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今日のアフリカ

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ポール・ルセサバギナ氏の釈放

2023/03/25/Sat

 2020年8月にルワンダで拘束され、2021年9月に懲役25年の判決を受けたポール・ルセサバギナが、カガメ大統領の恩赦により釈放されることが決まった。ルセサバギナは『ホテル・ルワンダ』の主人公のモデルとなったことで知られる。ベルギー国籍を持ち、米国に居住していたが、カガメとルワンダの政治体制を厳しく批判してきた。
 彼はドバイから事実上拉致される形で拘束され、ルワンダ南西部に侵攻した武装勢力に活動資金を出資したとして有罪判決を受けた。裁判に際してルセサバギナは、いかさまだとして出廷を拒否した。
 釈放に際して、カガメに宛てたルセサバギナの書簡が24日ルワンダ法務省から発表され、「米国の家族の元に戻れるよう恩赦をお願いする」、「残る人生を米国で内省するために用いる」、「個人的、政治的野心はない」と記されていた。今回の恩赦はカタールが仲介し、先週カガメがカタールを訪問した際に決定したという(25日付ファイナンシャルタイムズ)。
 今回の恩赦が、外交的考慮を踏まえて決定されたことは間違いない。ルセサバギナの逮捕と裁判については欧米でも関心が高く、昨年8月にブリンケン米国務長官がルワンダを訪問した際には、この問題について懸念を伝えていた。さらに、昨年後半から激化したコンゴ東部でのM23の活動に関して、コンゴはもとより、欧米でもルワンダの支援を非難する声が高まっている。今回の釈放は、米国政府へのメッセージだと考えてよいだろう。
 ルワンダの政府系紙New Timesは、武装勢力の侵攻による犠牲者の遺族が、賠償を求め続けているとの記事を掲載した(25日付)。ルワンダ政府としては、恩赦はしたが、有罪判決は変わらない、という姿勢である。
(武内進一)