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今日のアフリカ

今日のアフリカ

イスラエル・パレスチナ紛争とアフリカ

2023/10/11/Wed

イスラエルとハマスの武力衝突を受けて、アフリカ諸国の対応が分かれている。アフリカ連合(AU)のムサ・ファキ・マハマト委員長は、7日、両者の衝突のエスカレーションを止めるよう呼びかけた。
 9日付ルモンド紙は、アフリカ各国の対応を伝えている。ケニアはイスラエル支持を鮮明に打ち出した。ルト大統領はテロリズムは容認できないと述べ、外相副大臣のシンゴエイ(Korir Sing'Oei)は、ケニアは「卑劣なテロ攻撃を非難する。イスラエルは反撃する権利がある」とX(旧ツイッター)に投稿した。トーゴもハマスのテロ攻撃を非難し、人質解放を求めた。
 こうした意見が目を引くのは、アフリカ諸国は伝統的にパレスチナ寄りだったからである。今回も、北アフリカのアラブ諸国では、チュニジアがパレスチナ人民を完全に支持すると表明したし、アルジェリアも明確にパレスチナ支持の立場である。サハラ以南アフリカでも、南アフリカがパレスチナ支持の姿勢を打ち出している。
 過去数年、AUにおいてイスラエルのオブザーバー資格を認めるかどうかが、大きな議論となってきた。2021年7月ムサ・ファキ・マハマト委員長がそれを認める方針を打ち出したが、南アフリカやアルジェリアがこれに反発。2022年2月のAU首脳サミットに附議されることになった。しかし、分裂を恐れて同サミットでは本格的に議論されず、この問題を検討する委員会が設置されることとなった(2022年2月6日付ルモンド)。今日まで問題は決着していない。
 トランプ政権下の米国がイスラエルとアラブ諸国の国交正常化を進め、モロッコスーダンが同国との国交を回復するなかで、アフリカ大陸に対するイスラエルの影響力は強まっている。しかし、南アフリカのように歴史的経緯からパレスチナとの強い関係を維持し、イスラエルの影響力拡大を食い止めようとする動きもある。加えて、モロッコのように国交正常化を果たした国でも、国民の間には批判的な意見が強く、公然とイスラエル支持を打ち出す国はなお少ないのが現状である。
(武内進一)