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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2022年04月

中央アフリカのビットコイン法定通貨化

2022/04/30/Sat

中央アフリカ共和国が仮想(暗号)通貨ビットマネーを法定通貨とすることを発表したことが注目されている(Reuters 4月29日)。法定通貨としてビットマネーを採択するのは、エルサルバドルに続いて世界で二国目である。現在、中央アフリカを含めた近隣6カ国では中部アフリカ諸国中央銀行(BEAC)の発行するCFAフランを使用している。この通貨はユーロに固定相場制で紐づき、中央銀行の外貨準備金の50%をフランス国庫に預ける必要があるため、フランスの新植民地主義であり、それによりアフリカの経済発展が妨げられていると批判されてきた。今回の中央アフリカの決定は、この体制に抵抗しようとしていると見るむきもある。 しかし、IMFはファイナンスを不安定化させるとしてビットマネーの法定通貨化を批判しており、今回の中央アフリカの決定に対し融資の中止などなんらかの対抗手段がとられる可能性がある。 アフリカでビットマネーは既に若年層のビジネスマンを中心に急速に受容が広がり、2021年の世界の仮想通貨受容指標によると、トップ20カ国中、5位ケニア、6位ナイジェリア、9位トーゴなど、アフリカから5カ国が入っている(Chainalysis 2021)。ケニアでは超富裕層における40代以下の若年層の割合が増加しているが、その多くがビットコインの影響を受けているという(Capital business 3月2日)。 仮想通貨に対する反応は各国異なる。ナイジェリアの中央銀行は昨年、地域の銀行が暗号通貨を扱うことを禁止し、独自のデジタル通貨であるeNairaを立ち上げた。南アフリカの規制当局は、暗号通貨やその他のブロックチェーン技術を規制する方法を模索している。タンザニアの中央銀行は昨年、暗号通貨に備えるための大統領指令に取り組んでいると述べた(Reuters 4月29日)。 海外からの送金が多く、また法定通貨が脆弱な傾向を持つアフリカで、グローバルなビジネスパーソンや送金を待つ人々にとっては、送金費用の負担が少なく、国境を越えて通用する仮想通貨は強力な代替であり得る。人々の仮想通貨の受容が今後ますます広がることが予想される中、政府はどのような態度をとっていくのか。法定通貨化の行方とともに、各国の動きが注目される。

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カガメのウガンダ訪問

2022/04/26/Tue

 ルワンダのNew Times紙(政府系)は、24日、カガメ大統領がウガンダを訪問したと大きく報じた。ムセヴェニ大統領の息子カイネルガバ(Muhoozi Kainerugaba)の誕生日の機会に私的訪問したもので、4年ぶりとなる。カイネルガバとともに治安相と会談したほか、ムセヴェニとも会って晩餐会に出席した。  ムセヴェニとカガメとの間には、長年にわたる複雑な関係がある。幼くしてウガンダに逃れ、そこで成長したカガメは、ルワンダ人難民部隊を組織してムセヴェニに協力し、1986年の政権奪取に貢献した。1990年代のRPFのルワンダ侵攻と政権奪取は、ムセヴェニの支援なくして不可能だった。一方、1990年代末以降のコンゴ(DRC)内戦では、鉱物資源の利益をめぐって対立し、両国の軍がコンゴ領内で衝突した。その後も両国間関係は緊張と融和を繰り返してきたが、ここ数年は関係悪化が顕著で、国境閉鎖が続いていた。  この状況に変化をもたらしたのが、カイネルガバであった。カガメを「オジ」と呼んで親密さを強調する彼は、1月22日にルワンダを訪問し、月末には国境が再開された。3月には、カガメがカイネルガバにウシを贈ったことが大々的に報道された(3月17日付New Times)。この地域で、相手にウシを贈ることは特別な親密さを示す象徴的な意味がある。  コンゴでまたもM23の活動が活発化し、その背景にルワンダの支援が指摘されている。このルワンダの動きは、チセケディ(DRC大統領)がADF掃討作戦のためにウガンダ軍にコンゴ領内での活動を許したことへの反発との見方もある(4月1日付ルモンド)。こうした状況下で、カガメ、ムセヴェニ、カイネルガバらの動きは注視すべきものである。政治指導者の個人的な関係が国家間関係のすべてを決定するわけではないが、こうした個人間の関係抜きにこの地域の国家間関係を論じることはできない。

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岐路に立つ新型コロナウイルス感染症対策

2022/04/23/Sat

 「ウィズ・コロナ」への移行に向けた現状と課題は各国ごとに異なり、日本を含めて世界各国が今後の対応を模索している。アフリカも同様に、その政策的対応をめぐる岐路に立っている。  従来、アフリカへの新型コロナワクチン供給が不十分だという指摘が繰り返しなされてきた。一方で、ナイジェリア、南スーダン、マラウイなどがワクチンを大量に廃棄している。最近では、ケニアがCovaxで入手したアストラゼネカ社製ワクチン84万回分を廃棄した(21日付ルモンド)。これは、ワクチンを地方に供給するロジスティクスに問題があるためである。Africa-CDCのンケンガソン長官は、14日、輸送、貯蔵、そして接種に関わる人員面での能力を拡大するための支援が必要だと強調した。  一方で、COVID-19だけに医療資源を集約させる政策への疑問の声も出ている。変異株の特徴や若年層中心の人口構成のために、アフリカで新型コロナウイルス感染症は重篤化しにくい。アフリカ人の多くが新型コロナウイルス感染症への抗体を持っているとの調査結果はこれまでも何度か報じられており、4月上旬にはアフリカ人の3分の2が感染経験があるとのWHOの調査が発表されている(7日付ルモンド)。  アフリカにおいて、COVID-19は死因の上位に来る病気ではない。一方、HIVや結核、マラリアなど、死因上位の病気への対応が、COVID-19対策のために後回しになっている事実がある。こうした疾患を持つ人がCOVID-19に感染すれば重篤化しやすいので、そのための対応は必要だが、COVID-19対策だけに注力すればよいという訳ではない。ファイナンシャルタイムズは社説で、アフリカの新型コロナウイルス感染症に関して、政策的な優先順位を再検討すべきだと述べている(22日付)。  ワクチン生産について、アフリカは難しい判断を迫られている。ロジスティクス面の課題や重篤化しにくいことによる人々の消極的な姿勢もあって、ワクチン接種率は伸びていない。そのことがワクチンの現地生産計画を困難にしている。7日付ルモンド紙によれば、南アのダーバンに本拠地を置くAspen Pharmacare社は、生産停止せざるを得ないかも知れないとの見通しを示した。2020年11月、同社は米国のJohnson&Johnson社と契約を結び、「アフリカ人のためのアフリカで製造された」コロナワクチン製造に乗り出したのだが、需要の伸び悩みから困難に直面している。前述の基礎疾患を持つ人々だけでなく、そうした人々に接する医療従事者のためにもワクチン接種は必要である。現地生産計画が頓挫すれば、アフリカにとって大きな痛手となる。政策の優先順位を再検討する必要はあるにせよ、ワクチンの現地生産能力を高める努力は怠るべきでない。

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アフリカのポピュリズム

2022/04/17/Sun

 14日付ルモンド紙は、ベナンのジャーナリストであるフランシス・ラルポ(Francis Laloupo)へのインタビューを掲載している。アフリカ人知識人の民主主義に対する見解として興味深いので、紹介する。  フランスで極右政党の候補者が2回続けて大統領選挙の決選投票に進出したこと、あるいはドナルド・トランプの言動や支持者の行動に見られるように、ポピュリズムは欧米で勢いを増している。一方、この現象は欧米にとどまらずアフリカにも強く影響しており、例えば、反フランス意識の盛り上がりという形で現れている。フランスにおけるルペンやゼムールの言動を見て、人々はマリ政府要人のナショナリスティックな振る舞いや反仏演説を正当化している。  アフリカのポピュリズムは、新しい現象ではない。かつてのムガベもポピュリズムに支えられた政治家だった。しかし、近年の特筆すべき現象は、伝統的な政党が崩壊したところにポピュリズムが現れていることだ。マリ、ブルキナファソ、ギニアで起こったクーデタは、歴史的な政党政治への不信から起こっている。  ポピュリストが発するメッセージには共通点が多い。彼らは内外の敵を攻撃する。うちにあってはこれまで民衆を貧困のままにとどめてきたエリート層を、外にあっては植民地経験を押しつけたフランスをやり玉に挙げる。とはいえ、実行可能な解決策を提示するわけではない。SNSを使った陰謀説の流布は、彼らの重要な手法である。欧米はアフリカ人を絶滅させようとしているといった情報が流されている。  新興国の民主主義は脆弱だが、それは西側先進国の民主主義の運命と結びついている。西側で台頭するポピュリズムは、アフリカでもポピュリズムや権威主義を正当化し、民主主義を弱めている。  総じて重要な指摘である。政治現象の国境を越えた共振や政治手法のグローバル化が進行していることを強く感じる。

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イギリス・ルワンダ間にアサイラムシーカーをめぐる協定

2022/04/16/Sat

 14日、イギリスのジョンソン首相は、ルワンダとの間で「移民と経済発展パートナーシップ」を結んだと発表した。同日、パテル(Priti Patel)英内相はルワンダを訪問し、同国のビルタ(Vincent Biruta)外相とともに、記者会見に臨んだ。同パートナーシップの内容は、ドーバー海峡を超えて違法に英国の地にやってきた庇護申請者(アサイラムシーカー)をルワンダに移送する一方、英国はルワンダに1億2000万ポンドの資金支援を行うというものである。この資金は、主として教育や職業訓練支援に充てられる。共同声明では、「ルワンダに移民を移送し、その個人的能力開発と雇用機会を提供することで、移民を生むグローバルな機会不平等を是正するとともに、犯罪者のインセンティブ構造を削ぎ、無辜の命を救う」と紹介された。ルワンダの政府系紙New Timesは、このパートナーシップ締結を大々的に報じた(14日付)。  一方、この協定は、内外で激しい批判に晒されている。アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体はルワンダの人権状況などを理由に一斉に反発し、Oxfamは「冷酷で非道徳的なだけでなく、実行不可能」だと述べた(14日付ファイナンシャルタイムズ)。  ルモンド紙は15日付の社説で、問題点を整理して批判した。この協定では誰が、どのような場合にルワンダに移送されるのかがはっきりしない。これはアサイラムシーカーがそもそもイレギュラーな状態で入国する事実を無視したものであり、難民条約に違反している。ドーバー海峡を渡る移民の数を減らしたいと述べているが、実際のところ、地方選挙を3週間後に控えて、有権者の目を自身の「パーティーゲート」問題から逸らせることが目的だ。この政策が「Brexitの利得」であり、「国境のコントロールを取り戻した」と述べるジョンソン首相は、EU離脱によるネガティブなインパクトを忘れさせたいのだ、と厳しく批判した。  16日付のFT紙も、ルワンダがこれまで何度も難民受入れを表明してきたが、現実には多くの問題があり、受入れが進んでいないと指摘している。国連も批判的な態度を明らかにしており、金持ち国がすべきは、難民を既に受け入れているルワンダを支援することであって、その逆ではない、とイギリスを批判した。また、UNHCRは、英国とルワンダに計画を再考するよう求めた。  この一件が示すのは、移民・難民をめぐる問題がヨーロッパにとって抜き差しならないものであること、それだけにこの問題を政治的に利用する動機が喚起されることである。先日スペインが西サハラ政策転換を表明した際にも背景に移民問題の存在を指摘する声があったが、イギリスとルワンダの件も、それがヨーロッパとアフリカの間できわめて重要かつ深刻な問題であることを改めて示している。

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アフリカの天然ガス

2022/04/10/Sun

 天然ガスの主要供給国ロシアへの制裁が強まるなか、代替供給先をめぐる議論が熱を帯びている。EU諸国は天然ガス供給の4割をロシアに依存しており、代替供給先の確保が急務である。こうした文脈で、アフリカに注目が集まっている。7日付ルモンドのドゥ・ヴェルジェス(Marie de Vergès)のコラムは現状を簡便にまとめていて興味深い。  ウクライナ危機のなか、食料やエネルギー価格の高騰のために打撃を受けているアフリカ諸国は多い。一方で、経済的好機になる可能性もある。3月下旬、アフリカ開発銀行のアデシナ総裁は、「ヨーロッパは天然ガスの代替調達先を探しているが、それはアフリカだろう」と述べた。総裁の祖国ナイジェリアは、アフリカ最大の天然ガス供給地のひとつである。  天然ガス調達をアフリカに求める動きは既に始まっているが、ウクライナ危機を受けて改めて注目を浴びている。ニジェール経由でナイジェリアとアルジェリアを結ぶ、4000キロのガスパイプライン計画はその一つである。計画自体は10年以上前からあったが、この2月に工事が開始されたという。既にヨーロッパのガス供給量の11%を占めるアルジェリアはもとより、アンゴラやモザンビーク、セネガルやタンザニアといった国々にも注目が集まっている。  しかし、天然ガス鉱脈の存在は、機会であっても解決策ではない。インフラは老朽化し、パイプラインが攻撃される危険性は高い。ナイジェリア南部における石油パイプラインの破壊はよく知られているし、モザンビークではジハディストの攻撃のために天然ガス開発が中断された。これまでアフリカで、幾度となく「資源の呪い」が指摘されてきたことに注意を向けるべきだ。  天然ガスをめぐっては、ウクライナ危機の以前から報道が目立つようになっていた。ヨーロッパ諸国での危機感がそれだけ強いということだろう。それがどのような形でアフリカに影響するのか、注視する必要がある。

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サンカラ暗殺事件裁判でコンパオレ前大統領に無期刑

2022/04/07/Thu

 6日、1987年10月に起こったサンカラ(Thomas Sakara)大統領暗殺事件を巡る裁判で、ワガドゥグ軍事法廷は前大統領のコンパオレ(Blaise Compaoré)に欠席のまま無期懲役の判決を下した。他にも、カフォンド(Hyacinthe Kafando)元大統領警護隊司令官や、ジェンジェレ(Gilbert Diendéré)将軍(クーデタ時の軍指導部)にも無期懲役が下された。  サンカラ暗殺については、盟友で彼の死後大統領となったコンパオレの関与が囁かれてきたが、2014年の市民革命で政権が倒れて以降、審理が進められてきた。コンパオレは現在なおコートジボワールに亡命中である。コンパオレとやはり亡命中のカフォンドを除く12人は、軍事法廷に出席した。  この裁判にはアフリカで高い関心が寄せられ、6日のラジオ・フランス・アンテルナシオナルでは特別ニュースが組まれた。「精神の非植民地化」を訴えたサンカラは、多くのアフリカ人から敬愛されている。今年1月24日に起こったクーデタが裁判に影響を与えることが懸念されていたが、求刑の懲役30年を上回る厳しい判決が下された。

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