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今日のアフリカ

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ニジェール、米国との軍事協定破棄

2024/03/17/Sun

 16日、ニジェール軍事政権は、2012年に米国との間で結んだ軍事協力協定を「即時」破棄すると発表した。軍事政権側は、この協定は「単なる覚書(note verbale)によって」米国から「一方的に押しつけられた」ものであり、米軍の存在は「違法」だと主張している(17日付ルモンド)。
 この決定は、米国使節団の訪問直後に発表された。12~14日、フィー(Molly Phee)アフリカ担当国務次官補を団長とし、ワランダー(Celeste Wallander)国防長官補佐、ラングレー(Michael Langley)米国アフリカ司令部(Africom)司令官を含む一行が、ニアメを訪問し、首相と会談していた。15日付ルモンドによれば、この訪問において、米国側は、ニジェールがロシア軍と協力せず、ロシア兵を招き入れないなら、軍事協力を再開するとの条件を示したが、ニジェール側は受け入れなかったという。
 ニジェール移行政権顧問は、「どんな国の兵士を呼んでくるかを決めるのは自分たちだ」と主張し、米国の要求に苛立ちを隠さなかったという。16日の協定破棄の発表の際にも、米国使節団の訪問が、到着日と使節団構成員を一方的に知らせてくるだけで「外交手続きを尊重したものではなかった」とし、フィー団長の「尊大な態度」を批判した(17日付ルモンド)。
 フランス軍に続いて、米軍もニジェールから撤収を迫られることになりそうだ。米軍は中部アガデスに1000人規模の部隊を駐留させており、この基地がなければAfricomの能力は大幅な制約を受ける。サヘル地域のイスラム急進主義勢力抑止の観点では、大きな打撃と言えよう。
 一方、この間ニジェールは急速にロシアとの関係を強化している。昨年12月4日には、ロシア国防次官のユヌス=ベク・エフクロフがニジェールを訪問し、チアニ将軍と会談した。今年1月半ばには、ラミヌ・ゼイヌ(Lamine Zeine)首相を団長とする使節団がモスクワを訪れ、ロシア国防省のエフクロフ、フォミン国防次官と協議し、防衛協力強化宣言が打ち出された。
 昨年7月末のクーデタの後、米国はフランスと比べてソフトな対応を取ってきた。7月末の事態を「クーデタ」と認めて援助を取り消したのも、10月に入ってからだった。こうした慎重な対応は、アガデスの軍事基地維持が米国にとって非常に重要だからである。ニジェールから撤退という事態になれば、米軍のアフリカ地域戦略にも大きな影響が避けられない。
 一方、今回軍事政権側が、米国の「尊大さ」を繰り返し非難していることに留意すべきであろう。ニジェールに限らずこの地域には、フランスや米国に「軽んじられてきた」、「いいように利用されてきた」という感情が国民に広く存在し、強い動員力を持っているように思える。
(武内進一)