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今日のアフリカ

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米国、西サハラに対するモロッコの主権承認

2020/12/11/Fri

10日、トランプ大統領は、モロッコとイスラエルの関係正常化を公表するとともに、米国が西サハラに対するモロッコの主権を認めると発表した。バハレーン、UAE、スーダンに続いて、米国主導でアラブ諸国がイスラエルを承認するという流れだが、今回は西サハラ問題がその取引材料として使われた。
 モロッコとイスラエルは、従来からある程度親密な関係があり、1990年代には相互に連絡事務所を置いた経緯がある。10日付ルモンド紙によれば、今回の正常化の動きは、2月にポンペイオ国務長官がラバトを訪問した際に協議された。当時すでに、イスラエルのメディアは西サハラ承認と引き換えにモロッコが正常化に踏み切ると報じていたという。
 西サハラに対するモロッコの主権承認は、国際規範と乖離している。旧スペイン領の西サハラは、実効支配するモロッコと、主権を主張するポリサリオ戦線との間で紛争状態にある。国連は、一貫して、この地域の自決問題を住民投票によって決定しようとしてきた。ヨーロッパ連合(EU)も同じ考え方で、西サハラが紛争状況にあると見なしてきた。アフリカ連合(AU)は、西サハラに対して、ポリサリオ戦線を主体とする「サハラ・アラブ民主共和国」(SADR)の主権を承認してきた。
 トランプ政権は、その末期にあって、イスラエルの安全保障と西サハラ問題という基本的に関係のない問題を取引材料に使った。この決定は、西サハラ問題に新たな混乱を持ち込むことになるだろう。