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今日のアフリカ

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フランス軍撤退とニジェールの孤立

2023/10/15/Sun

 10日、ニジェールのフランス軍が撤退を開始した。軍事政権はベナン経由の移動を許さず、フランス軍はチャドに移動した。チャドには首都ンジャメナの他、アベシェやファイヤラルジョにもフランス軍が展開しており、反仏感情の高まりの兆候も指摘されている。フランス軍としては、細心の注意を払ってのオペレーションとなる(11日付ルモンド)。
 一方、米国は、10日、正式に7月の軍による権力掌握をクーデタだと認め、経済援助4億4200万ドルを取り消した。軍事介入の可能性を早々に打ち出したEcowasを支持するフランスとは対照的に、アメリカはこの間、ニジェールの政権転覆を「クーデタ」と呼ばず、水面下で話し合いによる解決の可能性を探ってきた。米国もまたニジェールに軍事基地があり、サヘルのイスラム急進主義勢力に対応するため、ニジェールとの関係を重要視してきたからである。今年3月、ブリンケン国務長官はニジェールを訪問している。今回米国が政変を「クーデタ」だと認め、巨額の経済援助を取り消したことは、軍事政権には痛手である。
 また、軍事介入にいち早く反対を表明し、仲介に動いていたアルジェリアの動きも失敗に終わった。同国は外相をニアメに派遣し、6ヶ月で民政移管する計画を提示していたのだが、軍事政権側はこれを拒否し、アルジェリアは仲介から手を引いた。アルジェリアは米国と連携してこの動きを進めていたから、両国の動きは表裏一体とも言える(11日付ルモンド)。
 クーデタ以来、ニジェールではイスラム急進主義勢力による攻撃が増加傾向にあり、経済制裁や援助停止によって人々の生活はさらに困窮するだろう。当面は、マリ、ブルキナファソとの連携を強める方向に進むしかないが、とても持続可能な方向とは思えない。事態のさらなる転回は必至である。
(武内進一)