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今日のアフリカ

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マリ情勢の悪化

2022/11/26/Sat

 フランスとの関係悪化から国際的な孤立化を深めるマリで、イスラム急進勢力との戦闘激化と民間人の犠牲増大が伝えられている。8月にフランス軍が完全に撤退した後、マリ軍は政府派の民兵やロシア兵(ワグネル)とともにイスラム急進勢力との戦闘を継続している。しかし、メナカやガオの周辺ではIS系武装勢力による攻撃が激しさを増し、民間人に多くの犠牲が出ている模様である。
 イスラム急進主義の拠点と見なされた村がマリ軍とロシア兵に襲撃され、民間人が殺害されたとの報道もある(11月1日付ルモンド)。この地域では、プール人(フルベ人)がイスラム急進主義の支持者だと見なされ、近隣コミュニティや政府軍からの攻撃対象となっている。
 マリ情勢が悪化を続けるなか、国連平和維持部隊(Minusma)からの撤収が相次いで発表された。14日に英国、15日にコートジボワール、そして22日にはドイツが、Minusmaに提供している部隊を撤収させると公表した。英国とコートジボワールは2023年中に、ドイツは2024年中の撤収を予定している。
 孤立化を深めるマリ政府は、従来に増して頑なな態度を示すようになった。7月には49人のコートジボワール兵士を書類不備を理由に「民兵」だとして空港で拘束し、今日に至るまで解放に至っていない。フランスが政府開発援助を停止したことに反発し、21日にはフランス政府の支援を受けたすべてのNGOの活動停止を命じた。フランスは開発援助は止めても人道支援は継続していたが、マリ側の決定によって、人道支援も停止することになる。
 西側諸国に背を向けたマリの姿勢は、絶望的な対応のようにも見える。しかし、こうした姿勢の背景には、国内の強い反仏感情がある。そしてこの反仏感情は、近隣諸国でも表出するようになっており、18日にはブルキナファソでフランス大使館や軍駐屯地を標的とした抗議デモが起こった(20日付ルモンド)。イスラム急進主義勢力への実効的な対応がなければ、周辺国の「マリ化」が現実味を帯びることになろう。
(武内進一)