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今日のアフリカ

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セネガルで政治対立深まる

2023/06/07/Wed

 セネガルで政治的緊張が高まっている。6月2日にはデモ隊と治安部隊の衝突により、16人が死亡、357人が負傷し、500人が逮捕された(内務省による)。きっかけを作ったのは、1日に野党指導者オスマヌ・ソンコに下された判決であった。ソンコは、汚職告発で若者の支持を獲得し、2019年の大統領選挙では第3位の得票を得た。その後、2021年にマッサージ店での婦女暴行容疑で逮捕され、反発した支持者による暴動へと発展したこともある。
 今回の判決では、婦女暴行容疑では無罪となった一方で、「若者への悪影響」(corruption de la jeunesse)を理由として懲役2年の実刑判決が下された。この判決が確定すれば、ソンコは来年2月に予定されている大統領選挙への立候補資格を失う(6月2日付ルモンド)。
 政治対立の背景として重要なのは、現職大統領マッキー・サルの出馬問題である。サルは現在二期目を務めており、憲法は三選を禁止している。一方で、サルは2016年に憲法を改正し、大統領任期を7年から5年に短縮した。大統領支持派の主張によれば、憲法改正があった以上、サルの任期は初めからカウントし直すことになり、2024年の大統領選挙に出馬しても三選にはあたらない、という(5月4日付ルモンド)。
 当然野党側は反発しているが、サルは今日に至るまで出馬するか否かを明言していない。これが大統領派と反大統領派の対立、緊張を深める結果となっている。
 2012年の大統領選挙では、現職のワッドが、当選すれば三期目となるにもかかわらず出馬した。その選挙でワッドに勝利したのが、サルであった。ワッドの出馬は民主主義の危機と言われ、人々の反発を受けて選挙で敗北した。そこで勝利したサルが、10年余を経て同じことをやろうとしているように見える。これは大いなる皮肉であり、悲喜劇である。
(武内進一)