れになりつつあるとの認識の下、南北間の連帯を強める開発資金調達の仕組みを議論する目的のものである。世界100ヵ国以上の政府、40以上の国際機関、120以上のNGOs、70以上の民間部門組織が参加する大規模な会議であった。日本からは林外相が参加した。
この会議で問われたグローバルな問題は、気候変動や生物多様性のように従来型の開発が負の効果を与えうる課題と、発展途上国の貧困削減・経済発展とをいかに両立させるのか、という点にある。昨年来西アフリカや南アジアで頻発する洪水や南部アフリカのサイクロン被害など、気候変動の影響が現実に深刻な影響を途上国に与えるなか、開発の成果を手にした先進国側がどう対応するのかが、従来に増して厳しく問われている。
会議開催のタイミングで、ザンビアの債務再編が一定の決着を見たのは朗報だった。中国を含む二国間債権者が債務再編に合意し、宙に浮いていたIMFからの資金提供が開始されるめどがついた。民間債権者との合意は残っているが、一定の成果である(23日付ファイナンシャルタイムズ)。
残された大きな課題は、民間部門の協力をいかに取り付けるかである。上述の課題に対応するために、公的資金では全く不十分である。21世紀に入って、民間資金フローの増大や新興ドナーの登場によって、相対的に見れば、ODAの重要性は大きく低下した。今回の会議でもビル&メリンダ・ゲイツ財団など民間慈善団体が声明を寄せたが、一般企業の取り組みがいっそう求められることになろう。
南の国々が、開発の果実を得られないまま、気候変動の深刻な被害を受け続ける現状は、既存の国際秩序に対する彼らの不満を増幅させている。ウクライナ侵攻への南の国々の対応は国際秩序の亀裂を明らかにしたが、その要因は国際政治経済の構造に深く関連している。
(武内進一)
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