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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2020年03月

新型コロナウイルス感染症への支援の動き

2020/03/28/Sat

この10日間程度の間に、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)への対応策として、アフリカ諸国は相次いで、空港や国境の閉鎖など厳しい措置を実行に移している。モロッコ、カメルーン、ルワンダなどに続き、南アフリカも26日深夜から全土ロックダウンに入った。  航空業界は深刻なダメージを受けており、「アフリカ航空会社協会](Afraa)は26日、アフリカ諸国で航空便の95%が地上に足止めされており、支援がなければ6月末までに資金繰りに行き詰まるだろうとの見通しを発表した(27日付ルモンド)。  アフリカでは貧困層が多く、長期間の物流停止が続けば深刻な経済的なダメージを免れえない。加えて、若年層が多いとはいえ、医療システムが圧倒的に脆弱であるため、今後の感染症拡大が大いに懸念されている。  こうしたなか、支援の動きも報じられている。いち早く目立った動きを見せたのはジャック・マーで、アフリカ54か国にそれぞれ検査キット2万個、マスク10万枚、医療用スーツ1000体を寄付した。マーの支援はルワンダには20日に到着し、カガメ大統領が謝意を表明した(21日付New Times)。  エチオピアのアビィ首相は、24日、G20に対して、アフリカ向け債務軽減と1500億ドルの支援を要請した。同日、フランスのルドリアン外相は、今回のパンデミックに対応するため、最も脆弱な国々(特にアフリカ)に対して金融支援パッケージを提供すると発表した。26日のEU首脳会議や、G7、G20でも、支援策が議論されることになる(25日付ルモンド)。  こうした時に何をするかが、評価を大きく左右するように思う。

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ブルキナファソの「祖国防衛ボランティア」政策

2020/03/21/Sat

西アフリカのサヘル地域では、マリやナイジェリア北部を中心にイスラーム急進主義を掲げる集団の影響力が広がり、治安の悪化が続いている。ブルキナファソにおいても、ここ1~2年の間に急速に状況が悪化した。マリ中部からブルキナファソ北部では、牧畜に依存するフルベ人(プール人ともいう)と農耕民との間の対立という形で紛争が広がっている。これは、2015年頃からフルベ人がリーダーを務めるイスラーム急進主義組織が勢力を拡大し、そこにフルベ人の若者が多数参入したことがきっかけとなっている。  マリ中部ではフルベ人と農耕民のドゴン人、ブルキナファソ北部ではフルベ人と農耕民のモシ人が主たる対立軸になっている。相互に自警団がコミュニティに攻撃を繰り返すことで、多数の一般市民が殺害され、国内避難民が急速に拡大した。よく知られているのは、モシの自警団コルウェオゴ(Koglweogo:「叢林の番人」の意)で、この3月8日にブルキナファソ北部でフルベ人の3つの村が襲撃された事件の実行犯だと指摘されている。  ブルキナファソ下院は1月21日、「祖国防衛ボランティア」を育成する法案を採択した。これは一般市民に対して2週間の訓練を行い、武器の扱いなどを教育して、コミュニティ防衛を担わせる政策である。この法案は、繰り返される市民への攻撃への対応策として2019年11月に提案された。3月11日付ルモンド紙によれば、政府はこのボランティアはまだ実施段階に至っていないと述べているものの、コルウェオゴのメンバーがボランティアに採用され、次のように証言している。  「軍は私たちに銃の扱いを教え、武器を与えた。武器は作戦以外の機関においてはチーフが保管する。怪しい人物がいるとの通報があれば、我々が行って捕まえる。10人中9人はフルベ人だ」。  3月17日ルモンド紙に掲載された、ヒューマン・ライツ・ウォッチのペドノー(Jonathan Pedneault)研究員の論考は、「祖国防衛ボランティア」政策の危険性を指摘している。イスラーム急進主義勢力は以前は政府機関を攻撃していたが、近年ではコミュニティの指導者が狙われている。これに対してコルウェオゴのような自警団が報復攻撃をするために、多くの市民が被害を受けている。  ブルキナファソ政府は「ボランティアを民兵にしない」と述べているものの、紛争がコミュニティ間の対立に転化しつつある中で、民間人を紛争に動員する政策は相当に危ういものがある。

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新型コロナウイルス感染症のアフリカでの影響

2020/03/20/Fri

新型コロナウイルス感染症の中心は、中国から欧米へと移行した。現在、焦点の一つは、今後アフリカにどのような影響が及ぶかであり、WHOは18日、アフリカ諸国に対して「最悪の事態に備える」よう呼びかけた。ジョンズ・ホプキンス大学の情報では、3月19日現在のアフリカの感染者数は、エジプト210人、南アフリカ116人、アルジェリア74人、モロッコ54人、セネガル31人、チュニジア29人、ブルキナファソ20人、ナイジェリア13人などとなっている。実際には、エジプトの感染者数は6,000人程度いるのではないかという意見もあり(3月19日付Africa Confidential )、この数字から言えることは限られているものの、現段階のアフリカ諸国が、ほとんどの場合、感染爆発の前段階にあることは明らかだ。  アフリカ各国は迅速な対応を見せており、多くの国が、この数日間のうちに、ヨーロッパ諸国などとの航空便停止や学校閉鎖などの措置を取ると発表した。例えばルワンダは、先週末に教育機関の閉鎖を決めるとともに、学校の寮を閉鎖し、学生に帰省を命じた。また18日に、20日以降商業航空便の運航を停止すると発表した。同時に、景気刺激策として、500億ルワンダフランの融資枠を拡大すると中央銀行が発表した(3月19日付New Times)。  コロナウイルス感染症の影響は多方面に及ぶが、病気の広がりそのものと経済への打撃が特に懸念される。この感染症が特に高齢者に危険であることを考えれば、若年層人口が多いアフリカ諸国にとって、病気そのものの影響はそれほど大きくないかもしれない。しかし、失業率が総じて高いアフリカでは、政府が自宅待機を命じても、人々は生活の糧を稼ぐために混雑した路線バスに乗って市中に出ていかざるを得ないことも多いだろう。感染者数は相当程度増加する恐れがある。  一方、経済への打撃はすでに明らかで、特に石油価格の急落から産油国が深刻な経済後退を余儀なくされると予想されている。2019年の第3、第4四半期と連続してマイナス成長だった南アフリカも、更なる打撃を避けられない。この経済危機がどのような政治的帰結をもたらすのか、懸念とともに注視しなければならない。とはいえ、それはアフリカだけでなく、先進国も同様である。

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カビラとチセケディの軋轢

2020/03/15/Sun

3月5日付アフリカ・コンフィデンシャル誌は、コンゴ民主共和国の前大統領カビラと現大統領チセケディ、両者が実権を握る二つの政党(FCCとCACH)の軋轢について指摘している。2018年末に行われた大統領選挙では、カビラ陣営が大掛かりな選挙不正を行い、「御しやすい野党候補」としてチセケディを勝利させたというのが通説である。したがって、チセケディ政権では、彼と彼が率いる与党のCACHと、隠然たる影響力を持つカビラおよび議会多数派のFCCとの軋轢が、折に触れて表面化してきた。  それがわかりやすい形で現れるのは人事である。2019年1月に就任したチセケディの下で、組閣が完了したのは9月3日のことだった。閣僚ポストの調整に多大な時間を要したのである。重要な国営企業のトップ人事も同じで、2019年6月にチセケディが最大鉱山企業ジェカミンの理事長や社長を任命したところ、FCCに属する担当相が実施を拒否した。こうした流れで、チセケディは1月ロンドンで開催された投資サミットの際、必要があれば国会解散に踏み切ることもあると発言し、国会議長から厳しい反発を受けた。その後、チセケディは沈黙している。  一方で、カビラは2月、英国の外交団と会談した際、チセケディが彼に直接連絡を取らず、スポークスマンを介して連絡してくるとして、不信感を表明した。カビラはまた、ハンマー(Michael A. Hammer) 米国大使についても批判した。同大使は、チセケディ政権に食い込み、政権が成功するにはカビラの力を弱める必要があると公言している。米国のチセケディ寄りの立場は、ハンマー大使だけではない。ファム(J. Peter Pham)米国大湖地域特使は、2月12日チセケディと面会し、DRC政府の汚職対策について不十分だと指摘した。これは、前政権に対する汚職調査を強めるようにとの圧力とも解釈できる。米国は会談の際、前政権への汚職捜査を進めるアンゴラを成功例として指摘したという。  ただし、チセケディ政権が国際社会から強い信任を得ているとも言えない。IMFの対応はその一例である。IMFは、米国の要請を受け、昨年コンゴへの資金融資再開に向けて動き出した。IMFは慎重に6か月間の監査期間を設けたが、この間事態は進展していない。2月25日、IMFはコンゴ政府による中央銀行から借り入れ政策を批判し、この借入れを即時中止して既存の借入分を返済するよう声明を発表した。IMFはまた、チセケディが最初の100日間に設けた「緊急プログラム」の成果や、彼の外遊の多さにも不満を持っているとされる。  チセケディは、カビラの影響力を弱めるために国際社会の支援を必要としている。ただ、そのために国際社会に受けがよい政策を実施すれば、国内の不満が高まる。このジレンマにチセケディは直面していると言えるだろう。

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グリーンエコノミーの行方と鉱物価格

2020/03/14/Sat

3月5日付のAfrica Confidential は、グリーンエコノミー政策と鉱物資源価格の関連についての分析記事を掲載している。ヨーロッパや米国では、2030年以降にディーゼル、ガソリンを燃料とする車両販売を禁止する動きが顕著になっており、これに伴って、電気自動車エンジン、太陽光発電、風力発電で利用される鉱物への需要が高まっている。リチウムイオン電池生産に欠かせないコバルトはその一つで、2018年にはその価格が大幅に上昇し、トン当たり94,000ドルの高値をつけた。  これに対して、複数のアフリカ諸国が課税を強める動きに出た。例えば、コバルトの世界生産量の半分以上を占めるコンゴ民主共和国(DRC)政府は、これを「戦略的鉱物」に指定し、輸出に10%の課税を行った。これが一因となって、コバルト価格は2019年に暴落し、トン当たり価格が30,000ドル水準にまで低下した。コンゴの政策だけでなく、中国が2019年に電気自動車に対する補助金を削減したことや、2017-18年に積みあがった在庫がこの時一斉に放出されたことも、コバルト価格暴落の要因となった。  2019年8月になって、生産大手のグレンコア(Glencore)社がコンゴのムタンダ(Mutanda)プラント操業の停止を決め、供給量が15%程度下がったことで価格は安定に向かった。世界中でリチウムイオン電池生産拡大に向けた投資が続けられており、長期的に見れば、コバルト需要の逼迫に備える必要は当然予想される。  一方、電気自動車への移行はプラチナ、パラジウム生産者には悪いニュースだ。これらの鉱物はガソリン・ディーゼルエンジンの二酸化炭素排出量を減らすための触媒として使われる。先々の生産縮小が予想されるため、南アのプラチナ、パラジウム生産者は、2008年以来需要不振に苦しんでいる。自動車メーカーは、投資を拡大せずに、ガソリン・ディーゼル燃料使用車を売り切ってしまおうとしている。そのため、逆説的だが、プラチナ、パラジウムの供給が当面の自動車需要に追いつけず、価格が上昇してきた。今後数年間はこのトレンドが続く見込みだが、長期的に見れば一時的現象であろうとアフリカ・コンフィデンシャル誌は分析している。

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ワタラ、次の大統領選に出馬せず

2020/03/08/Sun

コートジボワールのワタラ大統領は、3月5日、両院国会議員の前で、10月31日に予定されている大統領選挙に出馬しないことを表明した。既に二期10年大統領を務めており、三選は憲法で禁じられているので、若い世代に指導を譲るとの説明であった。この意思表明を受け、両院議員からは大きな拍手がわき起こった。  ワタラの意思表明は、前向きに、しかし意外感をもって受け止められている。コートジボワールでは、2016年に憲法が改正されている(詳細は、佐藤章「コートジボワール新憲法の意義をめぐって」参照)。これまでのワタラの言動から、他のアフリカ諸国の大統領がしばしば用いる論理を使って、憲法改正によってそれまでの当選回数はカウントされなくなると主張し、今年の大統領選挙に出馬する可能性が高いと見られていた。  この国では、20年以上にわたり、ワタラ、バボ、ベディエという3人の政治家が政治権力をめぐって闘争と協調とを繰り返してきた。今やワタラは77歳、バボは74歳、ベディエは85歳である。昨年12月には、次世代の有力候補と見られていたソロに逮捕状が発出され、彼は亡命を余儀なくされた。  ワタラが出馬を断念したことで、大統領選挙の主役が世代交代する可能性が高まった。これは歓迎すべきことである。ワタラは、現首相のクリバリ(Amadou Gon Coulibaly)を支援するようだが、この首相の人気は高くない。ソロの対応も含め、大統領選挙にはまだ多くの不確実性がある。

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ギニアビサウ大統領選挙後の混乱長引く

2020/03/07/Sat

 先週ギニアビサウでは、軍が最高裁判所を占拠し、国営TV、ラジオを閉鎖した。軍は、クーデタではなく、兵舎に帰ると主張している。ギニアビサウは1974年の独立以来、9回のクーデタあるいはクーデタ未遂を経験しており、2012年にもクーデタがあったばかりだ。  今週の軍による介入は、12月の大統領選挙後の混乱の中で生じた。大統領選挙では、大方の予想を裏切って、与党PAIGCの候補ペレイラ(Domingos Simões Pereira)が敗れ、野党のエンバロ(Umaro Sissoco Embaló)が当選した。PAIGCは独立以来ギニアビサウで強力な地位を確立してきた政党で、議会の多数派を保持している。これを利用して、PAIGCはこれまでエンバロの大統領就任を妨害してきた。  ペレイラは再選挙を呼びかけ、最高裁は投票の数えなおしを命じたが、選挙管理委員会はこれを無視し、エンバロの当選が有効だとの主張を続けている。エンバロも最高裁の決定を無視し、先週になって、議会ではなく高級ホテルで大統領就任式を挙行した。就任式は、前大統領ヴァス(José Mário Vaz)や軍幹部など、少人数が出席して行われた。これに対してPAIGCは、議会多数派勢力であることを利用して、国会議長のカサマ(Cipriano Cassamá)を暫定大統領に就任させた。ところが、わずか2日後の3月1日、カサマは「自分と家族の生命が危機に晒されている」として辞任してしまう。軍による最高裁占拠などの動きは、その後のことである。  6日付ファイナンシャルタイムズによれば、アナリストの分析も割れている。エンバロは犠牲者で権力を手放そうとしないPAIGCが元凶だと主張する者もいれば、軍の行動はクーデタに他ならないと見る者もいる。  不幸にしてギニアビサウでは、形を変えてこうした混乱が続いてきた。そして、こうした状況は、南米の麻薬カルテルによって利用されてきた。この国は、南米から西アフリカを通ってヨーロッパに至るコカイン密輸ルートの主要な入口になってきた。昨年3月には789キロ、9月には1.8トンなど、大量のコカインが押収されている。これらが氷山の一角に過ぎないことは言うまでもない。政治家同士の権力闘争と政治混乱もまた、それによって利益を得る者によってつくられ、増幅されていると見た方が良いだろう。

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アフリカの若者に関する調査

2020/03/01/Sun

米国の世論調査会社PSBが、南アのThe Ichikowitz Family Foundationの支援を得て、アフリカの若者に関する調査を実施し、報告書が発表された。14か国(コンゴ共和国、エチオピア、ガボン、ガーナ、ケニア、マラウイ、マリ、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、南アフリカ、トーゴ、ザンビア、ジンバブウェ)で、18-24歳の4200人(男女同数。46%が学生)に対して、同国人の調査員を使って直接インタビューした結果であり、興味深い結果を示している。 調査では、職がなく、不満をため込む「怒れる青年」という若者イメージとはかなり違う結果が示されている。とりわけ、報告書の副題に"The rise of Afro-optimism"とあるように、アフリカの若者が将来に対して楽観的、ポジティブなイメージを持っていることが明らかにされている。加えて、彼ら、彼女らがきわめて企業家精神に富んでおり、少しの元手があれば起業したいと考えていることも興味深い。日本からアフリカに行ったときに解放された気分になるのは、こうしたポジティブなイメージが社会に満ちているからかもしれない。  14か国の違いについても、考えさせられることが多い。例えば、将来に対してポジティブに見ている割合が最も高い三か国はルワンダ(92%)、ガーナ(62%)、エチオピア(58%)で、その割合が最も低い三か国はマラウイ(50%)、南ア(49%)、ケニア(46%)だった。民主主義が浸透していると見られる国の方が、ポジティブな割合が低い傾向が出ていることは面白い。

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