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今日のアフリカ

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マリ、国連PKOに撤退要求

2023/06/18/Sun

 マリのジョップ(Abdoulaye Diop)外相は、16日、国連安全保障理事会で、国連平和維持部隊のMinusma(国連マリ多元統合ミッション)が遅滞なく撤退するよう要求した。外相は、Minusmaがマリの安全保障状況を改善するという基本的な目的を達成できなかったことを撤退要求の理由として挙げた。
 マリに軍事政権が成立して以降、Minusmaとの間には緊張が高まっていた。軍事政権側には、Minusmaが対テロ戦争に従事しないことに基本的な不満がある。Minusmaのマンデートにそうした職務が規定されていないため、マリ側は国軍の支援を強化するよう求めていた。対テロ戦争に従事するはずのフランス軍(バルカンヌ作戦)は、軍事政権の要求に従って、すでに撤退している
 関係悪化の契機となったのは軍事政権のロシアへの接近だが、Minusmaとの関係でそれを決定づけたのは、2022年3月に中部のムラ(Moura)で起こった虐殺事件である。ジハディストの掃討作戦の際に、マリ軍兵士と「外国軍事要員」(ロシアのワグネルと見なされている)が少なくとも500人を処刑したとされる。この事件を告発する報告書が6月1日に刊行されたことで、政権との関係は修復不可能になった。
 16日の外相声明を受けて、Minusmaトップのワネ(El-Ghassim Wane)国連事務総長特別代表は、「ホスト国の合意がない以上、活動は不可能」だと述べた。
 マリ軍事政権がロシアに接近し、フランス軍に撤兵命令を下し、人権問題をめぐって国連との軋轢を強めるなか、Minusmaに対する撤退要求は、外交筋にとっては想定の範囲内のようだ(17日付ルモンド)。とはいえ、2013年の派遣開始以来、このPKO部隊が303人もの犠牲者を出してきたことを考えると、何ともやりきれない。コンゴ民主共和国のMONUSCOも撤退の方向に動いており、国連平和維持部隊の派遣原則に関する議論が不可避となるように思われる。
(武内進一)