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Africa Today今日のアフリカ

今日のアフリカ

2020年08月

マリ:移行期をめぐる綱引き

2020/08/29/Sat

 8月18日のクーデタから10日が過ぎたマリでは、移行期の制度設計をめぐる綱引きが続いている。人民救済国家委員会(CNSP)を樹立した反乱軍側は、22日に地域機構の西アフリカ経済共同体(ECOWAS)のミッションと会談し、ケイタ元大統領らの釈放に同意した(27日、ケイタ氏の釈放を正式に発表)。26日には、ここ数か月街頭での反ケイタ運動を率いてきた反政府勢力M5-RFPと、CNSPは公式に接触している。  CNSP側は、ケイタらの拘束は辞任を求める市民の声に応えたものであり、移行期の後に選挙を実施して民政移管すると表明している。「これはクーデタではない」とも述べている。ただし、現在のところ、彼らの提案は、3年の移行期間を置き、その間はCNSPトップのゴイタ(Assimi Goita)大佐が国家元首を務めるというものである。  一方で、ECOWASはクーデタに対して強硬な姿勢を崩していない。28日、ECOWAS首脳会議がオンランで開催され、CNSPに対して、ケイタを大統領に復帰させよとの要求こそ取り下げたものの、移行期の国家元首と首相は文民から指名するよう主張することで合意した(同日付ルモンド)。マリへの制裁も解除していない。  ケイタに対する大規模な辞任要求運動を利用して政権を奪取したCNSPは、国民の人気を利用して自らの権力基盤を構築したいということだろう。今後は主として、文民勢力のM5-RFPとの間で、移行期の制度枠組みについて交渉を進めていくことになる。  アフリカで政変が起こった時、地域機構が活発な外交を展開することは特徴的である。今回も、ECOWASの動きが目立っている。ケイタに対する辞任運動が盛り上がってから、ECOWASはケイタとM5-RFPとの間を仲介し、7月にはケイタを大統領職に留めたまま権力分有政権を樹立するなどの案を提示してきた。M5-RFPの幹部には、ケイタ政権を維持しようとするECOWASに不満を隠さない者もいた。今度は、軍とM5-RFPの交渉が始まるわけだが、ここでもECOWASの動きが注目される。

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ジンバブエにおける政権批判の締めつけ

2020/08/26/Wed

 エマーソン・ムナンガグワを大統領とするジンバブエ政権が、コロナウイルス対策を理由としながら、政権批判に対する締め付けを強めている。8月22日付のアルジャジーラは、政権に対して異議を唱えていた野党議員ジョブ・シクハラ氏の逮捕を報じた。国内最大野党の副議長であるシクハラ氏は、7月31日の抗議集会の計画を理由に警察の指名手配リストに載った後、姿を隠していた。これは、同じ抗議集会を計画し、大衆の暴力を煽動したとして7月下旬に逮捕された、国際的に活躍するフリーランスのジャーナリスト、ホプウェル・チノノ氏や野党政治家ジェイコブ・ンガリヴフメ氏と、その他20人から60以上と言われる関係者の逮捕に続くものである。ジャーナリストのチノノ氏は、コロナ対策のための防護具や検査器具の契約をめぐって保健省内で大規模な汚職が行われていたことを報道していた。そのため、アムネスティ・インターナショナルはチノノ氏の逮捕をジャーナリストが社会的関心の高い報道をすることに対する威圧であり警告だであるとして非難している(7月20日付)。  ジンバブエではハイパーインフレや経済的危機が続き、3年前にムガベ政権が退任に追い込まれた際に約束された経済的回復をムナンガグワ政権が実現していないと不満が溜まっていた。今回のコロナウイルスの流行により、更なる失業者の増加、物価の向上、食料の不足などが起こっている。また、医療施設に必要な防護具が行き渡っていないため医療者によるストライキなども行われている。しかし、ムナンガグワ大統領は政権を批判する人々を、「外国の中傷者と手を組んだ社会主義者」として非難し、コロナウイルス対策を謳う治安部隊がデモなどを暴力的に弾圧している。  このような事態に対してSNSを通した「#ZimbabweanLivesMatter(ジンバブエ人の命は大事だ)」運動が高まり、南アの政治家や通称AKAとして知られるラッパー、ケルナン・フォーブスなどの有名人なども積極的に参加しグローバルな広がりを得ている(BBCニュース8月6日付)。また、ジンバブエのカトリック司教会議も、政府の汚職や権力の濫用について批判する声明を出した(BBCニュース8月16日付)。しかし政権は依然反政権勢力を非難し、カトリック司教たちが「危機を捏造している」として批判を拒絶している。締め付けの方向は収まる気配はない。

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新型コロナウイルス感染抑制に「希望のきざし」

2020/08/21/Fri

BBCによれば、アフリカ疾病対策予防センター(Africa CDC)のンケンガソン(John Nkengasong)所長は、アフリカにおける新型コロナウイルスの新たな感染者数が先週から減少傾向に転じたとして、「希望のきざし」だと述べた。先週のアフリカ大陸全体の新規患者数は平均10,300人で、前週の11,000人を下回った。感染者数は増加を続けているが、その増加速度が低下したということである。  この背景にあるのは、南アフリカの動向である。アフリカ全土の感染者数は現在までに約115万人だが、南アがその半数を占める。その南アでは、1日当たりの感染者数が、ピーク時の12,000人からここ数週間は5,000人程度へ減少した(15日付BBC)。17日の週からは、禁止されていた酒、たばこの販売が再開されるなど、コロナ関連の制限を緩和する動きが始まっている。  ンケンガソン所長は、「安心するのはまだ早い。慎重なオプティミズムをもって、このニュースを捉えるべきだ」、として、感染症対策を変えないよう求めている。  南アは、PCR検査数も多く、真剣に新型コロナウイルス感染症対策を講じてきた。その成果が表れているとすれば、喜ばしいことである。ただ、南アのように徹底した検査を行っている国は多くはない。タンザニアのようにこの感染症に関する情報を公開しない国もある。アフリカ全体の状況については、まだわからないことが多い。

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マリのクーデタ続報

2020/08/20/Thu

 クーデタから1日経ち、状況が徐々に明らかになってきた。ルモンド等の報道に依拠して、現状をまとめておく。  19日、クーデタの首謀者が記者会見を開き、人民救済国家委員会(Comité national pour le salut du peuple:CNSP)の樹立を発表した。指導者として、Assimi Goita大佐の名が挙がっている。CNSPは、政治権力が目的ではなく、政治の安定が目的だと説明し、早期に選挙を実施する意向を明らかにしている。ここ数か月間、大統領辞任を求めてきた反政府勢力M5-RFPとも協議を開始したと伝えられる。M5-RFP側も、軍との協議に前向きの姿勢を示している。  一方、国際社会は厳しいまなざしを向けている。マクロン仏大統領は、「テロとの戦いと民主主義・法の支配の保護は切り離せない。それを逸脱することは、我々の闘いを弱めることだ」と述べて、クーデタを厳しく非難した。AUとECOWASは、マリを即時資格停止処分にした。隣国コートジボワールは、国境を封鎖し、資金移動を止める制裁措置を課している。ポンペイオ米国務長官も、法に則った国家再建を求める声明を発表した。  CNSPは、前政権の汚職や治安面の無策を厳しく非難するとともに、国際社会に対しては継続性をアピールしている。北部に展開する国連平和維持部隊Minusma、駐留するフランスのバルカンヌ作戦、近隣諸国とのG5サヘルといったジハディスト集団に対する軍事的コミットメントに対しては、マリがこれまでと変わらぬパートナーであることを強調している。  ケイタ前大統領の評判は国内外で悪かったが、とはいえクーデタによる政権転覆を国際社会が認めることはできない。軍の現在の姿勢が維持されるなら、選挙に向けた交渉が始まることになろう。マリにおいて反仏感情が高まっていることを考慮すると、軍が政権を手放した後に誕生する文民政権は、フランスと距離を置く政策をとる可能性もある(ファイナンシャルタイムズ紙)。今回のクーデタがサヘル地域の治安情勢にどのような影響をもたらすかは、なお不透明である。

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マリでクーデタ

2020/08/19/Wed

18日、マリのケイタ大統領は、シセ首相らとともに軍キャンプに連行され、逮捕された。その後、19日のBBCは、ケイタ大統領がTVで演説し、辞任を発表したと報じた。2012年に、当時のトゥーレ大統領がクーデタで追われてから8年。既視感のあるクーデタである。  18日段階の報道では、クーデタの指導者は不明であったが。19日になって、BBCは、指導者としてMalick Diaw大佐の名前を挙げている。  マリでは3~4月に実施された選挙をめぐって国民の間に不満が強く、6月からは大規模な大衆運動に発展していた。7月にはECOWAS(西アフリカ経済共同体)が仲介に入ったが、不調に終わっていた。  2012年以来、マリではイスラーム急進主義勢力の影響により、北部、中部で極度に治安が悪化している。加えて、コロナ禍のために経済がダメージを受けており、これらの要因が合わさる形で国民の不満が募っていた。  大統領の逮捕、そして辞任表明に、大統領辞任を要求してきた反政府勢力は大いに沸くだろう。しかし、それが問題の解決に程遠いこともまた明白である。

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日本企業の船舶がモーリシャスで座礁

2020/08/09/Sun

商船三井が運航しているばら積み船がモーリシャスで座礁し、燃料油が流出している問題で、フランスが緊急支援を提供すると発表した。「わかしお」号は7月25日、モーリシャスのエスニー岬(Pointe d'Esny)で座礁したが、8月に入って燃料(200トンのディーゼル、3800トンの重油)が流出し始めた。エスニー岬は、近隣のブルー・ベイ(Blue Bay)とともにラムサール条約登録地域であり、深刻な環境被害が懸念されている。  8日、マクロン仏大統領は、生物多様性が危機に瀕しており、緊急に行動する必要があるとして、レユニオン島から支援物資と援助隊を派遣することをツイッターで発表した(8月8日付ルモンド)。これは、モーリシャス首相からの要請に応えたものとAFPは伝えている。  現地の悪天候のためさらなる状況悪化が懸念されているが、日本からも緊急支援を提供すべく、早急の対応が必要である。

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ワタラ、大統領選出馬へ

2020/08/08/Sat

8月6日、コートジボワールのワタラ現大統領は、25分間のTV演説を行い、10月の大統領選挙に立候補することを正式に表明した。ワタラは、この3月、若い世代に政権を譲るとしてアマドゥ・ゴン・クリバリ首相(当時)を自身の後継候補に指名したが、7月8日に彼が急死。7月29日には、与党RHDP(平和と民主主義のウフエ主義者同盟)の政治委員会から大統領選候補者に推薦されていた。  TV演説の中で、ワタラは「不可抗力」という言葉を用いて、自身の立場の変化を正当化した。後継者が急死し、選挙まで時間がなく、党内で次期候補者を決められないというわけだ。 憲法で三選は禁じられているが、2016年に憲法改正がなされており、これによって現憲法下では初めての大統領選挙となるため立候補可能だというのがワタラ側の解釈である。PDCI(コートジボワール民主党)やFPI(イボワール人民戦線)など野党側、そして市民社会は、これを違法だと批判している(8月7日付ルモンド、ファイナンシャルタイムズ)。  ワタラは、2011年、選挙での敗北を認めず政権に居座るバボが国際社会の主導による軍事介入で排除された後に、大統領に就任した。その後コートジボワールは急速な経済成長を遂げ、大きな政治的混乱に陥ることもなかった。政権側は2011~18年の間に400万人の国民が貧困から脱出したと自賛している。一方、野党側は、経済成長が貧富の格差拡大をもたらしたうえに、国民和解も達成されていないと批判している。  大統領選挙には、PDCIからベディエ元大統領、FPIからンゲッサン元首相が立候補予定である。ワタラを含め、いずれも過去20年~30年の間に大統領や首相を務めた人物であり、新味はない。というより、北部のワタラ(RDR)、東部のベディエ(PDCI)、西部のバボ(FPI)というのが、1990年代以降コートジボワール政治を規定した政党・政治家対立の構図であり、結局2010年の選挙危機、そして2011年の武力衝突へと至った。  RDRはRHDPへの名前を変え、FPIの候補者は国際刑事裁判所に逮捕されたバボからンゲッサンに代わったが、従来と同じ構図で大統領選挙が戦われることになる。結果として内戦に突入した2010年選挙を想起させる展開である。

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