スーダンの首都ハルツームで、4日未明、軍がデモ隊を強制排除し、少なくとも35人が死亡したと報じられている。同日、政権を担う移行軍事委員会(TMC)のブルハン中将(Lieutenant General Abdel Fattah al-Buran)はTVで演説し、市民勢力である革命変革同盟(Alliance for Freedom and Change)との交渉を中断し、これまでの合意をすべて破棄すること、3年の移行期間ではなく、9か月後に選挙を実施することを発表した。
スーダンでは2018年12月に食料価格値上げをきっかけとして政府批判のデモが全国に広がり、4月11日に約30年続いたアル・バシール政権がクーデタによって崩壊した。その後、TMCと市民側との交渉が続き、5月14日には3年をかけて文民政権に移行する計画に合意したと発表された。しかし、その2日後、軍側は、市民が設置したバリケードを撤去するよう要求し、交渉を一方的に中断していた。4日の動きは、軍側がこれまで市民側との間で重ねてきた合意を一方的に破棄するもので、事態は大きく変わる。市民の声に押されてバシール政権を倒した軍が、市民とともに民主的な体制を構築することが期待されていただけに、懸念されるべき展開である。
5月14日以降の半月あまりの間に何が起こったのかは、今後検証されるべきことであり、わからないことが多い。考えられる一つの要因は、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)の影響である。サウジとUAEはバシール政権が倒れた後、スーダンに対して(移行軍事委員会に対して)30億ドルを提供した(4月22日付ファイナンシャルタイムズ)。また、5月後半にブルハン中将はサウジを訪問し、カタール資本の放送局アルジャジーラの特派員を追放している(5月31日付ルモンド)。市民主導の変革を好まず、またカタールと敵対関係にあるサウジやUAEがスーダン新政権への影響力を強めた結果が、TMCによる今回の対応に表れているのではないだろうか。