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今日のアフリカ

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フランス、マリからの撤退か?

2022/02/15/Tue

 14日付ルモンド紙の報道によれば、ルドリアン仏外相は、マリからの撤退に向けて意志を固めつつある。今週17、18日にEUとAUの首脳会議がブリュッセルで開催されるが、そこで何らかの方針が発表されるとの見方がでている。
 マリでは、2020年8月、2021年5月と二度にわたってクーデタが起こり、アシミ・ゴイタ大佐をトップとする軍事政権が権力を掌握した。2021年6月にフランスが軍事的な展開を大幅に縮小する方針を打ち出すと、マリはロシアに接近し、民間軍事企業ワグネルとの契約が疑われている。この間、マリ国内では反仏感情が顕著に高まっている。
 年明け以降、マリとフランス、そしてヨーロッパ諸国との関係は急速に悪化してきた。軍事政権側が民主化への移行期間を5年とする提案をしたことに対して、ECOWASが厳しい制裁措置を科し、欧米もそれを支持したことは本欄でも述べた
 その後、24日、マリは、EUが展開してきた軍事協力スキーム(Takuba)で派遣されたデンマーク部隊に対して、必要な同意がなかったとして国外退去を命じた。Takubaは800人からなる部隊だが、その半数はフランス兵で、その他にデンマーク、エストニア、スウェーデン、チェコがこれまでに部隊を派遣してきた。デンマーク部隊への退去命令は、明らかにフランスとの関係悪化の余波であった。
 デンマークは27日に撤退を決定したが、この退去命令をめぐってルドリアン外相は、同日の記者会見で、マリの政権は「正当性がなく、無責任な行動を取る反乱軍」だと表現した。これに対してマリ側は、31日、駐仏大使に72時間以内の国外退去を命じた。それ以降、ルドリアン外相やパルリー軍事相は、「テロとの戦いは継続するが、いかなるコストを払ってもマリに駐留する意図はない」と表明している。2月4日は、EUがECOWASに倣って、マイガ首相などマリ要人に対する制裁措置を発表した。一方、マイガ首相は7日、バマコで外交団を招集し、フランス批判を繰り返した。
 マリ、フランスの双方が批判を繰り返す現状では、撤退の方向が打ち出される可能性は高い。フランスのサヘル政策は重大な転換を余儀なくされよう。13日付ルモンドでは、論説委員が、2013年以来のフランスのマリへの関与を失敗だと断じ、国家の機能不全や汚職に目をつぶった結果だと分析している。イスラーム急進勢力の活動領域はこの間も西アフリカで広がりを見せており、事態はマリ・フランスの二国間関係を超えて重大な局面に至っている。