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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2018年07月

ジンバブウェ大統領選挙

2018/07/29/Sun

 7月30日のジンバブウェ大統領選挙では、昨年11月に事実上のクーデタでムガベを追い落としたムナンガグワが自らの地歩を固めることができるかが注目される。経済開放を約束し、また白人との和解を訴えるムナンガグワは、総じて西側で評判が良い。ただし、主要野党MDCの候補であるネルソン・チャミサ氏との間に、支持率の大きな差があるわけではない(7月26日付ファイナンシャルタイムズ紙)。ムナンガグワの楽勝というわけにはいかない。 ジンバブウェの当面の課題は、2000年代以降ムガベの白人農場強制収用政策をきっかけに著しく悪化した経済をどのように立て直すかにある。ハイパーインフレーションによる経済の崩壊(2008年頃)をどん底として、ジンバブウェ経済は上向いてはいるものの、依然1990年代末の水準を回復していない。投資額も、南部アフリカで比較すると、モザンビーク、南アはもとより、ザンビアにも及ばない水準である。経済復興への道のりは遠いと言わざるを得ない。 選挙の勝者が誰であれ、ジンバブウェは今後経済開放政策を進めることになろう。しかし、性急な外資呼び込み政策には慎重であるべきだ。ムガベが進めた土地再配分政策は、複雑かつ多様な影響を与えてきた。ジンバブウェ農業の専門家であるサセックス大のスクーンス教授は、ジンバブウェの食糧生産は近年土地改革以前の水準を回復したと述べている(7月24日付FT)。白人大農場の配分を受けたアフリカ人小農による生産が増大したためである。白人農場主への抑圧政策を止めることは賢明だが、アフリカ人小農の生産力を活かす形で今後の政策を設計すべきである。

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大統領選挙とマリ情勢

2018/07/29/Sun

7月29日の大統領選挙を前に、マリへの関心が高まっている。今回の選挙では、現職のイブラヒム・ブバカール・ケイタ(IBK)が再選を狙う。ケイタは有力候補だが、77.6%の得票で圧倒的勝利を収めた前回(2013年)ほど安泰ではない。7月27日付ルモンド紙によれば、フランスのルドリアン外相は、ケイタ氏の統治について「失望した」と繰り返し表明している。治安改善への取り組みに対して、政治的意思が欠けると見なされているのである。実際、この5年の間にマリの治安情勢は悪化したと言ってよい。今や北部のみならず、中部でも紛争状態が広がっている。 これに関して、7月24日付ルモンド紙は、政府による民兵利用の影響を指摘している。マリでは、反政府運動が勃発した時に、民兵を利用してこれを封じ込める政策が以前からとられてきた。1990年代にトゥアレグが反乱を起こした際、ソンガイの民兵(Ganda Koy/Ganda Izo)が利用された。2012年の北部反乱の際にも、同様の手法が用いられた。さらに、ソンガイ人が少ない北部の要所キダルを占領するイスラーム急進主義勢力に対抗するため、政府やフランス軍は、トゥアレグ人主体の世俗派武装勢力(Mouvement pour le salut de l'Azawad: MSA)やトゥアレグ人被支配層主体の民兵組織(Gatia)へのテコ入れや協力を続けてきた。 この政策には厳しい批判がでている。7月26日付ルモンド紙には、元マリ駐在フランス大使が、自国の政策を正面から批判した意見が掲載された。現在のマリ北部のジハディスト勢力は、その首領であるイアド・アグ・ガリがそうであるように、トゥアレグの貴族層の出身者が多い。トゥアレグ人は1960年代から独立・自治を求めて紛争を繰り返してきたが、その中心は常に貴族層であった。トゥアレグは階層社会で、支配層である貴族階層とそうでない被支配階層の間には深い亀裂がある。Gatiaは後者から構成されており、これを支援したことで、フランスはトゥアレグ社会内の紛争に深く巻き込まれてしまったと元大使は批判する。 加えて、マリ政府に倣って武装勢力と手を組んだことで、武装蜂起することの「うまみ」を現地社会に知らしめてしまった。武装しているがゆえに政府軍やフランス軍の支援を受けるのであれば、武装解除のインセンティブは高まるはずがない。結果として、DDRプログラムは全く進まず、武装勢力がさらに跋扈する結果となった。 マリ北部の治安問題を解決するために、軍事力だけでは不可能であることは、フランス軍の担当司令官も認めている。29日の大統領選挙が、これまでの北部政策を再考する契機となることが期待される。

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ハチのフェロモンでゾウを撃退

2018/07/27/Fri

7月24日のAFPの報道によると、米科学誌カレント・バイオロジーに、ハチのフェロモンがゾウ撃退に有効かを検証した研究成果が発表された。ゾウの目や鼻の軟組織は、ハチに刺されたときの痛みに特に弱いため、ゾウはハチへの警戒心が強いとされてきた。既存の研究では、ゾウはミツバチの羽音を嫌うことや、ハチが危険を感じて群で飛ぼうとするときに発するにおいを認識していることが指摘されている。今回の研究では、ハチのフェロモンを付着させた靴下を木の枝につるす実験をおこない、靴下に近づいたゾウの多くが警戒心や不安を表す兆候を示したことが報告されている。 アフリカ各地の保護区の近くでは、ゾウによる農作物被害が拡大している。アフリカではすでに、ゾウから作物を守るためにミツバチの巣箱を設置する取り組みがなされているが、一方でハチの巣箱を大規模に導入するのは難しいとも言われている。ハチのフェロモンの研究が今後、ゾウと人の衝突を回避するための持続可能なツールとして発展していくことが期待される。

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G20とアフリカの債務問題

2018/07/22/Sun

7月20日付ルモンド紙は、7月21,22日にブエノスアイレスで開催されるG20で、アフリカを中心とする低開発国の債務問題が議題に上がる見込みだと報じた。貿易摩擦に隠れて目立たない感があるが、昨年来アフリカの債務問題への警鐘が繰り返し報じられている。2010年代に入って、アフリカ諸国では総じて債務が急速に増加した。2017年のアフリカ諸国の債務額は平均でGDPの57%に達しており、5年間でほぼ倍増している。格付け会社S&Pによれば、アフリカ諸国の債務支払い額は政府歳入の11%に達し、2011年の4%から大きく増加している。ザンビアでは債務支払い額が教育部門の予算額を上回ったという。2017年にはモザンビークとコンゴ共和国がデフォルトを宣言した。IMFは今年3月に刊行した報告書で、多くの国にとっては債務は管理可能な水準にあり、過度な懸念は不要としつつも、アフリカ8か国に債務危機の恐れがあると述べている。債務の内訳に関しては、民間部門からの条件の厳しい債務が増えていること、また中国からの債務が中心になっていることが指摘されている。中国からの債務はサハラ以南アフリカ諸国の債務総額の14%に達したとされている。

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南スーダン国民議会がキール大統領の任期延長を承認

2018/07/13/Fri

7月12日、南スーダン国民議会は、サルヴァ・キール大統領の任期延長を認める法案を通過させた模様。これにより、2015年7月に3年延長された現下の大統領の任期は、再度3年延長されることとなり、キールは2021年8月まで現職に留まることが可能となった。 先日の「今日のアフリカ」で述べたとおり、先月下旬、マシャール前第一副大統領が2016年7月の軍事衝突以来はじめて政治の表舞台に復帰した。その後、エチオピア、スーダン、ウガンダといった周辺国の仲介に支えられるかたちで停戦協定が結ばれるなど和平協議の成果が積み重ねられた。 今般の大統領任期の延長に対して野党は、このような新たな局面にある南スーダンの和平協議に悪影響を及ぼすとして非難している。 なお、パウリノ・ワナウィロ南スーダン司法・憲法問題大臣は、今般の延長は、大統領の任期が終了した際に正統性が失われることを回避するために必要だ、とこれを正当化している。 南スーダンの和平を巡っては上述したように、新たな局面にあるものの他方で懸念も少なくない。マシャールをどのような立場で南スーダン政府に復帰させるかといった点や、権力分掌といった難問は依然として未解決のままであり、周辺国を巻き込んだ政治交渉がどのように展開されるか注目される。

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エチオピア、エリトリア戦争正式に終結

2018/07/10/Tue

エチオピアのアビィ首相は8日からエリトリアの首都アスマラを訪問していたが、9日、イサイアス大統領とともに、戦争終結宣言に署名した。国境紛争をきっかけに、両国は1998~2000年に激しい戦争を戦い、約7万人の戦死者を出した。その後もエチオピアが和平協定を受け入れず、正式な戦争終結に至っていなかった。9日には、正式な戦争終結を宣言するとともに、航空便の乗り入れや、エチオピアがエリトリアの港湾を利用することも合意された。両国間の緊張緩和は、ソマリアや南スーダンなど、近隣地域の政治情勢にもプラスの影響を与えるだろう。9日付ルモンド紙によれば、今回の両国の接近は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、そして米国が後押しをしたという。また、エリトリアがエチオピアとの和解を受け入れた背景には、オロモ出身のアビィ首相に接近することで、宿敵TPLFの勢力を削ぐ思惑があるとの報道もある。大きな決断の背景には当然様々な思惑があろう。当面は、両国の蜜月がどのような影響を周辺地域に及ぼすのかを見守りたい。

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AUサミットとマリ情勢

2018/07/07/Sat

7月1日と2日、モーリタニアの首都ヌアクショットでAUサミットが開催された。一方マリでは、明らかにそのタイミングを狙ったテロ事件が発生した。6月29日、セヴァレ(マリ中部)の「G5サヘル」司令部に対する攻撃があり、7月1日にはガオ(マリ北部)でフランスの部隊(Barkhane作戦)への攻撃があった。いずれもイスラーム急進主義勢力が関与していると見られる。セヴァレ付近は、2017年3月に「マグレブ・イスラームのアルカイダ」(AQIM)と複数の組織が統合して誕生した武装組織「イスラームとムスリム支持グループ」(GSIM)の主たる活動領域となっている。この2つの事件が示すように、マリ情勢は改善していない。フランスのテコ入れによって「G5サヘル」(モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャド)合同軍が活動を開始したが、目立った成果を生んでいない。AUサミットにはマクロン仏大統領も出席し、G5サヘルの首脳と会談して連携強化を確認したが、マリ情勢が好転する兆しは依然として見えない。

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