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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2019年06月

リビア内戦の膠着化

2019/06/30/Sun

トリポリ南方約100Kmに位置する町ガリヤン(Gharyan)が、26日に連邦政権(GNA)側に奪還された。トリポリ攻略を目指すハフタル将軍率いるLNA(リビア国民軍)側には痛手となる。ハフタルはベンガジを中心に東部リビアを実効支配していたが、今年4月上旬にトリポリ攻略を宣言して進軍を開始した。ハフタルに対しては、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、エジプトが支援しており、当初は早期に軍事的決着を見るとの見通しもあった。しかし、ハフタルの侵攻に対してトリポリの民兵組織が反発し、GNA側に立って軍事反攻に転じたことなどから、事態は次第に膠着の様相を呈している。LNA側にとって、ガリヤンはトリポリ攻略上の重要拠点であった。内戦が早期に軍事的決着を見る可能性は、考えにくくなっている。  ガリヤンの攻防戦では、トルコがGNAに提供した軍事用ドローンが大きな役割を果たしたと、6月29日付ルモンド紙は報じている。LNA側に対してもアラブ首長国連邦など近隣支援国が武器提供をしており、リビアはシリアやイエメンに似た状況に陥りつつある。

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エチオピアのクーデター未遂

2019/06/26/Wed

6月22日、エチオピア北部のバハルダールで、政府高官らが会議中のところに兵士らが押し入り、アムハラ州知事、州政府顧問らが殺害された。その数時間後、首都アディスアベバで同国陸軍参謀総長及び退役将校が、同参謀総長の自宅で護衛兵に射殺される事件が生じた。アビィ首相は同日TV演説を行い、これら事件について一部の兵士が起こした「クーデター未遂」と説明しつつ、国家分断を目論む悪しき勢力に対する団結が必要であると国民に訴えた。首相府は、二つの事件が連携されたものであり、アサミノウ・ツェッゲ准将らが関与した疑いが強いとの見解を発表し、治安部隊を展開して事態の収束を図った。24日、国営メディアは、同准将がバハルダール近郊で射殺された旨を報じた。関与した疑いのある4人のアムハラ州高官を含む180人以上が逮捕されたという。アサミノウは、昨年に恩赦を受けて釈放されるまでおよそ9年間収監されていた人物であり、釈放後はアムハラ州の治安部隊のトップに就任していた。この事件の数週間前に、アサミノウはSNSなどを通じてアムハラの人々に武装化を訴えていたことも一部で報じられている。エチオピアにおいてはアビィ首相就任以降、改革的な政策が進展しておりその多くは国際的にも一定の評価を得ているものの、オロミア州西部等の対政府抗議運動や、オロミア州とソマリ州、ベニシャングル州とアムハラ州などの州境・資源を争う紛争は定期的に繰り返されており、国内の治安については改善に至っていない。2020年にはアビィ就任後初となる総選挙が予定されているため、現下、国内の治安対策は政府にとって急務の課題となっている。 【参考】 CNN記事:https://edition.cnn.com/2019/06/23/africa/ethiopia-attack-general-intl/index.html

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モーリタニア大統領選挙

2019/06/23/Sun

 西アフリカのモーリタニアでは、6月22日(土)に大統領選挙(第1回投票)が実施された。現職のモハメド・ウルド・アブデルアジズ(Mohamed Ould Abdelaziz)は、三選規定に抵触するため出馬しない。彼は2008年8月6日にクーデタで政権を奪取し、2009年、14年の大統領選挙で勝利した。後任の候補者として、現政権の下で10年間国軍参謀長を務め、数か月前に国防相に転じたモハメド・ウルド・ガズアニ(Mohamed ould Ghazouani)を指名した。腹心の部下である。  アブデルアジズ政権は、2期10年の間治安を強化し、2010年以来大きなテロ事件は起きていない。西アフリカ5か国の治安枠組み「G5サヘル」にも熱心に協力してきた。マクロ経済も比較的堅調である。一方、社会的不平等は問題点として指摘される。モーリタニアは1981年になってようやく奴隷制廃止が大統領令で布告された経緯があり、社会的不平等が深く根付いている。奴隷の子孫はハラティンと呼ばれるが、国軍の将軍のうち、モール人が34人なのに対して、ハラティンはわずか2人に過ぎない(6月21日付ルモンド紙)。また、モーリタニアにはソニンケ、ウォロフ、プールなどサブサハラアフリカに広く居住する民族も存在するが、これら民族に対する差別も存在する。  アブデルアジズ政権の下で、モーリタニア経済は比較的好調だったが、そこから裨益した人々は少ないと指摘される。22日の投票結果は来週中に発表される予定である。現政権の路線継続を訴えるガズアニが有利と見られるが、新政権下で社会的不平等に何らかのメスが入るだろうか。

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チュニジアとニジェールが国連安全保障理事会の非常任理事国に選出

2019/06/12/Wed

国連総会は6月7日、国連安全保障理事会・非常任理事国の後任5か国を選出した。アフリカからはチュニジアとニジェールが選出された。ほか3か国はベトナム、エストニア、セントビンセント・グレナディーン。任期は2020年1月から2年間で、世界各地の紛争や危機に対応することとなる。 選出されたチュニジア外相Khemaies Jhinaoui氏は「チュニジアは民主国家であり、この数年は新たな民主主義体制の構築に大きな進歩を遂げている。人権や女性の役割、平和構築に貢献する女性、そして和解のための声となるであろう」と述べた。またニジェール外相Kalla Ankouraou氏は「ニジェールはサヘル地域の国であり、テロとの戦いを優先事項としている。今日、世界においてもテロとの戦いは最優先事項となっている。テロは未開発の結果であり、テロの原因である未開発と戦うことが求められているのは明らかである」と述べている。 15か国で構成する安保理のうち、拒否権を持たない非常任理事国は10か国。うち5か国が総会の選挙をもって選出される。今回の選挙で、ベトナムが192票、ニジェールが191票、チュニジアが191票、セントビンセント・グレナディーンが185票、エストニアが132票を獲得した。 チュニジアは独立以来、初等・中等・高等教育に力を入れ、女性の権利保障と社会進出を重視した法整備を進めてきた経緯をもつ。ニジェールは不安定化する地域情勢を鑑み、治安・テロ対策に関して域内協力を積極的に推し進めている。西アフリカでは武装勢力による襲撃事件や拉致事件などが相次いでおり、これらを実行している勢力のなかにはISとのつながりが指摘されるものもある。またこの背景には貧困や経済格差のような課題も潜んでいる。チュニジアとニジェールがこれらの課題への「声」となっていくことに期待したい。 africanewshttps://www.africanews.com/2019/06/09/niger-tunisia-et-al-join-un-security-council-as-non-permanent-members/?fbclid=IwAR3or6DGM9u8AYHmFGvWsboTDk6mEavLdCchiGqelYbZRsFcDt31dxeIOaQ 日本経済新聞https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45860170Y9A600C1000000/

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対南スーダン制裁更新とロビイストとの契約

2019/06/11/Tue

2019年5月30日、国連安全保障理事会は南スーダンに対する制裁の更新を決めた。南アフリカ、コートジボワール、赤道ギニア、ロシア及び中国の棄権にかかわらず10票の賛成票が集まったことから米国作成のこの決議案は採択され、同国に課せられた武器禁輸は1年延長されることとなった。南スーダンにおいては、2018年9月、紛争当事者らが「再活性化された衝突解決合意」へ署名したものの、当初の期限内に統一暫定政府を発足できなかったなど、合意の履行状況は捗々しくない。南スーダン政府はこの制裁更新について、南スーダン政府の弱体化を招き反政府勢力を付け上がらせるものであると述べて、国連及び賛成票を投じた国々を非難した。  これに関連した興味深い記事がある。それは、南スーダン政府が今年4月に米国籍のロビイスト企業と契約を交わしたことを報じたものだ。契約は2年超の任期で、約370万米ドルの支払いで合意に至ったと報じられている。ロイター(2019年4月30日付)等によれば、このロビイスト企業は、米国主導の制裁の解除、戦争犯罪を裁くハイブリッド法廷の設置中止、そしてキール南スーダン大統領とトランプ大統領とのコミュニケーション仲介に対する支援を行うという。この民間企業には、元駐ケニア米国大使を含むアフリカでの外交経験者も複数所属しているようである。南スーダンにいる現役の外交官や和平状況を監視するNGOのなかには、各国の和平構築の努力に水を差すものとして、同企業を厳しく批判しているものもいる。   今般、米国作成の制裁更新決議が採択されたことに鑑みれば、このロビイストの影響力は限定的かもしれないが、今後ハイブリッド法廷設置の履行や対米関係等に影響する可能性もゼロとは言えないだろう。 【参考資料】 - UNプレスリリース(https://www.un.org/press/en/2019/sc13827.doc.ht) - ロイター通信(https://af.reuters.com/article/topNews/idAFKCN1S60Q6-OZATP) - VOAニュース(https://www.voanews.com/archive/south-sudan-pays-millions-block-establishment-hybrid-crimes-court)

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ガーナのカナダ人女性誘拐事件とUber

2019/06/11/Tue

先週、ガーナ第2の都市クマシに宿泊していたカナダ人女性2名が、ホテルから出たところで車に押し込められ誘拐される事件が発生した。彼女らは国際若者チャレンジカップのボランティアに参加するためにクマシに宿泊していた。この事件に関連して、地元メディアはUber運転手が1名逮捕されたと報じたが、6月7日(金)正式にUber Ghanaが回答をした。Uber Ghanaはこの運転手は容疑者ではなく、警察の調査に協力しているだけだと述べている。地元メディアの報道によると、逮捕されたと噂された運転手は、女性たちが誘拐される前に彼女たちを乗せていた。Uber Ghanaは運転手の登録ナンバーはオンラインで誰でも確認することができるようになっているうえ、警察も容疑者として取り調べをしているわけではないと明言している。 近年、ガーナの首都アクラやクマシのような大きな都市ではUberに登録しているドライバーが増加している。この運転手がどのような形で捜査に協力しているのかは明らかではないが、今後、事件や事故の解明においてUberが活用されるようにことが期待される。

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スーダン情勢の変調

2019/06/05/Wed

スーダンの首都ハルツームで、4日未明、軍がデモ隊を強制排除し、少なくとも35人が死亡したと報じられている。同日、政権を担う移行軍事委員会(TMC)のブルハン中将(Lieutenant General Abdel Fattah al-Buran)はTVで演説し、市民勢力である革命変革同盟(Alliance for Freedom and Change)との交渉を中断し、これまでの合意をすべて破棄すること、3年の移行期間ではなく、9か月後に選挙を実施することを発表した。  スーダンでは2018年12月に食料価格値上げをきっかけとして政府批判のデモが全国に広がり、4月11日に約30年続いたアル・バシール政権がクーデタによって崩壊した。その後、TMCと市民側との交渉が続き、5月14日には3年をかけて文民政権に移行する計画に合意したと発表された。しかし、その2日後、軍側は、市民が設置したバリケードを撤去するよう要求し、交渉を一方的に中断していた。4日の動きは、軍側がこれまで市民側との間で重ねてきた合意を一方的に破棄するもので、事態は大きく変わる。市民の声に押されてバシール政権を倒した軍が、市民とともに民主的な体制を構築することが期待されていただけに、懸念されるべき展開である。  5月14日以降の半月あまりの間に何が起こったのかは、今後検証されるべきことであり、わからないことが多い。考えられる一つの要因は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)の影響である。サウジとUAEはバシール政権が倒れた後、スーダンに対して(移行軍事委員会に対して)30億ドルを提供した(4月22日付ファイナンシャルタイムズ)。また、5月後半にブルハン中将はサウジを訪問し、カタール資本の放送局アルジャジーラの特派員を追放している(5月31日付ルモンド)。市民主導の変革を好まず、またカタールと敵対関係にあるサウジやUAEがスーダン新政権への影響力を強めた結果が、TMCによる今回の対応に表れているのではないだろうか。

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AU、ファーウェイ社と3年間の契約更新

2019/06/04/Tue

 5月31日、ファーウェイ(華為)社は、アフリカ連合(AU)との間で新たな協力協定を締結したと発表した。AUとのMoUは3年間延長され、ファーウェイをアフリカの主要ICT技術サプライヤーとして位置付けている。このMoU締結については、ファイナンシャルタイムズでもルモンドでも取り上げられ、注目を集めている。米国を中心にファーウェイ排除の動きが広がるなかでのMoU更新であるだけでなく、2018年1月にAU本部から同社製品を通じた中国への情報漏洩疑惑が報じられた記憶が新しいからである。ファーウェイ社がAU本部に設置したコンピュータシステムを通じて、2012~17年の間、秘密情報が日常的に中国に漏洩していたとの疑惑は、最初にルモンド紙が報じたが、AU側は強く否定した。AUの対応を巡って、欧米では、中国はアフリカに対して支配的な関係を構築しており、ファーウェイ社がアフリカのテレコムインフラの基盤になっているため、アフリカはこの疑惑を認めることができないという見方が出た。  アフリカのテレコムにおいて、中国企業(ファーウェイとZTE)がきわめて重要なパートナーになっていることは事実である。ただし、それがアフリカの政治指導者の言動をどこまで拘束するものか、慎重に見極めるべきだろう。西側テレコム企業が関心を示さない時期から、中国企業はアフリカに安価で性能の良い通信インフラを提供してきた。今日、アフリカがファーウェイ寄りの姿勢を示すのは、中国に支配されているからというより、通信インフラの現状を考えれば合理的な選択だからではないだろうか。

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エチエンヌ・チセケディ、2年遅れの葬儀

2019/06/02/Sun

2017年2月1日にブリュッセルで死去したエチエンヌ・チセケディの遺体が2019年5月29日にキンシャサに戻り、3日間にわたって葬儀が行われた。モブツ時代から野党指導者としての立場を貫き、2011年には大統領選挙に立候補してカビラと争ったこともあったが、2年前に84歳で死去した。その後、遺体の本国送致と葬儀のやり方を巡ってカビラ政権との間で合意ができず、遺体はブリュッセルに留め置かれていた。  2年遅れの葬儀は、1月の大統領選挙で当選したエチエンヌの息子フェリックスの指導体制が一応固まったことで可能になった。5月20日に新首相を任命したばかりで、事実上、内閣の初仕事が父親の葬儀だということである。葬儀には、ルワンダのカガメ大統領、アンゴラのロウレンソ大統領など、近隣諸国の国家元首が出席した。コンゴ内戦時からその後の東部地域の紛争に関連して、カガメはコンゴの敵と見なされており、彼の出席は両国の関係が大きく変わったことを印象付けた。一方で、ファユルを始めとした野党勢力は、この葬儀に出席しなかった(ファユル自身は招かれなかったと述べている)。また、市民の参加もそれほど多くなかったと報じられている。  フェリックス・チセケディの新体制については、当面カビラの影響力からどのくらい自由なのか、という点が注目される。彼の当選は、カビラとの密約があって可能になったと考えるべきであり、議会や知事、軍など、国家の主要な制度はカビラ派で固められている。軍においても、カビラ時代の幹部がそのまま留任している。ただし、全く新しい動きがないわけではない。諜報機関ANRのトップであったムトンド(Kalev Mutond)が3月にそのポストを外されたり、スポークスマンを務めていたメンデ(Lambert Mende)がダイヤモンドの不法取引疑惑で一時逮捕される(5月)など、カビラ時代には考えられない動きも起きている。  フェリックス・チセケディは当然、カビラからの自律を求めて動く。それがどのような形となって現れるかがコンゴ政治を見るうえで重要なポイントになる。

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