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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2021年12月

コンゴ民主共和国東部で自爆テロ

2021/12/26/Sun

 25日、コンゴ民主共和国東部の街ベニの中心部で自爆テロがあり、少なくとも5人が死亡した。クリスマスを祝う人で賑わうなかでの事件で、13名の負傷者の中には地方政府高官も含まれていた。地方政府は、ウガンダ系の武装勢力ADF(Allied Democratic Forces)によるものと非難した(Radio France International 26日付)。ベニでは、6月末にも教会やレストランで爆弾が爆発する事件があった(6月28日付ルモンド)。  ADFはIS(イスラム国)から「イスラム国中央アフリカ州」と位置づけられている。国際的シンクタンクInternational Crisis Groupは、ADFがここ2年くらいの間にISとの関係を深めており、ケニアにある拠点を経由して資金提供を受けていると見ている。ケニアの拠点から、ウガンダ、モザンビーク、タンザニアなどの武装勢力にも資金が提供されているようである。爆弾の性能はまだ限定的だが、急速に技術水準を高めているという(11月22日付ルモンド)。  ベニで6月末に起こった事件では、2回の爆発で死亡したのは実行犯1名だけだった。今回は、実行犯を含む5人が死亡している。情報はまだ乏しいが、不気味な兆候である。

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第3回トルコ・アフリカサミット開催

2021/12/19/Sun

   17日と18日、イスタンブールで第3回トルコ・アフリカサミットが開催された。コンゴ民主共和国のチセケディ大統領(AU議長)やルワンダのカガメ大統領など、国家元首を含めて多数の政府高官が参加した。  トルコとアフリカ諸国の政治経済関係は近年急速に深まっている。16日付ルモンドによれば、2003年に55億ドルだった貿易額は2020年に253億ドルに増大し、トルコ航空はアフリカ大陸の61都市との間で就航している。20年前には12に過ぎなかった大使館の数は現在43に増えている。  経済関係の中で重要なのは、軍事物資である。モロッコ、チュニジアに続いて、エチオピアがトルコ製の軍用ドローンの購入と、パイロット研修に動いている。アンゴラ、チャド、モロッコも武器発注を高めている。  ソフトパワーとしての側面もある。特によく知られているのは、イスタンブールに本拠を置く「人権と自由に対する人道援助基金」(IHH)の活動である。IHHは1990年代に設立された人道支援団体で、ムスリム同胞団との関係が指摘されている。アフリカ41カ国で住民支援活動を行っている。  トルコ・アフリカサミットは、中国やロシアなどと並んで新興諸国のアフリカへの関心の高まりを示すとともに、湾岸諸国と並んで中東・アフリカ関係の強まりも映している。アフリカを巡る国際関係の複雑化が示されている。

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「コンゴのルンバ」がユネスコ無形文化遺産に

2021/12/17/Fri

 14日、「コンゴのルンバ」がユネスコの無形文化遺産に登録された。コンゴ民主共和国とコンゴ共和国が共同で提案していたもので、ユネスコのホームページでは、「両国の都市部に共通の音楽およびダンス」と説明されている。  少しでも現地を知る人には、こうした説明は少し回りくどく聞こえるだろう。街のバーやレストランはもとより、車の中やオフィスのラジオなど、人がいるところでは必ずこの音楽が流れている。都市部に限らず、農村であっても、電気があるところではどこでも、この音楽が聞こえてくる。軽妙なギターとドラム、管楽器の響きと高音を強調した歌声。この音楽を聴くと、条件反射でコンゴの様々な風景が脳裏に浮かぶ。  音楽が無形文化遺産に登録された例としては、中央アフリカピグミーのポリフォニー(2003)、ブルンジの太鼓(2014年)、キューバのルンバ(2016年)などがあると、ルモンド紙は報じている(14日付)。

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ナイジェリアのカルト集団、犯罪、政治家

2021/12/15/Wed

BBC Africa Eye(BBC 12月13日)が、ナイジェリアのカルト集団Black Axe(黒い斧)の世界的な犯罪の動向や、国内の著名な政治家とのつながりを内部告発者の資料や証言に基づいて報じている。Black Axeは、秘密の入会儀式やメンバーの強い忠誠心を特徴とする、地元では「カルト」と呼ばれる組織である。極端な暴力で悪名高く、ライバルとする他の「カルト」との抗争の中で、一般市民を含む多くの人々が殺害されてきた(Black Axe: Nigeria's Deadliest Cult - BBC Africa Eye documentaryも参照)。  Black Axeは人身売買や売春、薬物の取引に関わるが、主な収入源はサイバー犯罪であるとされる。その犯罪ネットワーク広く、30,000人を超えるメンバーがいるという証言があるだけではなく、世界中に拡散しているという。2017年、カナダ当局はBlack Axeと関わる50億ドル以上のマネーロンダリングスキームを摘発した。また、米国ではFBIのBlack Axeへの対策が2019年11月と2021年9月に開始され、最終的に35人以上を数百万ドル規模のインターネット詐欺で起訴している。 これらの行為は国内の政治家ともつながり、BBC Africa Eyeは内部告発者の文章から、エド州の著名な政治家が英米市民をターゲットとした相続詐欺に関与し、330万ドル以上詐取したことを検証したという。 Black Axeのルーツとなっているのは、約40年前にエド州の大学で設立された友愛組織である。現在も大学内での動きが活発で、主な加入者は16歳から23歳までの男子学生だとされる。学校におけるカルト集団の広がりは大学から拡散しており、先日は寄宿制の中学校で12歳の男児がカルトへの加入を断ったことを理由にリンチにあい殺害されたことが、ナイジェリアで大きなニュースになった(BBC 12月6日)。暴力の連鎖を一刻も早く止める必要がある。

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ワグネルへの制裁と中央アフリカでの活動

2021/12/11/Sat

 11日付ファイナンシャルタイムズ(FT)は、EUが来週にも、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」(Wagner)に対して、ウクライナ、シリア、リビアにおける人権侵害活動を理由として制裁を発表すると報じた。ワグネルは、プーチンに近いプリゴジンが出資する民間軍事企業として知られ、2014年のクリミア併合時のロシアの侵攻や、その後にウクライナ東部で起こったウクライナ軍と分離主義勢力との戦闘に参加。また、シリア、リビア、モザンビーク、スーダン、中央アフリカでの紛争にロシアの国益に沿う形で関与した。一方で、ロシア政府は、傭兵活動は法律で禁止されていると主張し、ワグネルとの関係を否定している。  EUがワグネルの動向に敏感になっているのは、アフリカ諸国でその活動と影響力が強まっているとの認識を持っているためだ。11月30日のルモンド紙の報道によれば、中央アフリカでは、EUが研修を行った国軍部隊がワグネルの指揮下に入っているという。EUは2016年から同国で国軍の研修事業を行っており、年間1700万ユーロの予算で350人強を対象としている。一方、同国にはロシア人の軍事顧問が2,600人おり、加えてワグネルの傭兵数百人が投入されて、国軍、政府機関に強い影響力を行使している。現場の部隊の大部分がワグネルの指揮下、もしくは影響下にあるという。  中央アフリカのトゥアデラ政権にロシアが深く関与していることはかねてから指摘されており、欧米諸国は警戒を強めてきた。3月末に刊行された国連報告書では、中央アフリカ国軍とワグネルが重大な人権侵害行為を行ったと指摘(4月5日付ルモンド)。米国は4月、提供した車両がワグネルに使用された事実が判明したことを受けて、軍事協力を停止した。二国間協定に基づいて派兵していたルワンダも、6月に撤退した。フランスも同じく6月に軍事援助と財政支援を止めているが(6月8日付ルモンド)、EUの枠組みで軍の研修事業には参加してきた。研修を受けた部隊がワグネルの指揮下にあるとなれば、関係見直しがさらに進むことになろう。

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第8回FOCAC開催

2021/12/04/Sat

 先週、セネガルの首都ダカールで第8回中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)閣僚会議が開催された。習近平主席は11月29日に開会演説をリモートで行い、総額400億ドルの資金提供と10億回分のコロナワクチン提供を発表した。600億ドルの資金提供を約束した前回(2018年)に比べれば提供資金の総額は縮小されたが、その分保健衛生部門での協力が強調されている。  中国・アフリカ関係の専門家でCNRS名誉研究部長のティエリー・ペロー(Thierry Pairault)は、ルモンド紙とのインタビューにおいて、今回のFOCACが、中国・アフリカ双方にとって、幾分か「幻想の終焉」という雰囲気のなかで開催されると指摘した(11月26日付)。彼は概略次のように主張する。  アフリカ側は、中国が提供する資金は高利子で返済期限が短く、開発のために限界があると考えるようになった。中国側も、「債務の罠」などの批判を受けて、アフリカへの資金貸出し審査を厳格化する方針を示している。中国のアフリカにおける資金投下の大部分はサッカー場、飛行場、道路、不動産などのインフラ、建設部門に向けられており、生産部門への資金はそれに比べればずっと少ない。アフリカにおける中国の活動の中心は、基本的に貿易と非生産部門・インフラ部門への出資である。投資への寄与は少なく、鉱業や皮革製造業など低技術産業が中心であって、技術移転は乏しい。中国にとってアフリカの経済的優先度は低く、アフリカの資源にも依存していない。アフリカとの関係はもっぱら政治的動機に基づいており、FAO(国連食糧農業機関)、UNIDO(国連工業開発機関)、ITU(国際電気通信連合)、ICAO(国際民間航空機関)という4つの国連機関のトップを中国が握っているのは、アフリカの支持があったからこそだ。  今回のFOCACでは、資金提供こそ前回の600億ドルから400億ドルへと縮小したが、無償供与(6億回分)と現地生産(4億回分)を通じて、新型コロナウイルスのワクチンをアフリカ諸国に提供することが約束された。400億ドルの内訳は、貿易融資、中国企業による投資、アフリカの金融機関への資金提供、IMF特別引き出し権(SDR)割当てのそれぞれに100億ドルとなっている(習近平主席演説)。中国製ワクチンのアフリカでの現地生産は、近々エジプトで開始される。アフリカでワクチン接種が著しく遅れている現状を考えれば、アフリカ諸国には歓迎されることだろう。アフリカ諸国からの債務救済の要請が強まるなかで、保健衛生部門の協力に重点をシフトしたとの指摘もある(1日付ルモンド)。外交であるから、中国側に政治的意図があることは疑いないが、アフリカ諸国のニーズを汲んでうまく対応しているという印象を与える。

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オミクロン株の広がりと今なすべきこと

2021/12/02/Thu

 オミクロン株の出現が全世界に大きな影響を与えている。入国禁止措置が広がっているが、今なすべきことを冷静に考えたい。南アフリカでオミクロン株が発見されたことは、同国の研究機関が適正に検査を行い、科学的な知見を透明性をもって公開した結果である。その事実にまず敬意を払うべきである。  性急な旅行制限措置に対して、国連やWHOからも批判が高まっているが、優先すべきは途上国へのワクチン提供である。1日付ファイナンシャルタイムズは、GAVI(ワクチンアライアンス)の責任者セス・バークリー(Seth Berkley)氏の意見を掲載している。英国で2回目接種からブースター接種までの期間を3か月にする議論がでていることを、同氏は科学的根拠がないとして厳しく批判し、ワクチン・ナショナリズムを避けなければならないと強調している。  発展途上国と先進国の間にワクチン提供の巨大な不平等があることは、すでに繰り返し指摘されている。南アフリカでは人口の3分の1以下の人しか第1回目の接種を受けておらず、AU加盟国で11月末までに2回接種を受けた人は人口の5%程度に過ぎない。途上国の人々にワクチンが行きわたらない限り、先進国の人々はいつまでも変異株に怯えて暮らすことになる。

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