8月18日のクーデタから10日が過ぎたマリでは、移行期の制度設計をめぐる綱引きが続いている。人民救済国家委員会(CNSP)を樹立した反乱軍側は、22日に地域機構の西アフリカ経済共同体(ECOWAS)のミッションと会談し、ケイタ元大統領らの釈放に同意した(27日、ケイタ氏の釈放を正式に発表)。26日には、ここ数か月街頭での反ケイタ運動を率いてきた反政府勢力M5-RFPと、CNSPは公式に接触している。
CNSP側は、ケイタらの拘束は辞任を求める市民の声に応えたものであり、移行期の後に選挙を実施して民政移管すると表明している。「これはクーデタではない」とも述べている。ただし、現在のところ、彼らの提案は、3年の移行期間を置き、その間はCNSPトップのゴイタ(Assimi Goita)大佐が国家元首を務めるというものである。
一方で、ECOWASはクーデタに対して強硬な姿勢を崩していない。28日、ECOWAS首脳会議がオンランで開催され、CNSPに対して、ケイタを大統領に復帰させよとの要求こそ取り下げたものの、移行期の国家元首と首相は文民から指名するよう主張することで合意した(同日付ルモンド)。マリへの制裁も解除していない。
ケイタに対する大規模な辞任要求運動を利用して政権を奪取したCNSPは、国民の人気を利用して自らの権力基盤を構築したいということだろう。今後は主として、文民勢力のM5-RFPとの間で、移行期の制度枠組みについて交渉を進めていくことになる。
アフリカで政変が起こった時、地域機構が活発な外交を展開することは特徴的である。今回も、ECOWASの動きが目立っている。ケイタに対する辞任運動が盛り上がってから、ECOWASはケイタとM5-RFPとの間を仲介し、7月にはケイタを大統領職に留めたまま権力分有政権を樹立するなどの案を提示してきた。M5-RFPの幹部には、ケイタ政権を維持しようとするECOWASに不満を隠さない者もいた。今度は、軍とM5-RFPの交渉が始まるわけだが、ここでもECOWASの動きが注目される。