フランスで、文化財返還に関する法律が公布された。「違法に取得された文化財の返還に関する2026年5月9日付法律No.2026-351」である。この法律は、植民地の征服などに際しての強奪など違法に取得されたフランスの文化財を対象とし、その返還を進めることを目的に制定された。上下両院を全会一致で通過したことは特筆される(6日、7日付ルモンド)。
ルモンド紙文化担当編集責任者のミッシェル・ゲラン(Michel Guerrin)はこの法律を高く評価し、マクロンの業績だと賞賛している。文化財返還に際しては、これまで国内の文化財に関する譲渡禁止条項が壁となり、個別の特例法を作って対応するしかなかった。この法律制定により、違法に取得された文化財に関してはその必要がなくなり、委員会での審査で返還を進められるようになった。ゲランは、この法律によってアジア・アフリカの作品の多くがフランスの博物館から消えるだろう、それはよいことだ、と述べている(15日付ルモンド)。
フランスにおける文化財返還の動きが、マクロン政権下で進んだことは事実である。彼は大統領に就任した2017年、訪問先のブルキナファソにおいて文化財の返還を約束した。今回の法律制定によって、その約束が果たされたことになる。ナイロビで開催されたフランス・アフリカサミットでも、アフリカの博物館関係者が参加し、返還に向けた協議が進んだという。
法律の審議に際して、全会一致での採択に漕ぎ着けたことは高く評価できる。フランスでも、「過去」との向き合い方には多様な意見がある。2001年に制定された「トビラ法」によって、5月10日は奴隷と奴隷貿易を想起するための国民記念日とされているが、極右政党(RN)出身の市長のなかにはこの行事を取りやめた者もいる(13日付ルモンド)。文化財返還に関しても、意見が割れても不思議ではなかった。全会一致での法案採択と迅速な法律制定は、フランス外交にポジティブな効果をもたらしたと言えよう。(武内進一)
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