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今日のアフリカ

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セネガルで暴動

2021/03/10/Wed

 平和と民主主義が維持されてきたセネガルで、暴動が起こっている。8日、マッキー・サル大統領は人々に平穏を呼びかけ、コロナ禍で悪化した経済危機が不満の背景にあるとして、夜間外出禁止令の緩和を発表した。
 暴動のきっかけは、今月3日に起こった野党指導者ウスマン・ソンコ(Ousmane Sonko)の逮捕であった。ソンコは、2019年の大統領選挙に立候補し、第3位の得票を確保した野党政治家だが、今年2月、腰痛の治療で通っていたマッサージ店の女性から暴行と脅迫を受けたとして訴えられていた。ソンコは容疑を一貫して否認し、訴えは政治的動機に基づくものだと主張していたが、3月3日に予審判事の審理を受けるために出頭したところを逮捕された。これが支持者を中心に抗議デモへとつながり、デモ隊の一部が暴徒化して、商店などの略奪や襲撃が発生した。装甲車が出て鎮圧する事態となり、当局発表で5人が死亡した。セネガル赤十字によれば、3日から8日の間に590人が負傷したとのことであり、セネガルでは近年まれに見る大規模な暴動となった(3月9日付ルモンド)。
 暴動の背景として、サルが述べるように、コロナ禍と経済危機が影響していることは疑いない。しかし、それに加えて、サルの政治手法の強権化に人々の不満が高まっていたことも見逃せない。サルは2012年に大統領に初当選し、現在2期目だが、前大統領の息子Karim Wadeや前ダカール市長Khalifa Sallのような有力なライバルをスキャンダルがらみで失脚させてきた。今回のソンコ逮捕も、人々には同様の手法に見えたようだ。
 野党勢力は、新たな連合組織「民主主義防衛運動」(Mouvement pour la Défense de la Démocratie:M2D)を結成し、デモの継続と政治犯の釈放を呼びかけている。事態収拾に乗り出した大統領がどのように対応するのか注目される。