今日のアフリカ
2026年02月
東部コンゴ南キヴ州への国連PKO再配置
2026/02/13/Fri
2月9日、国連のラクロワ(Jean-Pierre Lacroix)平和活動担当事務次長はコンゴ民主共和国の首都キンシャサを訪問し、政府高官と面会した。M23がいったん占領し、その後撤退した南キヴ州の都市ウヴィラに対して、国連PKO部隊を派遣する案について議論するためである(11日付ルモンド)。
コンゴには1999年以来、1万人を超える規模の国連PKOミッションMonuscoが駐留している。しかし、コンゴ政府はMonuscoに対して厳しい態度を取ってきた。チセケディ大統領は2023年9月には国連総会でMonuscoを厳しく批判し、同年末には政府からもMonuscoの撤収要求が出された。そのためMonuscoは、2024年6月30日には南キヴ州での活動を終了させた。そこにまた、Monuscoの部隊を出そうということである。
言うまでもなく、この背景には東部コンゴ情勢の変化がある。2025年1月~2月に北キヴ州の主要都市ゴマとブカヴがM23に制圧され、12月4日に米国の仲介でコンゴ、ルワンダ両大統領が停戦合意文書に署名したものの、その直後に南キヴ州のウヴィラまでM23の手に落ちた。米国がルワンダを非難して、M23はウヴィラから撤退したものの、状況が不安定であることは変わりない。そこで、Monuscoによる停戦監視案が浮上したわけである。
M23撤退後の不安定な状況をPKO展開で補強するという考えは、平和維持、平和構築の観点から当然あり得ることである。しかし、この構想の実施にあたっては、少なくとも2つの課題がある。
第一に、コンゴ政府の対応である。Monuscoを厳しく批判し、撤退を要求していたコンゴ政府が、その停戦合意維持活動を信頼し、協力するだろうか。
第二に、Monusco側の能力である。7日、南アフリカ政府は、Monuscoに提供していた700人の部隊を今年末までに撤収すると発表した(8日付ルモンド)。直接的には、予算の問題が挙げられている。南アフリカはコンゴの平和維持に積極的に関わり、Monuscoだけでなく、南部アフリカ開発共同体SADCが派遣した平和維持部隊SAMIDRCにも兵員を提供してきた。しかし、2025年1月のゴマ攻防の際に14人の自国兵士が戦死し、国内では強い批判に晒されてきた。SAMIDRCは既に撤収しているが、南アフリカはこの段階でMonuscoからも部隊を引き揚げる決定をしたわけである。南アフリカの撤収によって、Monuscoの能力低下は避けられない。
Monuscoに限らないが、国連PKOは近年目立った成果を上げられていない。ウヴィラにMonuscoが再び展開し、意味のある平和維持活動ができるかどうかは、コンゴに限らず、国連PKOの今後にとって重要な試金石となるだろう。(武内進一)
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モロッコと米国の蜜月
2026/02/12/Thu
1月19日、モロッコはトランプ米大統領が主導する平和委員会への参加を宣言した。1月初めには、両国の外交関係250年を記念する式典が米国上院内で開催された。モロッコは1777年に米国の独立を承認した経緯がある。
両国は近年蜜月状態と言ってよく、外交的、軍事的関係を深めている。2025年12月半ば以降だけでも、米国はStingerミサイル600発、GBU-39/B誘導爆弾500発などをモロッコに供与している。大量の武器供与はモロッコへの信頼を示すものであり、2004年以降、米国にとってモロッコは主要な非NATO同盟国の位置づけにある。
モロッコはまた、2006年以降、米国との間で二国間自由貿易協定を結んでいる。2025年4月にトランプ大統領が世界各国に関税を宣言した後も、モロッコは最低水準の10%に留まっている。
こうした深い関係を加速したのが、2020年12月のモロッコによるイスラエルとの外交関係樹立であった。これは同年8月のアラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルの国交樹立に始まる、いわゆるアブラハム合意によるものである。イスラエルとの国交正常化を受けて、アメリカは西サハラに対するモロッコの主権を認めた。
これ以降、米国とモロッコはさまざまな領域で関係を深めている。特に顕著なのが軍事面で、モロッコは急速に空軍力を増強した。最新鋭のF-16Block 72戦闘機、パトリオット地対空ミサイルシステム、ハイマースロケット砲、ボーイング社製アパッチ軍事ヘリコプターなどが供与された(2月6日付ルモンド)。
米国戦争省(旧国防省)は、モロッコとの関係を「アフリカの平和への礎石」と位置づけ、アフリカのみならず地中海地域全体にとって有益なパートナーだとみている。モロッコ側としても、アルジェリアとの緊張関係を考えると、欧米やイスラエルの支持を受けた軍事力増強は望ましい。
モロッコとアルジェリアは国交断絶状態が続いており、アルジェリアはロシアなどから大量の武器を購入している。北アフリカに「安全保障のジレンマ」による軍拡競争が広がりつつある。(武内進一)
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ワシントン和平合意以降の東部コンゴ
2026/02/08/Sun
昨年12月4日、コンゴ民主共和国のチセケディ、ルワンダのカガメ両大統領は、トランプ大統領立ち会いの下、ワシントンで和平合意に署名した。この和平協定の眼目は、東部コンゴへの米国企業による投資と平和とのディールである。
署名から2ヶ月が過ぎたが、現地の状況に好転は見られない。署名のわずか1週間後には、ブルンジ国境の町ウヴィラがM23に制圧され、大量の難民がブルンジに流出した。メンツを潰された格好の米国はルワンダを非難し、それに対応する形で、M23は12月15日にウヴィラからの一方的な撤退を宣言した。
米国企業のコンゴ鉱業への投資については、動きが見られる。2月3日、米国政府が支援する鉱業投資ファンドOrion Critical Mineral Consortiumは、資源大手Glencore社が カタンガ州で展開する銅、コバルト生産事業に数十億ドル規模の出資すると発表した。ワシントンにはコンゴ政府高官が複数招かれ、鉱物資源に関する関係閣僚会議が開催された(2月4日付ルモンド)。同じくカタンガ州で銅、コバルト生産に関わるChemaf社(ドバイが拠点だが、コンゴ政府も株式を保有)についても、米国政府は自国のVirtus Resources社が率いるコンソーシアムへの売却をコンゴ政府に働きかけている(1月31日付ルモンド)。
そうしたなか、1月31日から翌日にかけて、コンゴ北東部に位置するキサンガニの空港にドローンが飛来し、自爆攻撃を仕掛けた。M23が犯行声明を出し、コンゴ政府によるドローン攻撃への反攻だと主張した。
キサンガニはコンゴ政府軍(FARDC)の第三軍管区の司令部が置かれ、ドローン(中国製CH4、トルコ製TAI アンカ)の基地となっているほか、東部戦線の部隊にロジスティックスを提供している。M23の制圧地である北キヴから遠く離れたキサンガニまで攻撃がなされたのは、これまでにないことである(2月5日付ルモンド)。
一方、ルワンダの政府系紙New Timesは、2月6日付記事で、コンゴ東部でバニャムレンゲ人コミュニティがコンゴ政府に対する抗議活動を行ったと報じている。バニャムレンゲはルワンダ系コンゴ人で、M23やルワンダ現政権との繋がりが深い。報道によれば、この示威行動は米国政府に向けられたもので、人道に反する罪を行うコンゴ政府に対して投資などの資金提供を止めるべきだと訴えている。「バニャムレンゲはコンゴ東部の少数派キリスト教徒であり、コンゴ政府による暴力や迫害に苦しんできた。迫害はM23がウヴィラを制圧している間だけ止んだが、撤退後はまた再開された。コンゴ政府に圧力をかけてほしい」という要請である。
この抗議活動とNew Times紙の報道に、ルワンダ政府の意図を見ることはたやすい。ただし、この地域のバニャムレンゲの人びとが暴力の対象になってきたことも間違いない。トランプが仲介したディールによって、ローカルな紛争は、コンゴ・ルワンダ両国政府というナショナルなレベルを超えて、米国企業や米国政府というグローバルなレベルと結びつくことになった。(武内進一)
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マリ軍事政権に接近するトルコ
2026/02/01/Sun
近年トルコはアフリカ諸国との関係を急速に深めている。28日付ルモンドは、マリ軍事政権との関係深化について報じている。
トルコがアフリカ諸国との関係を深めるにあたって、軍事産業が重要な役割を果たした。よく知られているのがドローンで、バイカル社のバイラクタル TB2は人気が高い。マリに初めてバイラクタルTB2が入ってきたのが2022年末のことで、それ以降急速に普及した。バイラクタルTB2だけでなく、アキンジ(Akinci)機も利用されている。2025年4月に国境付近でアルジェリアに撃墜され、両国関係の悪化を招いたのはこのドローンである。操縦技術を学ぶため、数十人のマリ人軍人がトルコ北西部のKesanでバイカル社ドローンの操縦訓練を行っている。
トルコの防衛産業は、ドローンだけでなく多くの武器や装備品をマリ軍に納入している。マリ軍兵士のトレーニングを請け負ったり、軍事政権トップのボディガードも行っている。
トルコへの接近を、軍事政権内のバランスから説明する分析もある。ロシアに近くワグネルやAfrica Corpsの受入れを担当しているカマラ(Sadio Camara)国防相への牽制として、アシミ・ゴイタを中心にトルコとの関係を深めている、との説明である。
ただし、ロシアとトルコを比べれば、マリとの関係は前者の方がずっと深い。Africa Corpsはマリ国内に2000人いるとみられ、これに匹敵する数の軍事・治安要員を派遣する国はない。
トルコのエルドアン政権は、ソマリアと深い関係を築いたことで知られる。西アフリカでは、マリのみならずブルキナファソやニジェールにもドローンを販売し、関係を深めている。軍事産業を中心にアフリカとの関係を深めるやり方は、ロシアとも共通する。(武内進一)
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