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今日のアフリカ

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ワタラ、大統領選出馬へ

2020/08/08/Sat

8月6日、コートジボワールのワタラ現大統領は、25分間のTV演説を行い、10月の大統領選挙に立候補することを正式に表明した。ワタラは、この3月、若い世代に政権を譲るとしてアマドゥ・ゴン・クリバリ首相(当時)を自身の後継候補に指名したが、7月8日に彼が急死。7月29日には、与党RHDP(平和と民主主義のウフエ主義者同盟)の政治委員会から大統領選候補者に推薦されていた。
 TV演説の中で、ワタラは「不可抗力」という言葉を用いて、自身の立場の変化を正当化した。後継者が急死し、選挙まで時間がなく、党内で次期候補者を決められないというわけだ。 憲法で三選は禁じられているが、2016年に憲法改正がなされており、これによって現憲法下では初めての大統領選挙となるため立候補可能だというのがワタラ側の解釈である。PDCI(コートジボワール民主党)やFPI(イボワール人民戦線)など野党側、そして市民社会は、これを違法だと批判している(8月7日付ルモンド、ファイナンシャルタイムズ)。
 ワタラは、2011年、選挙での敗北を認めず政権に居座るバボが国際社会の主導による軍事介入で排除された後に、大統領に就任した。その後コートジボワールは急速な経済成長を遂げ、大きな政治的混乱に陥ることもなかった。政権側は2011~18年の間に400万人の国民が貧困から脱出したと自賛している。一方、野党側は、経済成長が貧富の格差拡大をもたらしたうえに、国民和解も達成されていないと批判している。
 大統領選挙には、PDCIからベディエ元大統領、FPIからンゲッサン元首相が立候補予定である。ワタラを含め、いずれも過去20年~30年の間に大統領や首相を務めた人物であり、新味はない。というより、北部のワタラ(RDR)、東部のベディエ(PDCI)、西部のバボ(FPI)というのが、1990年代以降コートジボワール政治を規定した政党・政治家対立の構図であり、結局2010年の選挙危機、そして2011年の武力衝突へと至った。
 RDRはRHDPへの名前を変え、FPIの候補者は国際刑事裁判所に逮捕されたバボからンゲッサンに代わったが、従来と同じ構図で大統領選挙が戦われることになる。結果として内戦に突入した2010年選挙を想起させる展開である。