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今日のアフリカ

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ナイジェリアの経済政策転換

2023/06/16/Fri

 5月末に就任したボラ・ティヌブ新大統領が経済政策の転換を進めている。29日の就任演説でガソリンなど石油製品への補助金撤廃を表明すると、6月10日には2014年以来中央銀行総裁を務めてきたエメフィエレ(Godwin Emefiele)を解任し、その後逮捕した。
 ティヌブは元ラゴス市長で、ブハリ前大統領と同じ与党のAPCに所属する。長く「キングメーカー」と呼ばれた実力者だが、70歳で健康への不安が指摘され、影響力の強いオバサンジョ元大統領が元アナンブラ州知事のピーター・オビ候補の支持を表明するなど、今年2月の選挙戦では苦戦を強いられた。
 しかし、大統領に就任するやいなや、ティヌブは矢継ぎ早に重要な政策転換を実施した。ナイジェリアは産油国だが自国の精製設備が不十分なためにガソリンを輸入せざるを得ず、昨年度の補助金は総額で100億ドルに達していた。これを撤廃したため、ガソリン価格は2倍以上に跳ね上がった。
 さらに、中央銀行総裁の解任に伴って、長年続けてきた金融政策を改めた。石油価格が下落するなか、前総裁は通貨ナイラの下落を防ごうと、公定レートを設定し、外貨取引を制限した。そのため、ドル不足が頻発し、闇市場での外貨交換が日常化していた。為替レートが自由化されたことで、ナイラは史上最大の下げ幅を記録した(15日付ルモンド)。
 これらの政策は、投資家からは歓迎されている。投資家は長年、財政を圧迫する補助金の削減や、一部の企業だけを優遇する外貨割当制度を批判してきた。ティヌブの政策転換によって、資環境が改善されたと評価している。
 ティヌブ大統領は、12日の演説で、補助金撤廃に伴う物価高騰について、忍耐してほしいと人々に要請した(13日付ルモンド)。就任直後のまだ人気が高いうちに、長年の懸案を片付けてしまおうとの目算があるのだろう。痛みを伴うこの政策転換が経済改善につながることを期待したい。
(武内進一)